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なぜ、WEBマーケターだった私が、ゼロから洗剤ブランドを立ち上げるのか?


「自分はゼロから何かを生み出すことに向いてない」
ずっとそう思い続けてきた。

なぜなら、私には"才能"がないからだ。

小さいころから、いわゆる発想力やクリエイティビティがなかった。
知恵の輪は一度も解けたことがないし、なぞなぞの類も初めて耳にする問題を他の人より先に答えることができたことなんて記憶にない。
暗記型の学校のお勉強は出来ても、何か新しいものを発想したり生み出したりする力がない。
それがずっと私のコンプレックスだった。

だから、アートやモノづくりなど、何かを生み出す力が問われる世界とは意識して距離をとってきた。

大学を卒業して、クリエイティブな世界とは正反対(?)の外資コンサルの会社に入り、紆余曲折経てマーケティング、特にWeb/Digitalマーケティングを専門にするようになった。
それは、クリエイティビティのない私でも、数字とデータで勝負のできるWebマーケならなんとかやれるんじゃないか、と(当時は)考えたからだ。

その後ひょんなことから、実の兄が始めた、レーザー加工機というマニアックなプロダクトを作ってWEB直販(D2C)で国内&海外に販売する事業にCMOとして参画することになった。

意図せず、自分がこれまで避けてきたモノづくりにかかわることになり、実際に製品自体にも口を出したりすることになるが、それはあくまでマーケター視点での意見を言っていただけに過ぎない。
根幹である開発のところは、小さいころから私と違ってクリエイティビティに長けていた兄が担っていて、相変わらず「モノづくりの0⇒1」の部分とは少し距離をとっていた。

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そして、それから2年たった今、
私は自分でゼロから「洗剤ブランド」を立ち上げようとしている。 
日用品ブランド『Komons(コモンズ)』公式HP

食器用洗剤やバスクリーナーなど、
どの家庭にもあり毎日のように使うけど、誰も気にも留めない、アレだ。

なぜ、一介のWEBマーケターで、これまで意識して「自分で何かを生み出す」ということを避けてきた私が、ゼロから洗剤ブランドを立ち上げようと思ったのか? 

しかも、なぜ、よりによって家庭用洗剤じゃなければならなかったのか?
そんな話を書きたいと思う。

(起業話の例にもれず、多くの失敗をし、時には人間不信になったり体調を崩したりしながら前に進んできた話なので、「他人の不幸は蜜の味」的な感じで、暇なときに笑いながら読み流してもらえればと思う。)

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きっかけは、兄とレーザー加工機の事業を行い一定規模に成長させる中で、
「日本のものづくり」×「D2C(Direct to customer。つまり既存の流通に頼らずWEBに振り切ってブランディング・販売等を行うこと)」にポテンシャルを感じたことだ。

私たちが作っていたレーザー加工機の部品は"世界の工場"である中国の深センと、日本の契約工場で生産していたが、実際にその両者を比較する中で「日本のものづくりの質」には改めて感銘を受けた。

ありきたりだが、一言で言えば「細部へのこだわり」という表現になるだろうか。
それは、時にはこちらが仕様書で定義していない箇所にまでおよび、例えそれがユーザーからは見えることがない内部の部品の一つであろうが、その丁寧な仕事ぶりには、自社の製品へのプライドや愛情を感じることができた。
梱包の状態一つとっても、中国の工場のそれとはまったく別物だった。

もちろん、そんな「日本のモノづくり」を手放しで礼賛するつもりはない。
それは、"ビジネス的"に言えば、日本のモノづくりの丁寧さは時にオーバースペックなこともあるし、一歩間違えば「無駄なこだわり」だからだ。

特に生産コストにおける数十~数百倍の差を実際に目の当たりにすると、どう考えても"ビジネスの世界"では中国に軍配があがると言わざるを得ない。

でも、私はその無駄な「こだわり」こそ大事にしたいと思うようになった。
直感ではあるが、これからの時代そういったこだわりこそが重要になる、そんな気がしたからだ。

じゃあ、そのこだわりをどう伝えるか?
その答えの一つが、たまたま私がずっと関わってきた「D2C」
なのかもしれない。

作り手からお客さんに商品が届くまでに、商社や卸や小売りなど何層ものプレーヤーが介在する既存の流通構造では、日本のモノの作り手の「細やかなこだわり」は到底伝えることが出来ない。
だからこそ、あえてWEBに振り切ることで、国内のみならずグローバルのお客さんと直接つながり、「細やかなこだわり」を直に伝えていくことが重要だと感じた。

