アメリカのコーチ留学について

先日、知り合いのNさんという方からコーチ留学したいのだけど、どういう留学の仕方があるか教えて欲しいという質問があり、それに対して自分の経験ベースでどのような選択肢があり得るか・どれをオススメするかについて回答しました。

過去にも同様な質問を受けたことがあり、もしかしたらNさんと同様にコーチ留学を志しており、どういった選択肢があるのか知りたいという人が結構いるかもしれないとふと思いました。せっかくなので、その回答をブログという形で共有しようかと思います。(なお、個人に関わる部分や補足事項については一部編集を加えてあります。)

ちなみにNさんは現在社会人で、数年後に職場の制度を利用して1年間休職してコーチ留学をしたいという旨で相談を受けました。また、留学先としてはアメリカで学びたいとのことだったので、それを受けた上での回答です。

<以下引用>

とりあえず思いついたことバーっと書いていくので、気になるところあったらどんどん突っ込んで聞いてください。

ひとまず、アメリカで1年間という比較的長期に渡って学ぶのであれば、まずどういうステータス(身分)で行くのかというのが重要になるかと思います。たとえば*XさんやYさんのようなパターンでは、短期の滞在のため観光ビザでアメリカにいることができますが、基本的に1年間という長期では別のビザを取得しなければなりません。

*毎年アメリカに渡って短期(1~2週間程度)滞在中に練習見学などをされている方

考えられるビザの種類としては、就労ビザトレーニングビザ学生ビザのいずれかになるでしょう。今回は(目的が仕事をすることではなく)アメリカでバスケの勉強をするとのことなので就労ビザのパターンについてはまず除外します。
トレーニングビザは、Jビザのようにインターンや無給での就労に使えるものがありますが、この辺りは僕もあまり詳しくないので別の方に聞いたほうがいいです。トレーニングビザは就労ビザほどではないですが、ビザ取得のハードルは高く時間もかかります。
その点でいうと、学生ビザは留学資金の目処さえ示せればかなり容易にビザを取得できるので、先にあげた中ではもっともハードルが低いと言えるでしょう。また、Nさんのバスケを勉強するという目的にも合致するかと思います。なので、僕の今回の話では基本的に学生ビザを取得して、バスケ留学をするというパターンについて考えることとします。以上が前提です。

さて、一口に学生ビザを取得してバスケ留学すると言ってもそのパターンは様々あります。以下では学生として何を学ぶかについてと、バスケをどこで学ぶかについて書いていきます。

まず、学生として何を学ぶかについてです。ちなみにバスケットボールそれ自体を学ぶことでビザを出してくれるような学校は(アメリカには)ありません。なので、バスケの勉強以外にもう一つ学生としてのステータスを保つために何か勉強するものがないといけません。

代表的なもので言えば、語学学校があります。英語を勉強する学校(もしくは大学の語学プログラム)に入ることによって、学生ビザを得るという方法です。メリットは、入学までのハードルがほぼ無く、また大抵学費が安く済む点です。留学生対象のプログラムなので、英語のハードルも比較的低いと言えるでしょう。デメリットとしては、授業で拘束される時間が他のプログラムと比べると多い(しかも練習時間になることの多い午後の時間とよく被る)ため、バスケットの勉強に時間を割きづらい点があります。また当たり前ですけど、クラスメートが留学生しかいない(しかも自分の英語力とさほど変わらない)ため、アメリカ人や自分より英語の上手な人と交流することで英語力を日常的に高めるという経験は教室の中では得難いです。さらに言うと、語学学校に通う学生は後述する大学のマネージャーになりたいとなった場合に、正規の学生ではないため受け入れてもらえない可能性があります。

別の勉強する場としてはコミュニティカレッジ(日本でいうところの短大)や*大学などで現地の学生とともに授業をとるという手段があります。当然現地の学生に混じって勉強するため、入学前の段階で英語力がある程度必要ですから、勉強のレベルとしても語学学校よりもレベルが高いと言えます。また学費も語学学校より高いケースが多いです。その分、授業そのもので拘束される時間は語学学校に比べると少ないのでうまくタイムマネジメントできればバスケットの勉強も思う存分できるかと思います。また、現地の学生と一緒に授業を受けられるため彼らとの交流を通じて日本では得られない経験ができるのが何よりの良さかと思います。ただし、Nさんの状況からして1年間という限られた時間なため学位取得までには至らず、単位のみとって帰国ということになりそうなのが難点ですね。ちなみにコミュニティカレッジの方が大学よりも学費が安く、勉強のレベルも易しいです。

*ここではundergraduate(学部生)のことについて指します

最後の選択肢としては大学院に通うことです。大学院であれば、1年間で学位取得をできるプログラムも存在しますし、コーチング学を専攻することもできるため、最もバスケを学ぶという目的に近い勉強ができるかと思います。また、大学院の場合は授業時間数もかなり少ないため(その代わり自習時間が多い)、自分で勉強する時間をうまくやりくりできれば、多くの時間をバスケットに割ける可能性が高いです。コミカレや大学同様にクラスメートの現地アメリカ人や他国からの留学生との交流も貴重な経験で、自分の元クラスメートには元プロの選手や今NBAで働いている人もいます。更にいうと、単にバスケ留学でアメリカに1年間いましたというよりも、修士号をとって帰ったほうがNさんのキャリアに分かりやすく大きな説得力をもたらすという点で、その意味でも大学院はオススメです。ただし、その分入学までのハードルはかなり高いです。また学費も相当にかかる点が難点です。ただし、2022年に留学スタートを計画しているとのことで、まだ勉強・資金準備にかける時間は十分に余裕があります。特に留学資金についてですが、日米ともに大学院生に向けた奨学金も存在するので、この辺りは入念にリサーチすれば割となんとでもなると思います。

