丸々

コミュニティの今と未来 -共同体の拡張-

最近至る所で聞くようになった言葉「コミュニティ」

プライベートな人間付き合いや集団を表していた言葉が今になってビジネスの世界でも語られるようになり、様々なメディアでコミュニティについて議論する場が生まれるなど注目されているこの概念。

自分自身WeWorkという会社でコミュニティアソシエイトという職種についているが一体コミュニティとは何なのか、なぜ今注目されているのか、これからコミュニティが担う役割について自分なりの考えを書きたいと思う。

<現代におけるコミュニティとは?>

「コミュニティ」という言葉はアメリカの社会学マッキーヴァー(MacIver、 R.)が、共通目的を目指す機能的な結社である「アソシエーション」との対概念として、設定した社会集団の類型である。

彼はコミュニティを「一定の地理的範域に居住し、共属感情をもつ人々の集合体を指す」と言っており、基本的には、(1)地域性と(2)共同性の2つを要件としてもつ概念である。

したがって、前者を強調すると地域、近隣、居住地などに関わる意味合いをもち、後者を強調すると同じ信条や関心を共有している人々がつくる「共同社会」の意味合いになる。つまりはリアルな場所を共有しており、似たような価値観や興味関心を持った人々の集まりが元来のコミュニティという定義になる。

上記の通り、日本では地域をベースにてコミュニティという集合体が地域社会を支えるものとして機能していたが、それも時代の流れによってこれまでに大きく変わってきた。

都市化や産業化が進むに連れて、1)職住が分離して人々の生活圏域が拡大し、(2)人口移動が活発になって移動型の生活構造が主流になり、(3)人々の生活価値観が多様化し個人化・私化が進行、(4)分化した専門サービスに依存する傾向を強めるなどして地域に根ざした旧来のコミュニティはバラけ、個が至る所に点在する社会に変わっていった。

その影響により人々の孤立化や個人化、地域社会の問題対処能力の低下などが問題視されるようになり、1960-1970年代には新たな地域社会の形成、すなわち「社会目標としてのコミュニティ」概念が注目を集めた。

具体的な施策としてはコミュニティ形成の範囲を小学校区程度の広がりに設定するというゾーニング、コミュニティ・センターなどの地域集会施設の設置、それを地域住民が管理運営するための住民組織を結成するなどが取られたが、決して今のようにビジネス領域でも注目を集めるようなものではなかった。

それが大きく変わったのは間違いなくインターネット、特にSNSの登場だろう。都市化の発展によってちりじりになった個人がインターネットという場を共有して自らの考え方や趣向を発信し、似たような考え方を持つ別の個人と繋がることが可能になったのである。

つまりコミュニティの要素であ(1)地域性と(2)共同性が場をリアルに共有していなくてもネット上で成り立つようになったということだ。

現代のコミュニティはインターネットを介して、場所を共有せずとも成り立つものへと変わっていったのである。

<なぜ今コミュニティが注目されているのか>

このようにしてインターネットを通じてコミュニティが成り立つようになった社会でコミュニティがこれだけ注目されているのは、個人にとっての新たな居場所になったり、社会にとってボランティアのような社会貢献活動を後押しする存在としての意味ももちろんあるが個人的には事業を営む企業・個人にとってビジネスインパクトがあると認識され始めたことが一番大きな理由だと思っている。

ではどんなビジネスインパクトをコミュニティは与えているのかを3つに分けて説明する。

①マーケティング面でのインパクト
第1の理由はマーケティング視点でのインパクト。
FacebookやInstagramなどSNSのプラットフォーマーであれば別だが
それ以外の会社にとっては趣味嗜好がバラバラになった個人の中から自社のペルソナに合った人間に適切にアプローチすることは簡単なことではない。
コミュニティのように同じような考え方を持った人たちの集まりは、彼らを対象とするビジネスオーナーにとっては自らの対象としている人間に一気にアプローチできる可能性を持った貴重な存在になり得る