あとは、それを「何で」具体的に表現するかだ。
実際に、起業のアイディアとして、いろんなプロダクトを検討してみたけれど、なかなかしっくりくるものはない。

日本のモノづくりというと、よくメディアなどにも取り上げられる「伝統工芸の復活」や「先端テクノロジーの活用」という文脈も、なんだか自分がやるべきものには感じられなかった。

「みんなが右を向いたら左を向きたくなる。」
そんなひねくれものの私にとっては、伝統工芸や先端テクノロジーといった既に"王道感"があるものには興味を持てなかった、ということかもしれない。

そういう"カッコいい"ものではなくて、
「派手さはないけどしっかりと毎日の生活をささえている」、そんな身近なものに次第に意識が向くようになった

それは自分自身結婚して子供が生まれ、家で家族と過ごす時間が長くなる中で、家族との「何気ない毎日の質」を意識するようになったということも大きいと思う。

そんな考えの中で、改めて身の周りを見渡してみると、昔から気になっていたことがある。

それは、
「なぜトイレクリーナーのデザインはあんなにダサいのか?」
「なぜ食器用洗剤は手荒れするものばかりなのか?」
「なぜバスクリーナーは塩素のような不自然な匂いがするのか?」

といった些細なことだ。

冬になり妻の手荒れがひどくなってしまったこともきっかけになり、改めて家の中のいたるところにある日用品や洗剤にちょっとした疑問を感じるようになった。

よくよく考えてみると。
ここ10年で、キッチンやバスルームなど、家の中のインテリアはすごくおしゃれになった。なのに、なぜシンクに置かれる食器用洗剤や、お風呂場のバスクリーナーのパッケージは、相変わらずそれを台無しにしてしまうくらいにダサいのか?

⇒それは、それらのパッケージデザインが、スーパーやドラッグストアの棚に置かれた時の「視認性(≒売上)」を何より重視してデザインされているから。
(ある意味、企業の広告としてのデザイン)

よくよく考えてみると。
なぜ食器用洗剤は手荒れするものばかりなのか?

⇒それは市販されている大手の食器用洗剤は、1本あたりの配送コストを極限まで安くするために「濃縮」された状態のものだから。

実は大手の食器用洗剤の裏を見ると「直接原液をスポンジにつけて使用する場合は、必ず炊事用手袋を使用してください」と書いてある。
つまり、手袋をしない場合は、原液を薄めて使わなければいけない。
(でも、TV CMではそんな表現は一切していない)

そりゃ濃縮されたかなり強力な洗剤をそのまま使えば手は荒れる。
しかも、国内のシェアの大半を占めスーパーの棚を独占する大手3社の食器用洗剤はどれも一様に濃縮されていて、それ以外の選択肢はほぼない。

これは、市場を寡占する大手企業が一様に、とにかく「強力さ」と1円でも「安い価格」"だけ"を突き詰めた結果だと思う。

そうやって考えてみると。
毎日何気なくつかっている日用品が今の見た目や中身なのは、
結局はすべて(マス市場をターゲットにしている)大企業側の都合で決まっているだけであって、私や妻を含めた消費者にとって必ずしもベストなものになっていないんじゃないか?

それってものすごく「前時代的」で「20世紀的」なことなんじゃないか?
そう感じるようになった。

日用品という、過去何十年ほとんどイノベーションが起きてなくて、誰もテンションが上がらない市場。
機能と価格だけが重視され、いつの間にかどの商品も同質化してしまった市場。(実際に、大手の食器用洗剤の中身を入れ替えても、恐らく誰も気が付くことはないだろう)

そんな市場にこそ、「真逆の価値提案」で挑む余地があるんじゃないか?
そう考えると、急にワクワクしてくる自分がいた。

世の中への問い。
アンチテーゼとしてのブランド。

正しい例かわからないけれど、例えるなら、それまで機能的にも価格的にも画一化してしまってだれも見向きもしなくなっていたトースターや扇風機といった市場に、とんでもないこだわりでイノベーションを起こした「バルミューダ」のような日用品/洗剤を作りたいと考えた。

コンセプトは、
『毎日の家事を「プラスな時間」に変えるハウスケアブランド』

掃除・洗濯・食器洗いといった家事の「マイナスな時間をいかに無くすか」という考えに基づいた大手製品に逆らい、
むしろその毎日の家事の時間を「心安らぐ、ちょっとテンションが上がる時間に変えられないか?」という価値を提案するブランドを作る。
そんな理想を据えて、自宅の一室で商品づくりを始めた。