以上が、アメリカで学生ビザを取る上で何を勉強するかについてです。

続いてバスケに関して、どの環境に身をおくかについてです。学ぶ方法についても、練習をひたすら見学させてもらい学ぶ方法から、実際にスタッフの一員として働きながら学ぶという方法まで様々あります(前者はXさんが毎年やっていることです)。単に見学するだけならそこまでハードルは高くなく、カレッジだろうとNBAだろうと、立ち回りをうまくやればある程度希望の場所には行けると思います。ただ、個人的にはせっかく1年という長期間いるのにこれだけで終わってしまうのは非常にもったいないです。それよりも、どこかのチームに属して、実際にチームの一員として働く経験を通じながら学ぶ方がはるかに大きな学びを得られるのではないかと思っています。では、どのチームに属するかについてですが、以下では育成年代(高校以下)、大学、プロ(NBA)の3つのカテゴリーについて分けて説明します。

まず、高校以下のチームに所属することに関してですが、これはかなりハードルが低いと思います。どこのチームもだいたい人手がいれば欲しいので、なんでもするという心意気さえ見せればチームにはいれてもらえます。アシスタントコーチという肩書きをくれるチームも中にはあると思います。ただし、それはなんでもやらせてもらえるということを意味するわけではなく、おそらく英語力の問題もあって実際にコーチングできる場面は限られてくるでしょう。アメリカの育成年代の状況を肌で実感するという意味ではすごくいい経験にはなると思うのですが、バスケそのものの戦術的・技術的な学びは少ないのかなと個人的には思っています。Nさんの目的・状況を考えると、そこまでオススメできる選択肢ではないです。

続いてプロ、つまりはNBAチームで働くことですが、これは逆にとてつもなくハードルが高いです。アメリカ人でもボランティアベースでやりたいけどチャンスが得られないという状況です。また、ビザの関係で仮に給料を得ていなくてもNBAで働くことは特別な許可が必要となるケースもないとは言い切れないので、海外から挑戦するという点ではなおのこと難しいと言えるでしょう。もちろん一旦身を置ければ間違いなく学びの環境としては最高ですが、実現度はかなり低いと言わざるを得ません。従って、NBAで長期的に身を置いて学ぶとしたら、見学ベースになるのかなと思います(もちろんそれはそれで大きな経験なのですが)。

最後に大学のスタッフとして働くことですが、これは最も実現性と得られるもののバランスがいいのかなと思います。そして、大学のスタッフとして働くとすればマネージャーになるのが最もあり得る選択肢でしょう。ご存知のように*NCAA Division Iの環境はプロと遜色のない環境が整えられています。マネージャーになれば、練習はもちろん、個人ワークアウトにも帯同できますし、チャンスがあれば遠征に(チームの費用持ちで)連れてってもらうこともできます。また、コーチングスタッフや他の同僚マネージャーもバスケットボールを深く知っている人たちばかりなので、彼らとのコミュニケーションそのものが大きな学びになります。高額なスカウティングソフトなどを使わせてもらえるチャンスも場合によってはあります。ただし、マネージャーは誰でもなれるわけではなく、チームによっては希望者が多いためセレクションを行っているところもあります。Dukeなどの強豪校は毎年何百人の応募があるという記事もありました。また、マネージャーになるためには、大抵の場合その大学の正規の学生にならなくてはなる必要があります。(つまりT大でマネージャーをするためには、他の大学やT大の語学学校生ではなれないということです)。また、マネージャーは概して忙しくなりがちなので、勉強との両立も結構大変です。それでも、チームに入るまでの難しさの度合い、身をおく環境のレベルの高さと、実際に得られる経験、いずれのバランスに置いても最も良いと言えるのがこのマネージャーになるという選択なのかなと思っています。
*この辺についてはまた別の記事で書こうかと思っています。

以上、大変長くなりましたが、どのような勉強をして、どのようにバスケを学ぶかについてでした。まとめると、大学院に入って、その大学チームのマネージャーになるのが最もオススメです。

<以上引用>

という感じで、非常に長文になりましたが、結論としては大学院に入学してチームのマネージャーになることをお勧めしておきました。

但し書きをしておくと、これはNさんの希望や現在の状況(カレッジのバスケから学びたい、既に大学を卒業し社会人をしている)を踏まえた上で、また自分の経験からわかることについてのみ伝えたので、何もこれが万人にとってベストというわけではありません。もし、NBAや育成年代などでうまく経験を積めるルートや、ヨーロッパなどの国で学べる環境があればそれも取りうる選択肢の一つでしょう。というわけで、次回はより一般的に、コーチ留学をする上でどういうことを留意するべきかというポイントについて書いていきたいと思います。

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Makoto Isono

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