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人工知能が彼女でいいじゃない~映画『her/世界でひとつの彼女』

「いいかげん、彼女がほしいよ」

居酒屋でそう漏らす友人は、決して悪い男じゃない。収入もそこそこあるし、容姿だって、性格だって、それなりのものを持っている。
行動をしていないわけでもなく、色々な飲み会に顔を出したり、アプリを使って女性に会ったりしている。それでも彼女ができないようだ。

彼は最近の恋事情を、酒の肴にと思ってか、面白く話してくれるが、今後発展が見込めそうな話はひとつもなかった。彼女がいない男二人の恋愛トークほど、無意味な時間はない。

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この話題を早く切り上げたくて、氷が溶けて薄くなったレモンサワーを飲みながら、
「もういっそ、人間の女性じゃなくてもいいんじゃない?人口知能とか。」と皮肉を込めて伝えた。

すると彼は「テクノロジーがそこまで進化してくれたら助かるよ」と真面目な返事をしてきた。完全に弱り果てている。


居酒屋を出た帰り道、彼に観るように勧めた映画が『her/世界でひとつの彼女』である。

『her/世界でひとつの彼女』(eiga.comより)

ざっくりとあらすじを言うと、近未来のロサンゼルスを舞台に、妻と別居中で傷心中の主人公・セオドアが人工知能型OS「サマンサ」に恋をするラブストーリー。
サマンサは実態がなく“声”でしかないのだが、驚くほどユーモラスで、繊細で、クレバーで、セクシー。仕事の相談をしたり、些細な会話で笑いあったり、スマホの中に彼女を入れて一緒に外出したり。

彼女の姿は見えなくても、二人がやっていることは恋人同士のそれだった。

この映画を見た時、率直に素敵だなと思った。自分と本当に相性の良いパートナーに出会える可能性って決して高くない。人工知能であれば、彼女は本当の意味で「作るもの」にできる。

不確実性が高かったものが、制御可能なものになる。その近未来はとても素敵だと思うし、彼のようになかなか彼女が作れない人は一度試しても良い気がする。

しかし「人口知能との恋愛なんて狂気の沙汰」と思う人も多いと思う。セオドアが別居中の妻にサマンサのことを話した時にも、散々な批判を受ける。

ただルネサンス期の格言に”恋愛とは神聖な狂気である”というものがある。狂気と恋愛はコインの表裏なのかもしれない。

映画自体は意外な展開で幕を閉じる。いや、意外ではないかもしれない。普通の恋愛であっても、こういった幕引きはあるだろう。彼らを見ていると、人間同士では感情に隠れて見えない、パートナーとして本当に必要なコトが明確になる。

彼がこの映画を観たら、恋愛について語りながらまた酒を飲もうと思う。前よりは生産性のある時間になる気がするから。


編集:アカ ヨシロウ


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真央

真央と書いて、まさおと読みます。会社員をしながら、たまにライターをしてます。教育、進学、映画、渋谷周辺、飲み屋、の話が多め。「日刊かきあつめ」という駆け出しのライターたちによる毎日更新の共同マガジンをやっております。

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