その後始まるモノづくりに関しては、正直「まぁなんとかなるだろう」と高をくくっていた。
その前まで兄と一緒にモノづくりの会社をやっていたので、多少なりとも経験はあると思っていたからだ。

だが、事の顛末から言ってしまうと、
ここから商品化まで当初想定の2倍以上にあたる約20か月かかることになり、さらに途中ものづくりが思うように進まないストレスで全身にミミズばれのような蕁麻疹に悩まされることになるなど、七転八倒の経緯を経ることになる。

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洗剤を作ると決めたその日から、自宅には国内外から買い寄せたナチュラル系の洗剤と、実験用のビーカーやピペット、自分で調合した精油の瓶、それらをつかって試作した怪しげな手書きラベル付きの容器であふれるようになった。

毎日部屋にこもって、何百、何千と試作を繰り返しながら、
私の妻やふたりの子どもに自信をもって使わせられる植物由来成分や天然原料を1つ1つ取捨選択していった。

さらに、何よりこだわったのは「香り」だ。

なぜなら、香りは五感の中で唯一、理性の脳(大脳新皮質)を経由せずに直接感情の脳(大脳辺縁系)に作用し、「いい香りは理屈抜きに気分を上げてくれる」からだ。

家事の「体験」自体を変えるには、絶対に「心から良いと思える香り」が不可欠。
そう考え、安価な人工香料を使うのが常識だった洗剤の香りを「100%天然精油」のみで作ろうと決めた。

台所、お風呂、リビング、寝室、、、毎日を過ごす家の中のそれぞれの空間に最適な香りをデザインするために、商品ごとに異なるオリジナルの精油ブレンドを調合していく。

また、「香りの原料には日本らしさを感じられるものを取り入れたい。」と考えて、高知県四万十のゆず産地をはじめ、青森から九州まで全国津々浦々の国産精油の産地を訪ね歩いた。

そんなことを1年以上くり返し、各商品の"レシピ"を決めていった。

そのレシピ決めもたしかに大変ではあった。
しかし、本当の問題はそれを量産してくれる工場探しだった。

考えてみればある意味当たり前かもしれない。
シャンプーや化粧品などを新しく立ち上げようとするベンチャー企業は多々あり、そのニーズを満たすために化粧品のOEM工場というのは全国各地にたくさんある。
一方で、洗剤をゼロから、しかもナチュラルな成分だけで作ろうとしているベンチャー企業などほとんどおらず、したがってそのニーズにこたえられるOEM工場はほとんど存在しないからだ。
(しかも化粧品のOEMと洗剤のOEMというのは業界的には分断されていてしまっている)

直面した問題は大きく2つ。
成分の問題;
「自分自身が家族に使わせたいもの」という基準で成分を選定していった結果、それぞれの商品の成分が化粧品に近い基準になってしまい、洗剤のOEMが通常使用する原料などでは対応しきれないこと。

②生産ロットの問題;
前述の通り、洗剤市場は大手が寡占しているので、メーカーというと大手しかいない。なので、発注ロットが馬鹿みたいにデカい。(しかも、オリジナルの成分で作ってもらおうとする場合にはなおさら)

特にOEM工場にツテがあるわけではないので、まずはWEB上で「OEMやってます」と書いてあるところにはほぼすべて連絡してみることにした。
しかし、そのほとんどは業務用洗剤のOEMばかり。やはり、メールや電話で事情を説明すると門前払いがほとんどだった。

「そんな化粧品みたいな基準で洗剤を作るところなんてありませんよ」
「どうしてもというなら1種類につき4トンからなら相談にのれますけどね」
「そもそも御社は販路を持ってるんですか?」
と、なかなか取り合ってはもらえない。

(「4トンから」と言われた時は、一応平然を装い「なるほど~、ちょっと検討します!」と答えるのが精いっぱいだった、、w)

次に、スーパーやドラッグストアに行っては、化粧品なども含めいろんな商品のボトルの裏に書いてある製造販売元の会社名をメモし、片っ端から電話。

電話で話しても門前払いされることを学んだあとは、「菓子折り攻撃」に。(電話では、概要だけお伝えし、詳しくは菓子折りをもって直接訪問して説明させてもらう作戦に。)
菓子折りをもっていくことで、随分と話を聞いてもらえる時間は長くなった。笑

埼玉、群馬、山梨、長野、岐阜、高知、広島、各地のいろんな工場に訪問した。
それでも、前述の成分とロットの問題で、なかなか話を前に進めてくれる工場には出会えなかったが、
3か月目に、ようやく「面白いですね。じゃあ試作してみましょう」といってくれた埼玉に工場を持つ会社と出会うことが出来た。

