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青山塾の授業の話(素晴らしいですねって言われた!)

前回ののnote
青山塾に行こうと思ったきっかけ、その3(木内達朗氏のこと)
の続きとなります。

なんだかんだありまして、最初の授業の日の話。

入塾書を書いてから、初めての授業の日になるまでちょっといろいろありました。端的に言うとお金がないことに気が付き(最初に気がついて!)4月入塾を伸ばして7月から授業を受けることにしました。

カリキュラムの途中から授業を受けることになり、
そのころには、見学の時のテンションは下がりきっており、いつもの投げやりな私に戻っていました。

そして、当時のイラストレーターの仲間や、友達など、誰にも青山塾に入ることを私は言っていませんでした。
美大を出て何故また絵を何で勉強するの?とか、
もうイラストの仕事してるじゃんとか、現実を見ろ!とか
言われるんじゃないか、笑われるのではないかと、ビクビクしていました。
私はもしかして全く無駄なことをしているのじゃないかな、ととても不安でした。

木内先生の初めての授業ですが確かモデルドローイングでした。
モデルさんをみながら絵具でスケッチのような短時間で絵を仕上げました。
その際、ゆっくり生徒を見て回って来た先生が、後ろから私のドローイングを見て私に言ったことが、

「 素晴らしいですね 」


はぁ!? って思いました。 世界の木内が?

私に!? 素晴らしいですねって

言ったよ???

衝撃的のあまり私は振り返ることも出来ずに、硬い表情で軽く会釈しただけでした。
先生は去っていきました。

私、全力でがんばりまぁぁぁぁす!!!!!

って思いました。ありがとうございました。

青山塾のイラ科の生徒たちはもう知っていると思いますが…
木内先生は非常に「素晴らしいですね」を多用します。
というかほぼ「素晴らしいですね」「いいですね」「可能性を感じる」など良いことしか言わないです。
たまに「今日はどうしたの?」と聞きます。それはたぶん調子が出なかったときです。
基本的にすごい褒めてくれます。なのですごい楽しいです。

私は帰ってからも次の授業が楽しみで仕方ありませんでした。

さて、その木内先生の二回目の授業、
その時のことをとても青山塾にいた2年間のうちで一番(かな?)印象的で、はっきりと覚えています。


二回目の木内先生の授業の話

イラストレーション科には木内先生と舟橋先生がいます。
今回のこのnoteではテーマを絞るため木内先生のことばかり描きますが
そのうち、舟橋先生のことも書きたいと思います。
木内先生に劣らず、個性的で素敵な先生です。たくさんユニークなエピソードがあります。

その授業は課題がありました。既存の短編小説を読んでその挿絵描くという実践的な授業で、その前段階としてラフ(アイデアのスケッチ)を作ってくるように言われていました。

私はイラストレーターとして10年の経験があったので、少し自信があり、そして文芸の挿絵の仕事はぜひこれからやりたい仕事の一つだったので、先生にラフを見てもらって何を言われるのか楽しみでした。

いよいよ私の番が回ってきて、木内先生にラフを見てもらいました。
先生は少し黙って「うーん、これはこれでよく出来ているけど、小説の挿絵としてはちょっと違うんだよね」と言いました。
どういうことだろう。何が違うのだろう。さっぱりわかりませんでした。

「このラフは物語の決定的な瞬間ばかりを描いているけど、挿絵というのはそういった瞬間よりもほんの少し前か後を描くんだよ。ずらすんだよ。」
先生は確かそんな感じのことを言ったと記憶しています。

ワーッと思いました。そうなんだ!文芸ってそうなんだ…と思いました。

そのあと先生は時代劇のチャンバラシーンに例えて、挿絵を描くならばどのようなシーンを描くかと身振り手振りで説明してくれました。

確かに…!
私が今まで仕事で書いてきたのは、その決定的な瞬間の場面ばかりでした。

プレゼントを渡されて嬉しい!の瞬間、食べ物を食べておいしい!の瞬間、トラブルになって困っている!の瞬間…
今まで描いていたイラストが走馬灯のようによぎりました。

そして、今まで私がこれまでイラストの仕事をしながら経験したこと、仕事がつまらなくてブラブラと本屋の文芸誌を立ち読みしていた時のこと、好きな小説を読んでいた時のこと、木内先生の絵を見ていた時のこと、
様々なバラバラの経験が爆発的に思い出され、それらがまた分解しつつも私の中の一点に集中していくような感じでした。

少しですが確実に理解できたような気がしました。
「そうなんですね!?」と先生に返すのが精一杯でしたが。

誤解してほしくないのは、直接的なモチーフのイラストがダメて、文芸のイラストが良いとかそういうことは、私は思っていません。先生も間違いなく思っていないと思います。
ただ私は自分の絵を見てもらってアドバイスをもらい、今までの経験に照らし合わせて新しい発見があったということが、私にとって最高の出来事でした。

その後もたくさんのアドバイスを木内先生や他の先生から頂きましたが
これがとても印象的で、私にとって事件のようなインパクトがありました。

ほんの少しのアドバイスに、ほんの少しの理解。

いつも青山塾に来ると、そういった体験に出会えました。
私も他の生徒のみんなも、それを頼りに沢山の課題を仕上げました。

少しづつ私の中に何か広がって来るような感じでした。
その感じは卒業後も、ゆっくりとささやかですが続いているような気がします。


では、今日はここまでとさせていただきます。
これまで集中的にnoteを書いてきましたが
これからはゆっくりペースで更新していこうと思います。
もし、ここで書いてほしいテーマなどありましたら
コメントなどでお知らせくださいね。
ではまたお会いしましょう!


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