小角コーポレーション 32

32
 みちるが克哉と飲みに出たスペインバルの隣の席に、ラテンムーンを唄いそうなお姉さんが友達とサングリアを飲みながら、最近結婚式が続いていると言って少し艶やかに笑っていた。
 みちるは聞くとはなしに聞いて内容はスルーしていた。
 小一時間お姉さんたちは、女子会を催し、結局こども出来たら男は用済みよと言いながら去って行った。
 かわいい佇まいを持っておれば、どんなに憎たらしいことや悪魔なことを言ったりやったりしても天使のような猛獣なのでそのかわいい佇まいで全部許してしまう。
 その辺が中途半端であると実は婚活という迷宮をさ迷い歩くので、友達の結婚式に出るばっかりとなる。
 逆にそのかわいい佇まいというものがあれば、自然とその娘にはパートナーが宅急便で配達されてくる。そういうパートナーはたとえ自分がATMになろうともそういうことに文句一つ言わず黙々と食べ物とお金を運んできて、せっせとその娘の世話を焼き、ともにいる喜びを分かち合い、ともに生きて行く。
 克哉はみちるをそっと見ると、サングリアを飲んでいた。
「つまりはさあ、かわいいってえのは最強なのよ」
 みちるがそう言って笑顔になったので克哉は酔いが少しまわって、かわいい笑顔やなあと思っていた。