ママ画像4

お産で揺れるママの心

今日の鎌倉はどんより曇り空。
ここ最近ずっとお天気だったので、かえって新鮮でした!



今日から何回かに分けて、理学療法士である私が産前・産後ケアを志したきっかけについてお話してみようと思います。


1回目は第一子出産時の思い出話から。



わたしの初めてのお産

私は第一子を4年前に出産しました。

2014年の2月。浅田真央ちゃんがソチ五輪で全国民の心に残る演技をしていた時期です。

予定日14日超過。ついに促進剤を打つことになっていたまさにその日の明け方に陣痛が始まり、そこから16時間程過ぎた夜。20:46に出産。


体重3,795g。かなり大きめ。

経膣分娩・会陰裂傷あるも、無処置で縫合なし。

(ちなみに2年後に産まれる娘は3,806g。子が大きく育っちゃう体質みたいです。しかし同じく経膣分娩にも関わらず、色々と出産について学び実践したおかげなのか、2人目だからなのか・・・全く裂傷しませんでした)



こうやって記すと、まあ初産にしては平均的な出産過程かなと思うのですが、実際はちょっと大変なこともありました。



それは息子が極軽度の新生児仮死状態となってしまったことです。



夫がへその緒を切り,胸元へ子どもを乗せてもらい、泣き声も聞いたので安心しきっていたのですが、その後、体重などをチェックする際になんだか先生や助産師さん達がバタバタ。

手を持ち上げては落とし、四肢の筋緊張をチェックしていました。

そしてそのままNICU(新生児集中治療室)へ連れ行かれ、保育器の中で点滴チューブと鼻からドレーン(管)を入れることとなってしまいました。



新生児仮死とは呼吸、循環、中枢神経系の不全状態に陥ることをいいます。珍しいことではなく2〜9%程度の確率で起こると言われています。そして多くの場合、人工呼吸等により後遺症もなく回復するとも言われます。



胎児は通常、へその緒を通してママから栄養や酸素をもらい、二酸化炭素や老廃物を処理してもらっています。それが分娩時に、赤ちゃん自身の肺による自発的な呼吸へと切り替わります。



しかし、上手に切り替えられなかったり循環不全で酸素が体内に巡らなかったりすることで低酸素状態に陥ることがあるのです。



結果的に、幸い息子はNICUでの先生や看護師さん方による治療やケアにより、その後問題なくスクスク成長してくれています。

よって、有り難いことに私達家族にとってその出来事は、一つの〝通過点〟として過ぎ去りました。




ただ、振り返ると、当時産後直後であった私は、かなり情緒不安定に陥っていたと思います。


今回フォーカスを当てたいのは子どもの状態よりも、産後の私(ママ)の心の状態です。


わたしが迎えた産後

私が出産した病院は、フリースタイル分娩・母子同室がモットーでした。ですので、産後のママと赤ちゃんは基本的に同室で一緒に過ごします。


病棟内ではママ達がコットという赤ちゃん用ベッドに赤ちゃんを乗せてコロコロ押しながら移動しています。


しかし、NICUに子どもが入っている私は、必要なタイミングで自分が出向いて行かなければなりませんでした。


幸いにも同じ病棟内なので大した距離ではないのです。ないのですが、悲しくて悲しくて、時々涙がでました。



廊下ですれ違うママをみると、みんな赤ちゃんと一緒に居られて幸せそうに見えたし、談話コーナーにご家族やご友人が来て、赤ちゃんを囲んでいる様子を見るととても羨ましかったです。NICUにいる赤ちゃんへの面会は、1回につき1人ずつでした。

(2年後、娘を産んで母子同室を経験出来たのですが、それはそれで大変なことも分かりました。)


NICUに行くと我が子に会えるので、極力行って保育器の中の子どもを眺めたり、授乳したりして過ごしていました。先生が回診に来る度、「どうですか?」と質問しました。


「念のため〇〇の検査もしておきましょう」


これを何度も伝えられ、ありとあらゆる検査をして頂きました。

血液検査・脳波検査・眼検査・聴力検査・レントゲン・・・

一つクリアになるとまた次の検査。



私も医療従事者なので、必要性は十分わかっているのですが、不安で不安で仕方なかったです。きっと、助産師さんや看護師さんもかなり気をつかってくれていたと思います。ただ、当時の私は何を言われても安心しきれず、どんどん不安に陥って行きました。


先生や助産師さんへは気丈に振る舞っていたし、頭では「子どもは大丈夫。私も大丈夫。産後不安になるのはホルモンのせいなんだ。」と理解していたのです。そして、自分自身にもそう言い聞かせていたのですが、3つ目か4つ目の検査をされることになったとき、ついに感情が爆発し、涙が止まらなくなってしまいました。



