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アラフィフのおじさんたちが「青春」してしまった結果、放課後にアイドルのライブビデオを撮ってしまったハナシ

地下アイドルの世界はとても、おもしろい。その世界にハマって2年半が経過した僕は、その世界の「常識」にすっかりハマっていて、冷静にみることができないかもしれないのですが、今回僕らが撮影・編集した、あるアイドルグループのライブビデオを通して、いまは地下アイドルに縁はないけれど、きっかけさえあればハマるであろう「未来の地下アイドルヲタク」のあなたに、なぜおじさんたちがアイドルの動画を撮ることにいたったのか? というお話しをしてみたい。

そのまえに、「地下アイドル」という言葉について説明しておく必要がある気がしていますが、どうでしょうか? 実際のところ、地下アイドルの定義が明確にあるわけではないのですが、地上波TVなどの出演はあっても限定的で、毎週のようにやっているライブでの活動を中心としているアイドルのことと考えてよいと思います。

「地下」という言葉のネガティブなイメージを嫌って「ライブアイドル」などと呼ばれることもありますが、ライブ現場に来ているヲタクたちは普段から「地下」と呼んでいますし、それと対比してメジャーなアイドルシーンを「地上」などということもあるので、本noteでは「地下アイドル」の呼称を使おうと思います。

「インディーズアイドル」という呼称もあって、まさに「インディー」といえるほどに、流行などにとらわれない、独特の表現をしているアイドルグループも最近は多く、それはそれでしっくりくる呼び方なのですが、メジャーレーベルに所属しているグループもいたりしますし、表現のスタイルがインディー志向でないグループもいるので、必ずしも的確でないかもしれません。

とにもかくにも、いまの日本のアイドルシーン、いや、もしかしたらミュージックシーンにおいて無視できない存在なのが「地下アイドル」といっていいと思いますし、アンダーグラウンドシーンとしての、とんがったところこそが、地下アイドルの面白さとも言えます。

「一緒に青春しませんか?」

いささか前置きが長くなってしまいましたが、そう、今回、ライブビデオを撮影したのは、僕の周辺の地下アイドルヲタクのなかで、一定の人気を保っている「tipToe.(ティップトウ)」というグループのステージです。

tipToe.は「一緒に青春しませんか?」というコンセプトを掲げていて、エモいギターロックサウンドに、等身大のリアルな「青春」をうたった詞がのせられ、歌のなかの「物語」と同様にメンバーの6人が日々成長していく姿に、多くのヲタクが「青春」してしまっているのです。

音源やMVなどは、その「物語」の世界をすばらしく表現しているのはもちろん、ライブも魅力的なのですが、出演するイベントがライブ配信されたことはあっても、tipToe.としてのライブ映像作品は限られていて、ライブの魅力を知るには、「現場」に足を運ぶほかないという状況でした。

そんななかで、ファンによるライブビデオ制作のはじまりとなったのは、今回撮影することとなった2019年8月27日に下北沢GARDENで行われた「ヤなことそっとミュート(ヤナミュー)」とのツーマンイベント「YSMTIP」の前日にツイートされた以下の告知でした。

tipToe.は普段はファンによる撮影は一切禁止。過去に動画限定で撮影可能なことも数回あったのですが、ひさしびりの動画撮影可能というアナウンスに、急遽Twitterでヲタク仲間に呼びかけて、皆で撮影&編集をすることになったわけです。

実は2019年5月に開催された「ギュウ農フェス 春のSP2019」のtipToe.のステージも撮影可能で、その日も撮影し、いろんな仲間に声をかけて、素材も集めつつはあったのですが、僕自身のカメラの“撮れ高”が決して高くなかったことや、皆忙しくて素材の集まりもよくなかったので、そちらは放置したままになっていました(こちらは先日、3カメ分を編集して、tipToe.のライブあとのヲタク飲み会で上映しました。今後素材を増やして公開予定です)。

そのリベンジというのもありますが、tipToe.の現体制での活動が2020年1月までということもあって、映像制作や映像配信に関わっている僕としては、この時期の彼女たちのステージをどうしても残しておきたかったのです。

なにより、tipToe.のことに興味があったり、音源だけは聴いたことがあっても、ライブに行ったことがないファンに「残るライブに行きたい!」と思ってもらうきっかけになればという気持ちもありました。おそらく、今回参加してくれたヲタク仲間もみな同じ思いだったと感じています。

とはいえ、アナウンスが直前だったために事前の打ち合わせなどができるわけもなく、前日のやりとりとしては、オジソン48 a.k.a. カズキさんとの以下のやりとりと、KSさんとのDMでのやりとりだけでした。

また、事前には撮影可能とわかっていたわけじゃないので、普通のテンションでチケット買っていたので、AKR648さんが1桁の整理番号だった以外は、かならずしもいい整理番号ではなく、撮影場所の確保が一番課題でした。助けられたのは、平日の下北沢で18:00開場と早めだったことで、開場時間に来られない人が多く、僕らの番号でもそこそこいい場所を確保できたことでした。

