ナミブ砂漠250kmマラソン完走記その6〜I have a Dream〜

「木村さんですよね?!」

「はじめまして。ぼく、先日メールさせていただいたチカマです」

「え?チカマさん?そうでしたか!まさかこんなところからお会いできるとは!はじめまして、木村です」

「そうですよね、テントメイトですもんね。こちらは関西からきた僕の友人で、アヤです。アヤも一緒のテントです」

「はじめまして、アヤです。何もわからんけどきちゃいました、よろしくお願いします」

「いやいや、僕なんて現地にたどり着くのができるかどうか怪しかったので、お二人に会えてよかったです」

砂漠での過酷な7日間を(イヤでも)共に過ごすことになる、テントメイト。

スタートまでまだ3日あるが、ここから僕らの旅はスタートしたのだった。

初対面となるチカマ&アヤペアと途中まで便も同じだったので、

シンガポールでワイワイごはんを食べながら楽しく過ごし、

不安だらけだった僕は不安なく移動することができた。

※注 二人がじつはカップルで、、な昼ドラ展開はありま、、、せん。たぶん。

ちなみにチカマさんは事前に僕のブログをみて個人的に連絡をくれていて、

偶然テントメイトとなり、偶然このタイミングで出会った。

なにか運命めいた力が裏で働いているのだろうか。

いずれにせよ、僕はなかなか恵まれているのだろうと思う。

そんなこんなでいよいよアフリカのケープタウン空港に到着。

ここでチカマ&アヤペアとはしばしのお別れ。

残すは南アフリカ航空便での3時間のみ。

空港内では実感こそないが、いよいよアフリカ大陸へ降り立ったのだと思いながら待合所へ移動した。

「あ、木村さ~ん」

コーヒー片手に欧米人男性と一緒にくつろいでいる笑顔のミキさんだった。

そうミキさんこそ、ウォルビスベイ空港からの移動を共にしてくれると連絡をくれた大天使なのである。

ミキさんとは事前に参加した「砂漠会」で面識があり、そのときにたくさんのアドバイスをいただいた仲であった。

(ミキさんは南極The Last Desertsを含め、これまで多くの砂漠を制しているのだ!)

そこに、このくつろぎ感での登場。

見知らぬアフリカの地でチカマ&アヤペアと離れ、再び暗殺されまいかと緊張していた僕の心が、

まるで道後温泉に浸かっているかのごとく安らいだのは言うまでもないことである。

ミキさんの隣に座っている大柄な欧米人の男性も、ナミブ砂漠マラソンの参加者であった。

好奇心旺盛ながら英語力マイナス22万の僕は早速この男性と会話をしてみた。

が、やはり伝えたいことが伝えられず聞かれたことも理解できない。

僕は生まれたての子犬の目でミキさんを見つめた(通訳をお願いしてほしそうに)。

「木村くんならできるわよ、カンタンカンタン。きっと通じるから、直接話してみたら」

(なにぃ〜〜っノホホン口調でいきなりワイルドな無茶振りだぜぇ〜〜っ)

しかしミキさんのその素敵な笑顔につられ、その瞬間に僕の英語力は不思議な力でみるみるレベルアップした。

「I have a dream today.」

「I have a dream that one day every valley shall be exalted, and every hill and mountain shall be made low, the rough places will be made plain, and the crooked places will be made straight; "and the glory of the Lord shall be revealed and all flesh shall see it together.”」

さて、これは1963年8月23日のマーチン・ルーサー・キング牧師の演説の引用であり、僕の会話内容とはなんら関係がないことをここに明記する。神のご加護があらんことを。

さてさてケープタウンでの安らかなひとときを終え、僕らは南アフリカ航空の小さな小さな機体に乗り込んだ。

優雅なシンガポール航空とはうって変わって、座席は一切身動きできないほど狭い。
まるで小学校の掃除用ロッカーに閉じ込められたのではないかと思われるほど、、、ではないがもうほんと狭かった。

どんなにお金持ちであろうと、この狭さに耐えなくてはウォルビスベイには辿りつけない。
どんなに偉くても、250kmを自分の足で走らなくてはサハラレースの完走メダルを手にできないのと同じように。

3時間後、僕らはナミビア、ウォルビスベイ空港へ到着した。

そこは砂漠のど真ん中であった。

これは決して比喩ではない。

ウォルビスベイ空港は驚くべきことに、文字通り、四方が果てしない砂漠。
完全なる「砂漠のど真ん中」に存在している空港なのだ。

「うぉーっ!すげーーー!!こんな空港がマジでこの世にあるんですねーーー!!」

僕はミキさんとはしゃいだ。すでに砂漠気分MAXである。

その後のスワコプムントまでの車移動中も同じ景色は続いた。

砂漠レースのスタートまでにはまだ2日あるが、すでにテンションはアゲアゲだ。

僕らはその後タクシー強盗に会い、金目のものを洗いざらいかすめ取られ、もちろんパスポートも紛失、テンションMAXから奈落の底に突き落とされるハメに、、、

はならなかった。無事、集合場所のホテルへとたどり着いた。

僕ら以外の参加者が、文字通り奈落の底に突き落とされる運命にあることなどつゆ知らず、、、


砂漠の教訓その5

"私には夢がある、いつの日にか、すべての谷は隆起し、丘や山は低地となる。荒地は平らになり、歪んだ地もまっすぐになる日が来ると。「そして神の栄光が現れ、すべての人々が共にその栄光を見るだろう。」"
〈イザヤ書40:4、5〉


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