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ボクには、もう、どんなことでも起きる。

ゴルフの予約を入れると、必ず雨。パーティの準備をすれば、階上の住人から苦情を言われる。風邪をひいたり、電車に乗り遅れるのは、まだマシな方さ。
そんなダメダメなボクが、女性に惚れた。人生で初めての恋だった。
取らぬ狸の皮算用ばかりを、夢見てしまった。
手は尽くしたけれど、返事は「さようなら」だった。
ボクには、もう、どんなことでも起きる。

こんな主人公を描く歌「エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー」を歌うのは、ピアノ弾き語りのジャズ歌手マット・デニス。マット自身がメロディを書き、トーマス・アデアが詩を書いた。

マットがピアニスト兼編曲者としてトミー・ドーシーのオーケストラに在籍していた1941年に発表した作品で、この時期に楽団の専属歌手だったフランク・シナトラが始唱した。

このシナトラのヴォーカル、気弱そうなキャラの味は出ているものの、ちょっと堂々と過ぎるのが残念だ。

もう少しダメダメ君が歌ってくれる方が、しっくりくるのになあと思っていたら、チェット・ベイカーのヴァーカルがピッタリだった。

マット・デニスの作品は、代表作の「コートにすみれを」にしても、「ザ・ナイト・コールド・イッツ・ア・デイ」にしても、ちょっと幸せだったり、ちょっと寂しげだったりする男女が主人公だ。それぞれ一様に、都会に暮らす日々を過ごしている。小粋な短編小説を読んだ時のような、ふとした後味をもたらす歌だ。

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