また、仲間のヲタクが買っていた良番のチケットを融通してもらったり、最前列を確保できたヲタク仲間に小型のカメラを託して、最前列の柵に固定しておいてもらうことができたのにも助けられました。

最終的には7台のカメラの映像を編集

カメラは有人のものが以下の5台、

オジソン48 a.k.a. カズキさん キヤノンXA25+ソニーECM-MS2、フロア前方上手
AKR648さん ソニーHDR-CX720V フロア最前列ほぼ中央
KSさん ソニーα7III フロア後方下手寄り
べあべあさん デジタル一眼レフ フロア後方上手寄り(リマスター版より参加、tipToe.のみ)
Makoto Kaga キヤノンXA35、フロア後方上手寄り

上記に加えて、フロア最前部の柵にGoProとキヤノンiVIS mini Xの2台をJOBYゴリラポッドなどを使い固定して撮影しました。

撮影に参加したヲタクが僕含めて、ほぼヤナミューのヲタクでもあったので、tipToe.のステージだけではなく、ヤナミューのステージも撮影・編集しました。

上記のカメラ以外に、オーディオレコーダとしてZOOM F1とマイクXYH-6を用意していたのですが、仕事での撮影とちがってリハでのチェックができないのと、カメラ上に載せていたため、ライブ中にレベルメータを確認できず、最初の登場だったtipToe.のほうは音量をしぼりすぎて録音ができていませんでした。

そんなわけで、ヤナミューのステージはZOOM F1の音を使えたものの、tipToe.のステージはカメラのマイクだけでやりきらなくてはいけなかったのが厳しかったですが、最終的に公開した「リマスター版」では、そこそこいい音に調整できたのではないかと思います。

編集はFinal Cut Pro Xを使用し、音声のマスタリングにはAdobe Audition CCといくつかのサードパーティのプラグインを使用しました。音に関しては本業ではない僕にとって、一番助けられているのがSoundtheoryのGullfossです。この辺の機材・システムの話は改めてできればと思っています。

約40日間で2,000回以上再生

撮影後の映像データのやりとりは、Twitterとギガファイル便やGoogle Driveなどで行ったのですが、いかんせん動画は容量が大きくて、アップロードにも時間がかかるため、そう気軽にやりとりできるわけではありません。忙しいなかで、即送るのは簡単ではありません。にもかかわらず、AKR648さんが翌日朝に撮影データを送ってくれたので、その日の深夜(8月28日25時ごろ)に、tipToe.がカバーしたヤナミューの楽曲「Lily」だけを先行公開しました。

その後公開した全編映像は40日間で1,870回再生、10月12日にべあべあさんさんの動画を加えて再編集し、音をリマスタリングした「リマスター版」を公開、そちらは4日間で134回再生となりました。

全編映像(初版)

リマスター版

Twitterなどでの反応や、現場で会ういろんなヲタク仲間に「映像がよかった」と声をかけられることが多かったのもとてもうれしいことでしたが、tipToe.と近しい他のアイドルグループでtipToe.好きのメンバーや運営スタッフさんからも好評の声をきけたのはとてもうれしかったです。特に、tipToe.メンバーからも感謝されたのは、まさに“推しごと”として、やった甲斐があったというものです。

ヤなことそっとミュート(ヤナミュー)のステージも公開

僕自身の地下アイドルヲタクとしての日々のごく初期に「Maison book girl(ブクガ)」とともにハマったのが、YSMTIPでのtipToe.の対バン相手となった「ヤなことそっとミュート(ヤナミュー)」です。

途中の転換の際に固定カメラの録画開始がうまくいってなかったりなどのいろいろな事情で、ヤナミューのステージの映像は、オジソン48 a.k.a. カズキさん、AKR648さんと僕の3カメでやりきらなければならない場面が多かったのですが、けっこういい仕上がりになったのではないかと思っています。

ヤナミューは多くのライブが動画・静止画ともに撮影可能なため、なかなかここまで気合を入れて動画撮影をすることは少ないうえ、この8月上旬に3人体制になってからのヤナミューのライブ映像は少なく、とてもいい機会になったと思っています。

10月5日の「ギュウ農フェス 秋のSP」も撮影&編集

こちらの話はまた改めて書きたいとは思っていますが、10月のギュウ農フェスは、メインステージのトリがtipToe.という、主催のギュウゾウさんの粋な計らいもあったうえに撮影可能だったということで、ほぼ同じ布陣で撮影に臨みました(べあべあさんは都合がつかず、残念ながら不参加)。

加えて、頭にGoProを固定して撮影していた、tipToe.ヲタク仲間の(群)どるじ@フワリコロリツミリンコさんからも映像をいただき、さらに、とてもいい撮影映像をYouTubeに公開されていたtakesixさんにもお声かけして、映像を提供いただいて完成させました。

まだ見ぬファンにアイドルが出会うためには?

