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STAGE 2 心の中で準備ができると、出会うべき人があらわれる


◆最強のガイド、倉岡さんとの出会い

 ゴビ砂漠マラソンが終わった時点で、改めて「エベレスト登頂」という目標が僕のもとに降りてきました。ただ、実際にどうやって行ったらいいか、まったくわかっていなかった。そこでゴビ砂漠マラソンの運営スタッフの方に相談したら、「高所登山ならミウラ・ドルフィンズ(※)さんのトレーニングセンターに行けばいいんじゃない?」とアドバイスを受けました。
(※ミウラ・ドルフィンズ……プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さん・三浦豪太さん親子が運営するスポーツトレーニングスタジオ)
 ちなみにアドバイスしていただいたのは、フジテレビ「なるほど! ザ・ワールド」のディレクターさん。取材で秘境や高地に行く際、ミウラ・ドルフィンズさんの高地トレーニングを受けていたようです。
 さっそく、アドバイスどおりにミウラ・ドルフィンズさんへ電話をしてみました。「エベレストに行きたいんです!」と。するとたまたま「ippo塾」という登山スクールが開催されることになっており、まずはそのスクールに参加してみることにしました。

 僕が登山スクールに申し込んだ年は2014年で、三浦雄一郎さんが80歳(世界最高齢)でエベレストへ登頂されたのが2013年。いわば「三浦さん=エベレスト」であり、ミウラ・ドルフィンズさんにはエベレストに行きたい連中がゴロゴロいるに違いない、と勝手に思い込んでいました。しかし実際は違いました。あくまで「これから登山を始めましょう!」という入門の講座だったのです。
 
登山の経験がなかったので、もちろん入門講座で合っている。しかし、本当にやりたいのは「山登り」ではなくて、あくまでエベレストだったんです。そこで僕は、最初から本気で「エベレストへ行く!」と言いまくるのですが、登山経験のない人間が「エベレストへ行きたい!」と言ったところで、当然ながら誰にも相手にされません。また、僕以外にエベレスト目指している人にも出会えませんでした。

 ミウラ・ドルフィンズさんのスクールに参加しながらも、「あ〜、エベレストってどうすれば行けるんだろう?」と悶々とした日々を過ごしていました。そんな中、最後のプログラムで三浦豪太さんと富士山に登る機会があり、お話することができたのです。エベレスト登頂経験者である豪太さんと一緒になれるこの機を逃すまいと、豪太さんに「僕、本気でエベレストに行きたいんです!!」と話しました。すると豪太さんは「あ、そうなの? じゃあ……」と言いながら電話をし始めました。「あっ、倉ちゃん? いまエベレストに行きたいっていう人がいるから、代わるね」と軽い感じで、すぐその場で繋いでくれたのです。その方こそ、後に僕のセブンサミット登頂すべてを指導していただくことになる倉岡さん。期せずして、最強の山岳ガイドに出会うことができたのです。

 倉岡さんに出会ったおかげで、すべてが一気に進みました。まず始めに2回ほど日本の山に連れて行ってもらい、簡単にテントの張り方等を教わった後、一気にヨーロッパ最高峰のエルブルース(標高5,642m)へ、という流れになるわけです。


◆20kgの荷物と5kgの重りでトレーニング

倉岡さんと出会った時点では、まだ初心者レベル。しっかりした雪山の経験も皆無で、週末に山登りをするといった習慣もまったくありませんでした。
 普通の登山トレーニングだと、まずは日本の山へ登ります。でも僕の場合は子どもがいたし時間もないので山には行かず、実践したトレーニングは1つだけ。80歳でエベレストを登頂された三浦雄一郎さんの本に書いてあったトレーニング方法を、そのまま実践したのです。
 具体的には、どんな時でも荷物を20kg背負いつつ、両足にも5kgずつ重りをつけて歩くという内容。もちろん、最初からその重さでやるとすぐに足を壊してしまうので、最初は0.5kgから始めて1kg、2kg……と徐々に増やしていきます。最初は焦りすぎて、膝を壊しかけてしまいました。片足5kgの重りに耐えられるまで、2年ぐらいかかったでしょうか。また荷物も5kg、10kg……と段階的に増やしていき、こちらも2年ほどで20kgまで背負えるようになりました。

 三浦雄一郎さんの推奨するトレーニングは、1日中つねに重りを背負うという内容。しかし僕はすぐ体を壊して挫折してしまったため、トレーニングは夜だけにして、自宅マンションの非常階段(30階)を往復することにしました。毎晩、足に重りをつけ荷物を背負いながら、ひたすら階段を往復。
最初はエレベーターで降りて、上りだけを訓練すればいいと思っていたんですが、僕は山登りを理解していませんでした。というのも、上りと下りは使う筋肉が違うのです。両方の筋肉を発達させる必要があるということを知り、上りと下りのトレーニングを毎日必ず行うことにしました。

 本当は少なくとも1日1時間ぐらい、2~3往復したほうがよかったとは思うのですが、非常階段の上り下りはすごく退屈だったので、結局は30階を1日1往復程度。その代わり、途中から重りとともに「低酸素マスク」という、呼吸が苦しくなるマスクをしていました。本当の意味での低酸素にはならないので、高所登山に役に立つかは微妙ですが、かなりキツい。三浦さんのトレーニング方法ではありませんが、しっかり呼吸ができるように負荷をかけるという意味で、低酸素マスクはオススメです。

 階段以外のトレーニングとしては、外出するときに必ず足に重りをつけ、家族と一緒のときは子ども2人を肩車するなど、できるだけ負荷をかけて歩いていました。海外で仕事をしていたときも、必ず重りをつけて歩いていましたね。

