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渋いチョコレートは食べたくない!

こんにちは!ママノインターンの野澤です。今回は品質の統一が難しい、カカオ豆ならではの問題を解決するための研究についてです。

みなさん、カカオ豆はどのような形で日本に輸入されているかご存知ですか?多くは現地で収穫、発酵、乾燥までが行われます。中でも原産地で発酵工程を経ることで、様々な化学変化が起こり、チョコレートの味に大きな影響を及ぼします。発酵を終えたカカオ豆の大半は黒っぽく変化したブラウン豆ですが、発酵が不十分なパープル豆と呼ばれる豆も少量ですが存在します。豆を選別する段階で除去されますが、万一パープル豆が10%以上含まれるとチョコレートの味が著しく低下してしまいます!渋くて顔をしかめてしまうようなチョコレートは食べたくないですよね。


そこでこの研究では、その渋味の原因であるポリフェノールが含まれる量と、パープル豆の渋みを抑制する方法を検討しています。


「酵素処理によるカカオ豆収れん味の抑制」
吉山正章,伊東禧男 日本食品科学工学会誌 1996年43巻2号p.124-129
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1995/43/2/43_2_124/_article/-char/ja


実験内容


カカオ豆:ガーナ産
一個ずつ切断し、断面の色から「ブラウン豆」「パープル豆」を選別

①ポリフェノールの量を測定
②パープル豆の渋みを抑制する酵素の選択
③②で選ばれた酵素が渋みを抑制できる理由
④②の酵素でどのように処理するのが有効か



実験結果


①パープル豆はブラウン豆に比べて
全ポリフェノール 約1.5倍/ フラバノール 約3倍/ プロアントシアニジン 約2.5倍
  →パープル豆は多量のポリフェノールを含んでいる
カワラタケというキノコの※ポリフェノールオキシダーゼを加えたカカオ豆抽出溶液は、渋味がほぼ感じられなかった。
③酵素を加え、反応1時間後には
全ポリフェノール 87%/ フラバノール 64%/ プロアントシアニジン 45%
→プロアントシアニジンの減少率がもっとも高く、酵素の影響を受けやすい
  →ポリフェノールの減少に伴い、水に溶けない物質が生成され、濁った
      =ポリフェノールが不溶性物質に変換されている
④オートクレーブ(加熱圧力釜)で蒸煮した後②の酵素で処理すると
ポリフェノール78%/フラバノール45%/プロアントシアニジン38%
  →ブラウン豆をほぼ同じ値となり、渋みが大きく軽減

※ポリフェノールオキシダーゼ
酵素の一種。リンゴが切ってしばらくすると茶色に変色する現象もこの酵素によるもの。



以上より、パープル豆はブラウン豆より渋み成分を多量に含んでおり、その渋みを抑えるには、カワラタケのポリフェノールオキシダーゼが有効であること。また、その効果を十分に発揮するにはパープル豆をあらかじめ蒸煮すると良いことが分かりました。カカオの渋みを抑えるのに、キノコの中の成分を使うなんて考えられませんよね…!これなら、パープル豆で作るチョコレートも美味しく食べられそうです。カカオ豆の廃棄が少なくなる方法をもっと探りたくなりました!


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