まくらごみ

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ちいさなコペット・びぎにんぐ(前編)

雨上がりの夜の森に、赤ん坊の泣き声が響き渡っていた。
闇が広がる木々の間を男は決死の思いで森の中を走っていた。一刻を争う事態だと思っていたからだ。湿った空気の全身に浴びて、散らばっている枝葉を乱暴に踏み荒らし、肺が体の中で激しく伸縮を繰り返している。苦しくて仕方ないが、それでも脚を進ませる。早く赤ん坊の元へ行かねばならない。雨が止んだ今、飢えた獣がきっと赤ん坊の肉を求め、泣き声に向かって走っている

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眠りの最中で

きっと永い時間が経ったに違いない。
その間ずっと私はあいつの側にいた。
あいつもずっと私の側にいた。

澄み切った空気で町が満たされている。雲一つない晴天の早朝。
優しい白の朝日を浴びた、風に少しだけ湿気を感じる小さな通りで、あちこちから朝の生活の音が立ち始める。
水の流れる音、食器の音、野菜を切る音、焼けるパンの香り、眠そうな声、階段を降りる足音。
それぞれの家庭でそれぞれの暮らしが今日も始まる

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深い底へと

閉められた窓たちがガタガタと震え、どこからか隙間風が入り込み、家の中では笛のような音が響いている。風が強く、雲の多い晴れの日である。それなりに古い家なので、若干の隙間風などは仕方がない。
昨日の疲れのせいか、体が重い。起き上がりたくない。
今日の仕事は休みだ。いつもより起床を遅くするもしないも好きにしていい。私はしばらくの間ベッドの上で風の音に耳を傾けながら、天井を眺めていた。
昨晩の出来事が夢の

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異国の景色から

ボダイがこの家に来て四日目の朝。空から落ちてくる水滴達が外の道を叩く音が窓の向こうから響いてくる。雨か。

雨の日は冷えるから、普段より一層布団が暖かく感じられて、ベッドから出たくない。しかし仕事があるからそうも思ってられない。どっちを取るかと言われたら、生活の為に後者を取るしか無い。重たい瞼を嫌々あげると、目の前にボダイが見えた。
ボダイは私の寝室に入り込んできていた。あの歪で長い巨体が私のすぐ

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月の木馬

これは昔のお話です。
ある国に玩具職人の男が居ました。
男は玩具で子供の笑顔を作る仕事に誇りを持っています。しかし、新しい玩具の木馬に、もう一工夫欲しいと考えウンウンと悩んでいました。
朝から夜まで悩みます。立派な満月の夜も、月を眺めながら悩んでおりました。
不意に、月から欠けらが数個落ちてきました。
職人の男は大変驚きました。だって月か何かが落ちてくるだなんて初めてみる光景だったからです。
考え

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