  余談ですが、足に重りに巻いていると出国の際、空港のセキュリティチェックに毎回ひっかかります。手荷物の重量制限7kgに対し、自分の足には10kgの重りがついているので、そもそも重量でひっかかってしまう。でもセキュリティがスポーツや登山をやっている方だと、意図をすぐに理解して、見逃してくれます。(笑)

<動画で確認! 20キロトレーニング>
https://youtu.be/TJtiJ0-oOMA


いかがでしたでしょうか。実際に7大陸最高峰に挑戦するまでの STAGE 2 までを公開させていただきました。実際の本編の続きが読んでみたいという方は、アマゾンにて、全編を1,105円にて販売しておりますので(登山素人からエベレスト登頂 & 7大陸最高峰登頂するまでが1105日だったので)よろしければご覧ください。自分で言うのもなんですが、素人からエベレストを目指すには、間違いなく必読書になっていると思います(笑)


『素人からの挑戦』全編 Amazon kindle
完全に素人から、エベレスト含む7大陸8最高峰までの1,105日。どういう道のりで達成してきたのか、どんな出会いがあったのか、そして「素人からの挑戦」の過程での新たなチャレンジにより生まれる葛藤、もがきについて書いています。


素人からの挑戦 <目次>
STAGE 0
『はじめまして。2019年エベレスト登頂しました(未来系)』
(2014年4月14日のブログより)

はじめに

STAGE 1 エベレストチャレンジまでの道のり
 ◆部活嫌いで歩くのも嫌い、そんな自分がエベレストに挑戦したワケ
 ◆アイアンマンレースに出場できない?
 ◆「自分を追い込む」のが楽しい
 ◆エベレストに対する気持ちを再確認
 
STAGE 2 心の中で準備ができると、出会うべき人があらわれる
 ◆最強のガイド、倉岡さんとの出会い
 ◆20kgの荷物と5kgの重りでトレーニング

STAGE 3 エベレスト制覇の準備と、セブンサミット攻略
 ◆打ちのめされたエルブルース 5,642m
 ◆低酸素トレーニングで何度も失神
 ◆7,000mを無酸素で登れるかどうか、が境界線
 ◆高所登山で必要なもう一つの要素
 ◆高所では自分の状態を把握できなくなる
 ◆山専用のコックさんがいる
 ◆1日5リットルの水を飲む
 ◆最適な「酸素の吸い方」を編み出した
 ◆本当は2度泣いたチョーオユー(コラム)(チョーオユーを登頂した数日後の日記より)
 ◆エベレストからセブンサミットへ
 ◆7割が下山で亡くなる
 ◆セブンサミット挑戦中、常に僕の前にあったもの(コラム)
 ◆お金をケチると、死ぬ確率も高くなる
 ◆山は本能を研ぎ澄ます
 
STAGE FINAL 突き抜けた本物に出会う旅
 ◆エベレストで「本物」に出会った
 ◆愛すべき“山野郎”たち
 ◆すばらしい「変人」に出会いたい
 ◆宇宙に行くためのステップ
 ◆「本物」に出会う旅
 ◆本物には「バカ」や「アホ」が多い?
 
NEXT STAGE 「宇宙へ行きます!」
 ◆セブンサミットを達成しても、ヒーローなんかじゃないんだぜ
 ◆はじめに2014年のブログを載せた意味

◆おわりに、そして次のチャレンジのはじめに


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完全に素人から、エベレスト含む7大陸8最高峰までの1,105日。どういう道のりで達成してきたのか、どんな出会いがあったのか、そして「素人からの挑戦」の過程での新たなチャレンジにより生まれる葛藤、もがきについて書いています。



<著者プロフィール>
星野 誠(ほしの まこと)
1978年、神奈川県生まれ。2001年、中古品売買の会社で新規事業立ち上げに携わった後、自分らしい生き方を実践するために独立。さまざまな事業を経て2005年、子どもの頃から夢だった宇宙旅行の会社「銀河ヒッチハイカーズ」を設立するもあえなく撤退。2008年、前職の経験を活かしブランド中古メガネ店「株式会社 誠」を設立。2017年、夢を実現するため宇宙旅行社「銀河ヒッチハイカーズ」を復活させる。2010年からトライアスロンをスタート。2013年にはゴビ砂漠250kmマラソンに出場し完走。素人からエベレスト登頂を目指し、2017年5月にはエベレスト登頂に成功。2017年10月、登山開始から3年でセブンサミット(七大陸最高峰)登頂。

<公式サイト・著作>
『星野誠 HP』
7大陸最高峰登頂後から、ブログをコツコツ毎日UP中

『ちょっとエベレストに行ってきます!』
エベレストへ行く! と決めた日からセブンサミット登頂まで、1,105日間更新していたYouTubeです。目指し始めた日から、怠けている日、トレーニング、セブンサミット登頂まで、全日すべてをUPしています。

『誠式 海外突撃砲(法)』
海外で仕事をしてみたい、海外ビジネスをしてみたいと思っている方に向けて書いてみました。特にはじめの一歩を踏み出すためにだけに特化して書いています。kindle unlimitedでお手軽に読めます。

素人からの挑戦 星野誠
2018年2月26日 デジタル版書初版発行
発行者 星野誠 & 鈴木基眞
発行元 銀河ヒッチハイカーズ 〒160-0023 東京都新宿区西新宿7−11−15
電話 03−6908−8553 ファックス 03−6908−8428
(C)2018 Makoto Hoshino

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