MAKOTO Murakami

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MAKOTO Murakami

私のアップしたテキスト、写真、イラストその他一切の著作物の著作権は私に属します。無断転載、無断転用を禁じます。

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「共同親権」について考える(1)

1.はじめに  EUの子の連れ去り問題についての日本に対する決議や共同親権に対する集団提訴などの社会的な動きに合わせて、マスコミが共同親権の問題を取り上げることも増えてきた。  私は、日本にも一日も早く共同親権を導入されるべきだと考えるものであるが、共同親権をめぐっては賛成派、反対派からさまざまな意見が出されているだけでなく、賛成派の中にもいろいろな考え方があるため、自分の思考の到達点を明らかにするために、この論考を公開する。 2.「親権」は基本的人権なのか  「親権」を憲

    • 民法改正法案を読み解く①

      はじめに  現在、会期中の第213回通常国会で離婚後の共同親権などを含む民法改正案が提出されました。今回の法改正がなされれば、戦後すぐに改正された民法の『離婚後の絶対的単独親権制度』が改められ、ようやく日本にも『離婚後の共同親権』が認められるようになります。  ただ、法制審議会の要綱案や報道などから推測した内容や改正法案の条文の一部だけを切り取って、法案への誤解や法案に対する不安が生じているように見えます。本記事は、そうした誤解や不安を取り除き、さらに国会審議を通じてさらに

      • 自由法曹団の共同親権反対決議を斬る②

        2 予想される紛争の増加  同項の第一文、 「要綱によれば、離婚時父母の協議により共同親権とできる(以下「合意型共同親権」という。)だけでなく、父母の協議がなくても、裁判所が共同親権を命じることができる(以下「非合意型共同親権」という。)。」 これはそのとおり。(以下、本稿でも同じ略語を使用します。)  同項の第二文、 「父母に婚姻関係も事実婚関係もない場合であっても、父が子を認知すれば(出生後の認知に母の同意は不要である)、共同親権の申立が可能となり、裁判所が共同親権を命

        • 自由法曹団の共同親権反対決議を斬る①

          はじめに  自由法曹団は、約2000人の弁護士で組織される弁護士の任意団体であり、全国各地に41の支部を有します。おそらく、弁護士共同組合を除けば国内最大級の弁護士団体でしょう。  かつては、公害問題や労働争議、冤罪事件など、多くの裁判等において人権擁護を旗印にその存在感をアピールし、弁護士人口の1割程度を組織していたようですが、最近は5%程度にまで下降しているようです。とは言え、弁護士会の要職などを団員弁護士が務めることも多く、強制加入団体である日本弁護士会連合会や各都道

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        「共同親権」について考える(1)

          家族法制の見直しに関する中間試案についての意見書

          はじめに わが国の家族法制は、欧米の先進国に比べると30年以上は遅れている。戦後、日本国憲法の規定に合わせて、民法の家族法制は大改正が行われた。この時点では、わが国の家族法制は欧米先進国とほぼ同等の水準にあったと考えられる。しかし、欧米では1980年ころに女性の社会進出が進んだことによる、現実の家族と家族法制の乖離を修正する形で法改正が行われてきたのに対して、わが国は必要な手当てをなさず、その後の民法改正でも弥縫的な部分修正にとどまり、抜本的な改正がなされなかった。その結果

          家族法制の見直しに関する中間試案についての意見書

          共同親権のデメリットは克服できる

          1.報道が伝えている共同親権のデメリット 日本では、未成年の子に対する親権は、婚姻中の夫婦のみが共同で行使するものとされ、離婚後や事実婚などの婚姻外の父母には共同親権が認められていません。  しかし、日本が子どもの権利条約を批准し、その中に定められている親子不分離の原則に婚姻外の単独親権が反しているのではないかという国連からの勧告や、男性も育児に積極的に取り組むようになってきたことなどの背景から、日本でも離婚後の共同親権(注1)を求める声が強くなってきました。そして、8月末ま

          共同親権のデメリットは克服できる

          共同親権反対論は論理的に破綻する

          1.「今の『共同親権』になぜ反対するか?」  という表題のnoteが公開されています。  一応、共同親権に反対する弁護士(以下、「反対派弁護士」といいます)が書いたものらしいので、この記事で書かれている論拠が、法律的あるいは現在の家事司法の実態から見て正しいのかどうかを検証していきます。(「らしい」と言うのは筆者の弁護士が匿名であるため。それと、文章が稚拙で非論理的な思考や決めつけが酷いため、実在の弁護士かどうか、疑わしいということもあります。) 2.共同で子育てをできな

          共同親権反対論は論理的に破綻する

          離婚後の共同親権が「百害あって一利なし」? ― バカバカしい議論だけど、反論するよ

          1. フライデーの記事 22.6.24付 まずは、この記事をお読みください。橋本智子弁護士が「離婚後の共同親権」に反対する理由を、それらしい言葉で書き連ねています。一見、もっともらしく見えてしまうのですが、きちんと考えるとその全てが理由になっていません。  それでは、一つずつ、その理由を潰していきましょう。 2. 「今の法律でできます」というウソ橋本弁護士は  「『共同親権』を導入すべきという主張は要するに、夫婦が別れても、子どもの父母として子育ては共同でしていくことが子ど

