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座右の書


はじめに

あなたの座右の書というのは、何でしょうか?
私の座右の書は、この note を読んでいる皆さんなら当然 古典 SF だろうと思われるでしょうが、意外と違うのでした。タイトル画像そのままの「かもめのジョナサン」です。

概要

この本、若い方は知らないと思いますが、実は1970年代に大変ヒットしたベストセラーで、世界で 4000万部売れてます。
かもめのジョナサン - Wikipedia
以下のサイト調べでは、ベスト10に入っていませんが、1億部で入れそうなので、4000万部が結構凄いことは分かりますね。
世界で最も「売れた本」ランキング | テンミニッツTV (10mtv.jp)
私も確か高校生の頃、最初にこの本を読んでいます。50年前のベストセラーってことですね。

著者 リチャード・バック

1936年にイリノイ州で生まれた彼は、米空軍パイロットとして戦闘爆撃機に乗り、その経験を小説に書く人です。「かもめのジョナサン」を書く前に「王様の空」という、F-84Fでの二時間弱の飛行を小説にしています。
異色の作家ではありますが、実はあの「星の王子さま」で有名なサン・テグジュペリも、WWII中は F-5Fに乗っていて、戦後郵便飛行機に乗っている時の経験を元に「人間の大地」を書いたりしてます。この二人は、アメリカ人とフランス人ではありますが、ホントに似てますね。

リチャード・バック
F-84F サンダーストリーク
サン・テグジュペリ

余談ですが、F-84 という戦闘機は変わっていて、初期型は水平翼で上反角あり。

F-84C

後期型は、後退翼で下反角なんですよね。まあ、後退翼は安定方向なので、そうなるのですが。

F−84F

そして、その後 名機 F-86F につながる系譜となります(メーカーは違うんですけどね)。後退翼で上反角と、ちょっと変わった設計。こちらは昔のSF映画によく出てくる、ジェット戦闘機の代表です。

F-86F セーバー

作品 かもめのジョナサン

すっかり横道にそれましたが、作品に入ります。
たった 140P で、しかもかもめの写真が沢山入っており、短編よりは長いが、中編とも言えないぐらいの分量です。30分で読めますね。また、このかもめの写真も結構大雑把で、特にジョナサンがイワシを取る?シーンなど、かもめのおもちゃを池に落としたのか?と思うような出来です。

まあ、なんというか

Part One
毎日、食べていくために空を飛ぶかもめたちなのですが、変わり者のジョナサンは飛ぶこと自体が好きになってしまい、色々研究をしていきます。最後には急降下で 340km/h を出すのですが、それが原因で仲間から追放され、<遥かなる崖>で暮らすことになります。
Part Two
その後、より高次の飛行を身に着けている先輩方がスカウトに現れ、高みで更に飛行技術を磨くのですが、最後にはまた群れに戻って、飛ぶのが好きな後輩たちを育てることを選びます。
Part Three
そこで昔の自分に似た、フレッチャーというかもめに会い、群れからも少しずつ一緒に練習する仲間が増えていきます。ある時、無茶をして岩に激突しそうになったフレッチャーを「瞬間移動」で助けますが、その後「他の群れの指導がしたい」と言ってジョナサンは旅立っていきます。

と、書いてしまうとこれだけのこと。でも、何故かいつ読んでも良いんですよね。

みんなと同じことに価値を見出だせないジョナサンが、あれこれあっても結局は自分の好きなことを貫いていく。そしてまだまだ次元の違う先があり、志を同じくする先輩たちもいて、そこで一度は幸せに暮らします。しかし、自分を迫害した元の群れに戻ってフレッチャーたちを指導し、軌道に乗ったら次の群れに旅立って行くのです。
本当に飛ぶことが好きな、ただのかもめなんだな、と納得する訳です。

蛇足 Part Four

この作品は、40年以上立ってから作者が最後の第4章を追加しています。

が、正直 自分にはあってもなくても良い章であり、蛇足じゃないかなあと思います。少し宗教臭いんですよね…  ま、ここは皆さんの判断におまかせしたいところでもありますので、是非一度手に取って下さい。ちょっとした書店なら「必ず」置いてありますし、Kindle で 650円ぐらいで買えます。

おまけ

「座右の書」が更新されない人は、心の老化が始まっている | 取材・執筆・推敲──書く人の教科書 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

こんなことを書く人もいますんで、いつまでも「かもめ」じゃ駄目なのかも知れません。ただ、翻訳されたバックの小説はほとんど目を通したのですが、やはりどれか一つとなると「王様の空」と「かもめのジョナサン」のどっちか?になるんですよね。いえ、他の作品もバックらしく、ほとんど飛行機の話なのですが。

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