アメリカの大学スポーツは儲かる!?

前回に引き続いてアメリカの大学スポーツをテーマに書いていきます(特に今回はNCAAのDivision Iを中心に。)

アメリカの大学スポーツ事情を少しでも聞いたことがある方なら、その規模の大きさや人気の高さについて一度は耳にしたことがあるでしょう。もしご存知でない方はこちらの動画こちらの動画を見ていただけるとその雰囲気や盛り上がりを感じ取っていただけるかと思います。どうですか?プロスポーツと同等、いやそれ以上と感じたのではないでしょうか。

また、前回の記事にて述べたように大学バスケットボールチームのコーチのほとんどはフルタイムで雇われており、中には年収が億を越すコーチも少なくありません。ちなみにUSA Todayによれば,昨年NCAAのコーチで最も年俸が高額だったアラバマ大学フットボールチームのニック・セイバン氏のサラリーは日本円にしておよそ12億円という額でした。

更には学生アスリートをサポートする体制も非常に充実しており、アマチュア規定により給料はもらえませんが、それ以外のことについてはまさに「至れり尽くせり」と言えるほど非常に恵まれた環境にあります。例をあげればキリがありませんが、この辺の詳細については、自身がDivision Iのアスリートと経験した小和瀬さんに話を譲ることにしましょう。

さて、ここまではある意味で前置きです。

これだけのプロ並みの規模と人気を誇り、コーチは億越えも珍しくなく、更に選手は至れり尽くせりという環境にある、そんなNCAA Division Iの大学はさぞかし大儲けをしておりプロのような運営をしているのだろうと思うことでしょう。では、実際にどれくらいの大学が儲かっている(=収入が支出を上回っている)のでしょうか。ちなみに、NCAA Division Iには現在347校が所属しています。

一昨年のデータですが,答えはUSA Todayのページから分かります(州立大学のデータのみなので正確な数ではありませんが)。少しデータとにらめっこしてみてください。
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ズバリ答えを言えば、24校です。単純に「Revenue>Expenses」となる学校は145校ありますが、実は”Total Allocated”という項目にちょっとしたカラクリがあります。これは何かというと、「大学側から割り当てられた予算」のことです(つまり、アスレチックデパートメント単体で稼いだ収入ではない)。そして、多くのDivision Iスクールがその運営を”Allocation”(割り当て予算)に依存していることがわかるかと思います。最もAllocation割合の高いUC Riverside(カリフォルニア大学リバーサイド校)に至っては9割近くが大学からの援助です。これではお世辞にも儲かっているとは言い難いですね。トップのテキサス大学やテキサスA&M大学などに目を向ければ数億円から数十億円の黒字を生み出していますが、それはごくごく限られた一部の学校にすぎないわけです。

このAllocationですが、大元を辿れば一般学生のStudent Feeだったり州からの補助金であったりします。極端な話を言えば、一部の大規模校を除いて、Division Iアスリートの恵まれた環境を支えているのは一般学生と税金だという見方もできるわけです。ちなみに、先ほどのデータの中でAllocation額が最も多かったUConn(コネチカット大学)のStudent Feeは年間おおよそ30万円ほどで,計算上1人あたり10万円ほどがAllocationに回されていることになります。考えてもみると一般学生にはかなりの負担です。

これがDivision II,IIIあたりになると奨学金の枠や運営しなければならないスポーツチームの数がぐっと減るので,収入も少ないですが支出も少なくてすみます。実際、サバンナ州立大学のようにDivision IからIIへ移動する大学も見られました。

それでもDivision Iの大学は増加傾向であり、ここ30年ほどでDivision Iへ新たに加入した大学は70以上もあります(そしてそのほとんどが儲かっていない。)そうまでしてでもDivision Iに所属しようとする理由としてはやはり大学のブランド価値を高め、より多くの学生を惹きつけるという効果を期待してとのことなのでしょう。しかし、実際の効果のほどは明らかではありません。

長くなってきたのでこの辺で締めますが、今回の記事を通して華やかなカレッジスポーツの現実的な側面を感じられたかと思います。表題の問いについて言えば、「一握りを除いて大抵の大学は儲からない」が答えになるのでしょう。

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