②エンゲージメント面でのインパクト
第2の理由はエンゲージメント面のインパクトである。
あらゆる製品・サービスが生まれては消えていく今の世の中によっては一度利用してくれた顧客に長く製品・サービスを使い続けてもらうことは非常に大事になってくる。

ビジネスオーナーはユーザーのコミュニティを形成することで、彼らと直接コミュニケーションを交わし人間関係という継続利用のインセンティブを作ったり、彼らの声を基にした改善行動をとることで製品サービスに対する愛着を生むことができるようになる。

③イノベーション面でのインパクト
第3の理由はイノベーション面でのインパクトである。
ビジネスに紐づくコミュニティに長く属する個人はもはや1ユーザーという範囲を超えて深くその会社や事業に対して理解をしていく。彼らの意見・アドバイスはビジネスオーナー側が交わしてきたたくさんのコミュニケーションを基に発せられており、時に企業が気づかなかった新しい示唆を与えてくれることさえある。

このようにコミュニティがビジネスの世界において価値を発揮され多くの場面で見かけるようになったコミュニティ。

では今後コミュニティはどうなるのか、コミュニティを仕事にする人間に求められることは一体なんなのかを最後に示したい。

<これからのコミュニティはどうなっていくのか?>
近い未来として(もはや現在に近いが)これからのコミュニティはおそらく家族や友人、仕事仲間という概念を内包した非常に抽象度の高い共同体になっていくだろう。

これをわかりやすくイメージするには最近有名な西野さんや箕輪さんのオンラインサロンを見てみると良いと思う。

彼らのオンラインサロン内では日々新しいプロジェクトが生まれ、それこそ金銭授受のあるビジネスとして機能している部分があると思えば
フラット飲み会で最近の悩みや相談をしたり、それこそ何かお祝い事(結婚や誕生日)があれば一緒に祝う友人や家族のような人と過ごす場所にもなり得るだろう。

これからも強い未来へのビジョンを持つ人間の周りに、こんな形で小さな村、もはや国家のようなコミュニティが複数生まれていくことになると思う。

この流れ自体は非常にポジティブに考えていて、さっきのビジネス的なインパクトを持っているだけでなく、個人にとって気の合う仲間と時間を過ごせる人生を歩む上で非常に大切なものとして機能していくのだと思う。

1つだけ心配しているのは、そのコミュニティ以上に共同体感覚を持てなくなると、国家が国家として機能しなくなるということだ。

自らのコミュニティの外を共同体としての感覚を持てなくなった瞬間に、より大きな共同体としての協調行動は少なくなっていく可能性があると思う。

例えるのなら、今の政治問題への無関心も日本という国家を1つのコミュニティ、共同体として認識できていないことが招いている結果だと言える。
それがより加速され、小さなコミュニティ内での生活が全てになっていく危険性がコミュニティには潜んでいる。

だからこそ僕は、コミュニティを仕事にする人間としてやるべきことはコミュニティ同士の接点をつくり、「共同体」としての意識を拡大していくことだと思う。

西野さんのサロンと品川さんのサロン、オリラジ中田さんのサロンが共同でイベントを行うように、個人ではなく、コミュニティ同士で近い思想を持つコミュニティが集まり、より大きなミッションのために共同体として活動してくような機会を作っていくことで自分の属するコミュニティの外とも繋がり、人間関係を形成し、お互いが思い合ってより良いビジョンに向かって協働していく社会を作る必要がある。

個人と個人が繋がって1つのコミュニティができたように、今度はコミュニティとコミュニティが繋がってより大きなコミュニティを作り、その大きさが大きくなって国家と同じ規模感になった時日本は本当の意味ですごく強い力を取り戻せると思っているし、このコミュニティ同士をつなぎ合わせる作業がコミュニティという仕事に従事している人間に求められていることだと思ってる。

長くなったが、コミュニティという力を信じているからこそ、世界をよりよくしていく共同体としてコミュニティが力を発揮できるようにその接点に自分自身がなることをここで宣言したい。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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