その日は、喜び勇んで家にかえり妻(と、ついでに3歳の息子にも)に報告し、ビールでささやかなお祝いをした。
(息子には特別にアンパンマンジュースを買っていった。)

しかし、その後待てど暮らせど連絡は来ず。。
もちろん試作サンプルも届かない。
2週間がたち、1か月がたち、2か月がたち、、、
その間、メール、電話、訪問、色々な方法で連絡をとったけれど、そのたびに「あーあれですね!今やってますんで、来週中には!」との回答。

そこからさらに、1か月がたち、2か月がたち、、、
最初の訪問から4か月がたったころ、ようやく試作サンプルが届いた。

しかし開けてみると、当初お願いしていたものとはまったくかけ離れたものだった。

その件を確認しようと何度か電話をしてみるも、なかなか電話に出てもらうことが出来ず、そして最終的には居留守をされてしまうまでに。。
(あの電話越しに微かに聞こえた「今外出中だと言っておいて」という言葉は今でも覚えている、、)

その1件でさすがに観念し、それまでかかった時間と労力が無駄になることに後ろ髪引かれながらも、改めて別の会社を探すことに。

再びゼロから候補のリストアップをはじめ、電話や"菓子折り攻撃"を繰す数か月前のデジャブのような毎日。

2か月後、ようやく別の会社がみつかった。
東京のしかも自社の直ぐ近くの会社で「灯台下暗しとはこのことだ!ハッハッハ!」と、異様なテンションで妻に話をしたのを思えている。

しかし、1か月後、紆余曲折経たその会社からの最終的な答えも「否」。
現場の方はコンセプトに共感してくれたものの、やはり会社としてはビジネス的に難しいという判断だったのだと思う。

またしても外されてしまったハシゴ。
それまで40工場以上に断られ、しかも状況はまた半年以上前に逆戻り。
「自分のこの半年はなんだったのか?」そんな風に考えてしまう。

全身にミミズばれのような謎の蕁麻疹が出たのはこの頃だ。
「誰かに言われて始めたことでもないし、今諦めても誰も困らない」
そんな考えも頭をよぎる。

「やはり、出来たばかりの社員もいない会社が、大手ばかりのこの市場で新たにモノづくりをしようとしていること自体が間違っているのか?」
何度も自問自答した。

けれど、そのたびに励ましてくれた妻の後押しもあり、最終的には「そんな市場だからこそ、やる意味がある」と思い直した。

3度目の正直で、工場探しを再スタート。
だけど、既に全国のめぼしいOEM工場にはすべて断られている。

そんな途方に暮れた状況で手を差し伸べてくれたのが、長野で30年以上前から「やさしさ」にこだわって洗剤などのハウスケア商品を自社ブランドで作られてきた、現在の協力工場だった。

元々その会社の商品は知っていたけれど、連絡はしていなかった。
なぜなら、その会社はOEMではなく、メーカー。言うなれば(狙っているターゲットは違うけれど)競合に近い。
なので、当然OEMなんて受けてもらえるはずもなく、候補先リストにも入れていなかった。

ただ、事ここに至ると、当たって砕けろという想いで、いつもの通りダメもと電話。
電話に出た社員さんに「OEMの件でご相談が、、」と話すと、案の定反応が悪い。
一応「担当者が外出中なので、折り返しご連絡します」との回答だったが、それはこれまで幾度となく聞いた"断りの言い回し"だ。

「その(断りの)パターンも知ってる」と、スラムダンクの赤木v.s.河田の名シーンのセリフを独りつぶやきながら電話を切った。
1日たち、2日たち、、案の定電話は来ない。

はっきりとその場で断らない日本人特有の婉曲な言葉遣いにもはや恨みを持ちながらも、待つこと3日目。電話が鳴った。
知らない番号からの着信に慌てて電話に出ると、社長さん自ら電話をくれたようだ。

社長さん「お電話遅くなりました。先日ご連絡いただいたOEMの件ですが、」
私「はい!」
社長さん「申し訳ないんですが、うちはメーカーですし、小さい会社なので基本的にOEMはやってないんですよぉ」
私「(やっぱりそうだよな、、と思いつつ)そうなんですね。なるほどー、ただ、"せっかく"なんで一度ご挨拶"かねて"お伺いして、お話しさせていただけませんでしょうか?」

