「チョコレートの油分含量」と「おいしさ」の関係性について調べてみた。
こんにちは!
ママノインターンの野澤といいます。前の投稿に引き続き、チョコレートに関する論文を紹介させていただきます。
「おいしい」とは?
みなさんが「おいしい」と感じるチョコレートは、どのようなチョコレートでしょうか?
味や香りなどはもちろんですが、「口どけ」も重要な要因です。ぼそぼそしてなかなか溶けないチョコレートより、なめらかで口に入れた途端スっと溶けるようなチョコレートの方がおいしく感じると思います。
今回取り上げるこの研究では、口どけの良さ(油脂含量や組成)がチョコレートのおいしさにどのように影響するのかを、官能評価と物性測定によって明らかにすることを目的としています。
本日紹介する論文はこちら!
「チョコレートの油脂含量および組成とおいしさの関係」
飯田文子,千田麻美子,葛西真知子,坂ノ下典正,桜井孝治,上脇達也 日本食品科学工学会誌 Vol.54,No.1,18~25
試料
ビターチョコレート
→油脂の含まれる量がおいしさに影響することを明確にするため、
ミルク分を除外したビターを用いる
①ココアバターの量(油脂含量)を変化させた1~4
1:5%(脂肪分30%)
2:10%(脂肪分35%)
3:15%(脂肪分40%)
4:20%(脂肪分45%)
②油脂組成を変えたA~C
A:ココアバター代用脂20%(脂肪分45%)
B:ココアバター代用脂10%、シャープメルト代用脂10%(脂肪分45%)
C:シャープメルト代用脂20%(脂肪分45%)
※シャープメルト代用脂とは?→ココアバターより低温で溶ける油
実験内容
1)物性測定
固体脂含有量測定(SFI測定)
→温度をだんだんと上げ、各温度で油脂のうちどれくらいが固体として存在するか
低速圧縮破断測定
→チョコレートを破断するための応力(単位面積あたりの力)、ひずみ(元の大きさに対する変形の比)、破断エネルギー(物体が破断に要するまでのエネルギー)を測定
温度依存測定
→温度をだんだんと上げ、粘弾性(粘性:流体が内部の流れの速さの違いをならす性質、弾性:外からの力
により生じた変形が、力を除くともとに戻る性質)がどのように変化するか2)官能評価
女子大学生91名(一般消費者)、研究室訓練パネル15名(専門家)に試料のチョコレートを食べさせ、風味・テクスチャー・味などに関する17項目について評価・解析
結果
1)物性測定
①ココアバターの量(油脂含量)を変化させた試料破断測定:油脂含量が増すにつれ破断応力が増加、破断歪みが減少→ココアバターの多い(油脂含量の高い)方がよく固まっている温度依存測定:体温付近の36℃で弾性率が1~4の順で低下→ココアバターの多い(油脂含量の高い)方が口どけが良い②油脂組成を変化させた試料 固体脂含有量測定:シャープメルト代用脂の方が全体的に固体率が低い 破断測定:破断応力、破断エネルギー、初期弾性率、すべて低下 →常温でも柔らかくなる 温度依存測定:体温よりやや低い、33℃付近で弾性率低下
2)官能評価
①ココアバターの量(油脂含量)を変化させた試料
学生:試料4の評価が高い(ココアバターが多い)
訓練パネル:試料2の評価が高い(バランスが取れている)
②油脂組成を変化させた試料
学生:B,C,Aの順で評価が高い(くちどけ重視)
訓練パネル:B,A,Cの順で評価が高い(風味重視)
今回のまとめ
以上のことから、学生はココアバターの多い口どけが良くまったりしたチョコレートを、研究パネルはテクスチャー・味・風味のバランスが良いチョコレートを好む傾向にあることがわかりました。
また、物性測定により油脂含量が多い方が噛み応えはあるが口どけが良くなり、代用脂を用いることでさらに溶けやすくなることがわかりました。
よって、油脂含量35-40%で、最も好まれたココアバター代用脂とシャープメルト代用脂半々のチョコレートがおいしいチョコレートとされたのです。
前回、「一人一人によりチョコレートの好みは異なる」という内容をご紹介したばかりなので、この研究のように、おいしいチョコレートの基準を結論付けるのは困難なことだと感じました。
この条件で作られたチョコレートは本当に美味しいのでしょうか?万人に受け入れられる指標になるのでしょうか?どこかで販売されているなら、ぜひ食べて確認してみたいですね!
この研究内容について詳しく知りたい方は、下記のURLをご参照ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/54/1/54_1_18/_article/-char/ja/
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