今回の「ファン動画」の最初のきっかけとなった、YSMTIPは、日常的に撮影可能なヤナミューと、普段一切撮影NGのtipToe.の対バンだったわけですが、両者の違いを中心に、ファンによる撮影の位置付けを簡単にまとめて終わりにしたいと思います(改めてしっかり考えたいテーマですが)。

ヤナミューは普段撮影可能なため、主にスチール写真が多くSNS上で流通していて、それらの品質は非常に高いものがあります。ファンによる動画も多くアップロードされていて、僕自身も間宮トロさんと撮影・編集した動画をアップロードしたこともあります。また、公式によるDVD、Blu-rayなども多くリリースされていて、YouTubeにも公式ライブ映像が多く上がっています。そのため、ファンによる動画のありがたさというのは相対的に低いのではないかと思います。

一方のtipToe.は普段撮影禁止のため、公式のアーティスト写真、Twitterに投稿されるチェキやメンバーによる自撮り、しっかりtipToe.の「物語」の世界を描いたMVなどに限定されていて、ライブ映像への接点は、プロデューサーの本間さんがiPhoneで撮影してTwitterにアップするライブ映像や、出演イベントがライブ配信されているケース、限定販売された「・・・・・・・・・(ドッツトーキョー)」とコラボしたBlu-ray「Tokyo Sentimental」などに限られています。

ライブ映像がないとなにかのきっかけがあって生のステージを見ないと「彼女たちのライブの魅力にハマる」ことが難しく、僕自身も周りのヲタクからきいてtipToe.の存在を知り音源をヘビロテしていたものの、半年近くライブに足を運ぶことはありませんでした。

僕のケースでは、たまたま他の推しているグループが出たイベントでtipToe.をはじめてみて、ステージのエモさと、MCでの「一緒に青春しませんか?」に胸を撃ち抜かれ、「青春」がはじまってしまったというわけです。気づけば「仕事ですか?」というくらいに気合いを入れてビデオを撮影・編集してしまうくらいに。

もちろん、動画があればよいというものではなく、動画を公開したり、ライブ配信をしたところで、それを見てもらえなければ、認知のきっかけにすらなりません。一方で、そうした動画や配信の品質もまた重要で、目の肥えた視聴者にとって、低品質な映像・編集・音ではせっかく興味を持ってもらえても、よほど刺さるものがなければ見続けてくれないというのも現実です。

tipToe.やヤナミュー含め、個人的に推している多くの地下アイドルは、音楽的にもステージ演出的にも質がよくて、メンバーの魅力も高いグループが多く、まだ出会えていない多くの潜在的ファンと出会うことができたら、もっと大きな次のステージにいけるのではないか? と思っているのですが、そこはなかなか難しいと感じています。

そもそも「地下アイドル」「アイドル」というスタイルにとらわれて敬遠されてしまったり、ライブハウスでやっているライブに行くことのハードルも高いのが現実です。Maison book girlも徳間ジャパン時代には「ニューエイジポップユニット」を称していましたが、アイドルというラベル付けによって敬遠されることはまだまだあると感じています。そうしたことは、新しくデビューしたアイドルのライブにいっても、ほかの「現場」の知り合いのヲタクが一定数いるという状況にも現れているように思います。「アイドル現場」というハードルの高さがあって、あたらしい「アイドルファン」を引き込めていないのではないかというのが実感です。

また、地下アイドルの世界では、「特典会」と称して、メンバーとチェキを撮る時間なども大きな存在ですが、そこもなかなか入りにくいところです。個人的には、地下アイドルにハマった直後に読んだ、いまやヲタク仲間となったかいじんちゃんが書いた以下のnoteは超絶参考になり、また、背中を押されました。

今回は、「放課後」に趣味としてヲタクが撮影した映像ですが、今回のチームではオジソン48 a.k.a. カズキさんも私も、仕事として映像制作やライブ配信に関わっていて、地下アイドルやメジャーのアーティストの案件に関わることもあります。

そうした「お仕事」にせよ、ヲタクとしての「推しごと」にせよ、個人的にはどうやったら「まだ見ぬファンにアイドルが出会えるのか?」は重要なテーマだと考えています。

地上波TVほどの規模感でも予算感でもないが、オルタナティブでその魅力が刺さる人はぜったいに一定数いるはずの地下アイドルにとって、どうプロモーションしてくのか? そこに映像がどう役にたてるのかは、これからも考え、実践していければと思っています。

追記:ダイジェスト版もつくってみた

長いビデオってみるのしんどいよね。ということで、ライトに興味もった人向けにダイジェスト版も作ってみました。Twitterで投稿可能な2分20秒におさめたものです。



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