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美術品も愛も「沼」である~映画『鑑定士と顔のない依頼人』

芸術を題材にした映画って、どうも取っつき難くないかい?

普段から美術館に行く人であれば違うのかもしれないけど、出てくる美術品が「なんでそんなに価値あるの?」と思うと、どうも物語に入り込めない。

一方で愛を題材にした映画は分かりやすい。
「好きだけど言えない!相手が自分と同じ気持ちとは思えないし…」みたいな、日頃から目にする光景だったりするし。

だけど芸術も愛も同じ点がある。

それは、本人がのめり込めばのめり込むほど、抜けられない魅力を持っているということ。さらに似ている点は、例えそれが贋作だと気づいても抜けられない「沼」だということ。

それを痛烈に感じた『鑑定士と顔のない依頼人』という映画。

さて主人公は「100年に一人」と称される、天才的な鑑定眼を持つオークション鑑定士の男性老人ヴァージル
白髪混じりのピシッとした髪型、綺麗にスーツが並べられたクローゼット。食事の時すら手袋をしている姿から、彼の完璧主義&潔癖症が伺える。

そして何を隠そう、彼は女性とお付き合いしたことがない。女性が苦手なのだ。だから仕事一筋、金も名誉もありながら、生涯孤独を突き進んでいる。

そんな鉄人に見える彼の唯一の趣味が、実は「美少女絵画のコレクション」と知ったら笑うだろうか。僕はドン引いた。
自宅にある隠し部屋の壁一面に、世界中から集めた美少女絵画が飾られている。彼は部屋の中央に置かれた椅子に座り、コレクションを眺めるのが日課なのだ。

ある日ヴァージルのもとにクレアという女性から「家にある父の遺品を全て鑑定してほしい」という依頼がくる。

普段は個別の鑑定を受けないのに、何故かこの時は依頼を受け、彼女の家に行く。だけど屋敷に彼女の姿はない。聞くところによると「広所恐怖症」で他人の前に出れないのだという。

一切顔を見せないクレアにヴァージルは苛立ち、依頼を断ろうとする。

ところが屋敷に落ちていた機械部品が、「オートマタ」という珍しい機器のものと分かり、残りの部品を集めるために度々屋敷を訪問するのであった。


元々はオートマタの部品を集めるために通っていたが、次第に姿が見えないクレアに惹かれるようになる。「彼女を一目見たい」「自分と同じように他人を避けている彼女であれば、心を許せるかもしれない」と。

それまで「美少女絵画」にしか興味を示さなかった老いぼれが、「現実の女性」のことで頭がいっぱいになった。

60歳ヴァージル、初めての恋である。

堪りかねたある日。いつものように屋敷で壁越しの商談を終えると、ヴァージルは帰ったフリをして、部屋にある美術品の裏に隠れた。クレアを一目見るために。

そしてしばらくすると壁の一部がズーッと開いて、若くて美しい女性が現れた。クレアだった。

ズキューン

ヴァージルはどんどんとクレアにのめり込んでいく。念願叶ってきちんと対面を果たし、クレアが普段いる隠し部屋にも入り、二人は愛を育んでいく。そしてとうとうヴァージルは結婚を決意する。

60歳ヴァージル、初めてのプロポーズである。

どうですか、これまでずっと「美少女絵画」で満足していたとは思えないスピード感。さすが100年に一人の鑑定眼は、真実の愛を見つけるのも早い


果たして、プロポーズの結果は??
そして、コレクションしてきた美少女絵画たちの行方は??
気になる方はぜひ映画をご覧あれ~



あ、ひとつ付け加えておくと、
この映画のピークはプロポーズの結果じゃない

“結末を知ると、物語の構図は一転する”と映画の予告にあるように、プロポーズの後が面白いんすよ!

老父の初恋、姿の見えぬ美女、そして値打ちある美少女絵画たち…。

これらが真実で繋がった時、あなたはどんな反応をするのだろう?

僕?
僕はあまりの出来事に声が出ず、口から魂が出かけたよ。
そして冷静になってゾッとした。

ここは初めから沼だったのだと。

ぜひとも美術品と愛の「沼」を味わってみては?


編集:アカ ヨシロウ

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真央

真央と書いて、まさおと読みます。会社員をしながら、たまにライターをしてます。教育、進学、映画、渋谷周辺、飲み屋、の話が多め。「日刊かきあつめ」という駆け出しのライターたちによる毎日更新の共同マガジンをやっております。

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