同じコーヒーを淹れ続けることは


「マスター、いつもの」

そんなシーンに憧れてはや幾年。よく行く店でも未だにメニューとにらめっこしないとオーダーが決まりません。全然こなれない。
今日は喫茶店のコーヒーの話です。


喫茶店のコーヒーの質

私はコーヒー好きで、日常的に自分で豆を挽いて淹れています。たまに焙煎もします。だから、喫茶店のコーヒーの評価は結構厳しめでした。お店なんだし、毎日大量に淹れてるんだからもっとおいしく作れるでしょ、と。

でも、最近はその見方が変わってきました。
きっかけは、半年ぶりに訪れたとある喫茶店。


「ベスト」なおいしさではない

その喫茶店の店主は、湯を注ぐ回数などの抽出のやり方を店として決めていたのです。焙煎具合やその日の環境で細かなところは調整するようですが、基本的には淹れ方を統一。一番クオリティーが安定する、「ベター」なコーヒーを淹れるためです。

これって結構驚きだったんです。
私などは、湯を落とした時の状況や、淹れているときの粉の状態などに合わせて(というタテマエで)、気分で淹れ方を変えてしまいます。少しでもおいしく淹れられるように。きっと他のコーヒー好きにもあてはまる方は多いはずです。

この喫茶店の店主も、自分用のものはそのように気分で淹れるとのこと。その方が「ベスト」なコーヒーを淹れられるから。


「ベター」なコーヒーを出す理由

ではなぜ、店ではそうしないのか。

名店としてさまざまなメディアに紹介される喫茶店で、ベストなコーヒーを目指さないというのはどうしてなのか。

淹れ方を自由に変えると、「自分にとってのベスト」は淹れられるかもしれません。でも、それは「お客さんにとってのベスト」とは限らない。お客さん、特に常連さんには、“いつもの味”を求められます。今日は味が違う、ということになると、「お客さんにとってのベスト」ではないのです。

先ほどの店主が話してくれたことです。
クオリティーを統一しやすいやり方で出した「ベター」な味を、喫茶店の“いつもの味”にする。そして、いつもその味を保つ。久しぶりに来店しても、また“いつもの味”に出会えるように。

決して高みを目指さない怠慢などではなく、求められる「ベスト」を淹れ続けるための終わりのない努力。商品としてコーヒーを扱うプロの姿勢を垣間見るとともに、翻って私たちが仕事で扱っているものが本当の意味で「ベスト」になっているのか考えさせられます。

そして、コーヒーと喫茶店がお客さんに与えるたくさんの効果に思いを馳せながらコーヒーを飲んでいると、店主が一言。


「どうです、きっと半年前と同じ味ですよ。今度は味を忘れないうちにいらしてください」


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まくらぎ

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