もはや何が「せっかく」なのか、何を「かねて」いるのか、自分で言っておきながらよくわからないけれど、ここぞとばかりに"THE JAPANESE 婉曲表現"を駆使してお願いする。

その時は外で電話していたのだけれど、電話越しにめちゃめちゃ頭をさげている私の姿はさぞかし異様だったかと思う。笑

その後しばらくのやり取りの後、
社長さん「明日の午後なら、、」
私「伺います!!(即答)」

翌日、「ここでダメなら諦める!」という覚悟をもって、高速を車で4時間飛ばして先方の長野の事務所に伺った。

それまで何度となく繰り返した商品のコンセプト説明を必死にした。
すると、「その考え方には共感する。うちは商品のやさしさには自信があるけど、そこに”楽しさ”をのせるというチャレンジはぜひしてみたいので、やれることは限られるかもしれないが、協力させていただきます。」とのまさかの即答。

それまで合計で40社以上の工場に断られてきた経緯があったので、正直最初はいつもの社交辞令かと思った。

しかし、ドキドキしながら待つと、2週間後本当に試作サンプルが届いた!まだ完成もしていない単なる試作サンプルにも関わらず、文字通り"小躍り"して喜んだ。笑

もちろん、そこから完成品が出来るまでも、何十回の試作を行い時間も大いにかかることになった。
・「これがベストだ!」と思う香りを作ってみたものの、それを基剤(ベースとなる洗浄成分など)に混ぜてみると香りが全く変わってしまったり

・何とかやり直して基剤に混ぜたときに最適な香りを調合してみたものの、今度は製品の安定性(例えば40~50度の恒温槽に一定期間置いておいても中身が変化してしまわないかを実験する)が確保できずに、また基剤の調整からやり直したり

何度も行ったり来たりしながら試作を繰り返す日々が続くが、
工場探しの日々に比べると体感的にはあっという間だったし、何よりそのモノづくりの過程自体が楽しくてしょうがなかった

そして今春、ようやく、本当にようやく、商品の量産を開始することが出来た。
量産に際して初めて各工場にお金を払ったが、お金を払うことがうれしいと感じたのは人生で初めてだった。笑

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そんなモノづくりのドタバタを経て、
また(ここには書ききれていないが)様々な人の手を借りて、ようやく【ハウスケアブランド Komons】を世にだすに至る。
『Komons』公式HP

ブランド名の「Komons(コモンズ)」の由来は、着物の柄である「江戸小紋」だ。

江戸時代、幕府から贅沢をせず無地の着物を着るようにと言われた人々は、遠目では無地に見えるのに近くで見ると柄模様がしっかり楽しめる、そんなデザインを生み出した。
普段着用の着物の柄である江戸小紋は、多くの江戸町人の「何気ない毎日を、ちょっと楽しくする」ことに一役買った。

2018年、家事の体験を変え「何気ない毎日を、ちょっと楽しくする」ために生まれたKomonsは、その由来である江戸小紋の柄をモチーフにしている。

ここまでくると、もはやこのKomonsの1つ1つの商品は自分にとっては「作品」だ。

実際、愛情余ってそれぞれの商品に"名前"も付けた。
例えば、食器用洗剤は「Don't Look Back in Anger」、トイレクリーナーは「Shelter from the Storm」といった具合だ。
(なぜトイレクリーナーが「Shelter from the Storm」なのか?というはなしはこちら

このKomonsの商品で、大手が寡占し強力さと価格だけが最優先される日用品の市場に、自分なりの"問い"を投げかけられればと思っている。

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まだクラウドファンディングでの先行販売のステータスではあるが、ようやく発売を開始するこのタイミングで感じることは、
「売れる売れない関係なく、作品として自分が納得いくものを世にだしたい」というモノの作り手としての気持ちと
「どうせなら世の中の人に知らしめないと意味がない。どう届けるかが腕の見せ所だ」と思うマーケターとしての気持ちの両方がある。

正直最近はどっちが本当の自分なのかよくわからなくなっているが、たぶんどちらも本当の自分なんだと思う。

時間はかかってしまうかもしれないが、その両方のバランスをとりながら、少しずつこのブランドを育てていきたい。
そして、国内だけでなく海外にも展開し、経済的にも成立するものにしていきたい。

既に、借金して得たお金の半分以上は、初回ロットの生産で消えていった。
不安はあるが、ここからが本当のスタートだ。

悩みながら少しずつでも、「日本らしいモノづくり」×「D2C」の可能性を証明していければと思う。

Komons(コモンズ)公式HPはこちら!

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