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高品質なチョコレートのためのひと手間。「近赤外分光法」による短時間で正確なチョコレートの結晶状態測定について。


こんにちは!ママノインターンの野澤です。今回は、最終的にチョコレートを作るときに重要な「テンパリング」に関する研究です。


「テンパリング」

チョコレート好きの方や、お菓子作りが好きな方は聞いたことがあるのではないでしょうか。テンパリング=調温。温度を上げたり下げたりすることで、チョコレート中の結晶を変化しづらい均等で密集した安定なものにするための作業です。このひと手間を加えることで、くちどけがよくなり、光沢やパキっと割れるスナップ性が与えられます。工業的に用いられているテンパリング方法は、チョコレートを強制冷却して生じた不安定結晶を再度昇温保持して安定な結晶型に転移させるというものです。
 
 いいことだらけのこの工程で重要なことは、なんといってもチョコレートの結晶状態を把握することです。目に見えないこの結晶状態を測定するために、主にテンパーメーターと呼ばれる装置が用いられていますが、測定に時間がかかるという難点があります。また、固形にしたチョコレートの結晶状態を測定する機器も、分析に時間を要します。そこで、赤外線を物体に照射して、透過するか反射するかで食品の品質を評価する「近赤外分光法」を用いることにより、短時間で正確にチョコレートの結晶状態を測定できないか というのがこの研究の目的になります。


試料

市販のビターチョコレートをテンパリング処理したもの


実験方法

試料をテンパーメーターと近赤外分光計により、溶けた状態のチョコレートと固めた固体チョコレートの結晶状態の測定。また、そのデータを統計処理。


実験結果


・測定の精度 固体チョコレート>溶けた状態のチョコレート
  →いくら短時間でも、溶けた状態のチョコレートは刻々と結晶が変化するので、正確な測定が難しい
・脂肪と糖に関連する指標を示せることが明らかとなった

⇒近赤外分光法によりチョコレートのテンパリングの状態が測定できる
⇒完成したチョコレート中の結晶情報を、品質判定法として品質管理に活かすことができる
⇒脂肪の結晶情報が明らかになることで、ブルーム現象(ココアバターが溶けて、チョコレートの表面で冷え固まり白く見える現象)の理解に役立つ


実際にこの方法を用いている企業の情報を見つけることができませんでしたが、短時間で正確な測定ができれば、さらに美味しいチョコレートが店頭に店頭に並ぶかもしれませんね!


この研究について詳しく知りたい方は、以下のURLをご参照ください。

「近赤外分光法によるチョコレートのテンパーインデックスの測定」 柴田克亮,小野誠,平野進 食品科学工学会 47巻9号 2007年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1995/47/9/47_9_692/_article/-char/ja/


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