私の産み方が悪かったのかもしれない。産むときに苦しい思いをさせたのかもしれない。もう一度お腹に戻して、やり直してあげたい。時間を戻して欲しい。どうしてこうなっちゃったんだろう・・・と、もう取り留めなく色んな思いが出てきた覚えがあります。


お陰様でその後大丈夫ということが分かり10日程で退院に至るのですが、退院時には私の目は腫れてもうパンパンでした。



産後のホルモンのこと

私の場合、予想外のハプニングにより産後の情緒不安定さが助長された部分もあるとは思います。それにしても、あの時期は本当に些細なことで一喜一憂し、過敏になり、人生で一番取り乱していたように思います。


〝産後はホルモンバランスがまだまだ不安定〟

というのはよく聞く話。でも、ホルモンって目に見えないし、イメージするしかないので、なんだかふわっとしてますよね。


でも、確かに身体の中で働いているのを、特に女性の皆さんは感覚的に感じているのではないでしょうか。


妊娠すると、女性の体内でのホルモン変化は非常に著しくなります。簡単に説明すると・・・


ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG):妊娠の維持に重要。つわりの原因になると言われている。

プロゲステロン:体内に水分を水分を貯留する働きがある。

エストロゲン:プロゲステロンの生成。脳内のセロトニン(精神安定に関与)分泌促進。女性ホルモン。

プロラクチン:乳腺の発育を促す。乳中産生ホルモン。

オキシトシン:陣痛をきたす為に必要なホルモン・愛情ホルモン。

リラキシン:出産に備え、各関節の靭帯を緩ませる。


これだけのホルモンが、各ホルモンのタイミングで妊娠と共に上昇します。

そして出産を迎えるとどうなるか・・・。


妊娠期間中に10ヶ月程かけて徐々に上がって行ったホルモン分泌量が、なんと産後直後〜1週間やそこらで、急激に妊娠前の状態にまで下がるのです(授乳等に関与する一部のホルモンはある程度の分泌量を保ちます)。


この急激な変化が精神面にも影響するとされ、〝マタニティーブルーズ〟とも言われます(産後3〜10日でみられる軽度の精神の異常を指します)。

十分な休息により産後2週間程度で症状が消失することが多いとされつつも、重症化して〝産後うつ〟へ移行するケースも少なくありません。



産後うつのこと

厚生労働省によると、産後うつは約10人に1人が経験するとされ、2012~14年度に実施した調査では、初産の場合うつ状態など精神的な不調に陥る人は産後2カ月ごろまでに多く、特に産後2週間の時期に発症のリスクが高かった。1カ月健診は広く行われているが、子供の発育の確認が中心。


とのこと。それに伴い、産後より早い段階から精神的に不安定になりやすい母親へのケアも充実させる必要があるとされ、2017年4月より徐々に各自治体にて産後2週間と1カ月の2回、助成のもとで健診を受けられるようになってきています。


一般的な健診費は約5千円のため、事業を導入する自治体では補助券などによって多くの人が無料で受けられ、出産した医療機関以外での健診も対象とのことです。


これは非常に大切な動きだと思います。産後うつが何を招くか、それは想像に難くありません。育児に上手に向き合えない。それは、だれもが経験し得ることです。


理学療法士である私に出来る・私だからできる産後ケアとは・・・

一般の方にとって、産前・産後領域において理学療法というのはまだほとんどなじみがないと思います。でも、フランスなど、海外ではママ達が〝理学療法(士)〟というものをしっかりと認識して、産前・産後のケアを受けています。

日本ではここ数年で理学療法業界の中でもウィメンズヘルス領域への注目が高まりつつあります。しかし、まだまだ地域に根付くまでには至って居ません。


不思議なことに、私は第一子の妊娠が発覚する直前に名古屋で開催された日本理学療法学術大会にて、ウィメンズヘルスがテーマのランチョンミーティングに参加していました。そして「あ、この分野を深め、いつか女性のケアに従事してみたいな。」と感じたのを覚えています。


そんな中、自身の妊娠が分かり、病院でのリハビリ業務をしながらマタニティライフを送り、そして前述したような出産を迎えたことで、この道を深く極めてみたいと感じるようになりました。



産後の情緒の変化や身体の変化はかなり衝撃的でしたし、理学療法士であるにもかかわらず、初めて経験する様々な症状に自分自身惑いました。



退院後・・・

心は安定していくも、次は身体がガタガタに・・・。(涙)

それはまた後日お話します♪


参考文献:

日本経済新聞 電子版 「産後うつ予防へ健診費助成 厚労省、不調を早めにケア」2016年10月9日付

ウィメンズヘルスリハビリテーション研究会(2014)『ウィメンズヘルスリハビリテーション』MEDICAL VIEW.

中井章人著 『周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理』
東京医学社.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?