          離婚後の共同親権が「百害あって一利なし」? ― バカバカしい議論だけど、反論するよ

          ウソとゴマカシだらけの共同親権反対論     ~その2~

          「DV(Domestic Violence)」のウソ・ゴマカシ  まず、《 DV(家庭内暴力)は絶対に許されないものであるし、DVに苦しむ被害者には適切な救済が用意されるべきことは当然である》という点は、共同親権を導入すべきと主張する人たちにとっても共通の理解と言って差し支えないでしょう。  それなら、DV被害者を守るために共同親権は導入すべきではないのでしょうか?  いいえ、違います。なぜなら、DV(児童虐待も含む)のない夫婦でも離婚することは普通にあることだからです。

          ウソとゴマカシだらけの共同親権反対論     ~その2~

          ウソとゴマカシだらけの共同親権反対論

           ~あなたも「加害者」の仲間に入りますか?~はじめに  いま、法制審議会やマスコミなどで日本でも「離婚後の共同親権」(以下、単に「共同親権」と呼びます)を導入すべきかという議論がなされています。  わが国の民法は未成年の子のある夫婦の離婚に際しては父母の一方を親権者として定めなければならないと定めています(819条)。しかし、欧米をはじめ、世界のほとんどの国では離婚後単独親権制度を経て、共同親権制度への転換が行われてきました。世界中の諸国でこうした流れができてきたのは、決し

          ウソとゴマカシだらけの共同親権反対論

          「離婚後の共同親権とは何か」を読む(中止のお知らせ)

           前回の記事を書いてから1年以上も経過してしまいました。  実は、記事を書くにあたって、「離婚後の共同親権とは何か」を毎回、図書館で借りて読みながら記事を書いていたのですが、なぜか、図書館の蔵書から消えてしまい、借りることができなくなってしまったのです。  紛失なのか、廃棄なのか、それ以外の事情なのかは分かりませんが、元本がなくては記事を書くこともできません。古本で手に入れることも考えたのですが、古本でも結構高いのです(Amazonで2,600円以上)。それだけのお金とさらに

          「離婚後の共同親権とは何か」を読む(中止のお知らせ)

          「連れ去り」被害者にならないために

          はじめに 元プロ棋士の橋本崇載八段が「連れ去り」の被害に遭ったことをYouTubeで告発してから、「連れ去り」の問題に世間の関心が一挙に高まったように思う。  私は、『子の最善の利益』という観点から、『離婚後の共同親権』と『未成年の子のある夫婦の別居に法的ルールを』ということをTwitterでたびたび訴えてきた。家族法制の全般的な見直し作業も進められ、今後は『共同親権』導入の方向に進んでいくものと確信しているが、今年は総選挙もあり、また、コロナ問題と、おそらくそれによってもた

          「連れ去り」被害者にならないために

          「離婚後の共同親権とは何か」を読む(2)

          「第2章 離婚後共同親権と憲法       ―子どもの権利の観点から 木村草太」 木村は、「はじめに」の最後の一文を「本章では、憲法学の観点から、この問題を検討してみたい。」と述べている。  しかし、木村の論考は「憲法学の観点」は言うに及ばず、『法学』のレベルにも届いていない、お粗末極まりないものである。  以下、詳しく検討する。 (1)  「Ⅰ 共同親権の概念」  木村は、最初に共同親権の概念を検討し、諸外国の法制における「親権」の呼び名、日本法における親権の内容(監護権

          「離婚後の共同親権とは何か」を読む(2)

          「離婚後の共同親権とは何か」を読む(1)

          1.はじめに 本稿は、「離婚後の共同親権とは何か」という書籍の批判的書評である。しかしながら、単に批判的書評にとどめず、本書の内容をできるだけ正確に紹介しつつ、その論理や思考方法にどのような問題があるのかを、できるだけ分かりやすく書いたつもりである。  離婚後の共同親権導入に賛成する人も、また、反対する人にとっても、その思考の一助となれば幸いである。 (なお、本書からの引用は「」で括って表記し、要旨を私がまとめたものについては【】で括って表記した。なお、引用部以外では、敬称は

          「離婚後の共同親権とは何か」を読む(1)

          日弁連の意見書、おかしくないか?

          1.はじめに 日本弁護士連合会(以下、「日弁連」)は、2020年10月20日付の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の改正を求める意見書」(以下、「本意見書」)を発表した。  私が見る限り、本意見書に対して法律家や女性団体は極めて冷淡な反応をしている。猪野亨弁護士がブログで簡単にコメントしている程度である。  それは、本意見書は、法律家がきちんと内容を精査したものとは思えず、その内容を法律として成立させうるだけのものとして構成されていないからではないだろうか

          日弁連の意見書、おかしくないか?

          絶対的単独親権制度の深い闇

          1.猪野弁護士のブログと事件について  猪野亨弁護士は、『日本では離婚後の共同親権制度の導入は不要であるばかりか、むしろ弊害の方が大きい』という趣旨の主張を、氏のツイッターやブログで繰り返している。  私は、猪野氏が2020年6月29日付でブログに載せた記事「秋田女児殺人事件を題材に考える 離婚後の共同親権があれば子の虐待は防げるのか)」(http://inotoru.blog.fc2.com/blog-entry-4511.html)を読み、少なくとも三つの問題があるから再

          絶対的単独親権制度の深い闇