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推し活の効能


以前やっていた東京ガスのCM、「母の推し活」編をご存知でしょうか?

CMのストーリーは、こんな感じです。

タクシーの運転手、という仕事をしている母。お昼休みにタクシーの中でお弁当を食べながら見ていたテレビに出ていた韓国の男性アイドルすグループに目を奪われます。

「恋をした。30歳年下の人に」

そこから母の推し活が始まります。
娘は最初あきれてしまいます。それでも、美容師さんも同じグループのファンだとわかり、友達になります。殺風景な部屋はファングッズで明るくなり、ダンスを覚えたり。韓国語も習い始めてタクシーの仕事中も韓国人のお客さんとコミュニケーションが取れたりと、一気に世界が広がるのです。
そんな風に楽しそうにしている母を見て、娘も「なんかもう、羨ましくなってきた」と、母の推し活を応援してくれるようになります。
そして、ライブのチケットが取れて、いよいよ、という時に、母は職場の検温で引っかかってしまい、そのままダウンしてしまいます。ライブには行けなくなってしまうのです。
「もうおしまいだ」
そうベッドに横になりながら言う母に、娘は「何言ってんの!お母さんの推し活はまだ始まったばっかじゃん!」そう言って母のために韓国料理のサムゲタンを作ってあげて、母もにっこりしながらそれを食べる、というもの。

このCMのことを教えてくれたのは、職場の先輩でした。
「このCM知ってる? これ、気持ちわかるんだよね。見てみて」と私のスマートフォンに送ってくれたのです。
なんだかほっこりとするこのCMを教えてくれた先輩もまた、59歳にして、初めての推し活をはじめて、初めてのファンクラブというものに入った、という人です。まさに、「恋をした。30歳年下の人に」

CMと違うのは、なんとその娘さんとお孫さん2人の3代で同じグループを推し活している、ということ。
4人でライブに行ったりするのだから、本当に楽しそうなんです。
「チケットが取れたの!」「何を着て行こう?」「せっかく会いに行くんだから、少しダイエットしなくちゃ!」
さらには、「新曲が出るの」「クレーンゲームでグッズが出たの」と、毎日が楽しそうで、本当になんだか羨ましくなってきます。

そうなんです、私はそのCMの中の娘さんのような気分です。私の場合は呆れているのではなく、あまりにも先輩がそんなに推し活を楽しんでいることがなんだかとても意外だったのです。
なぜなら、先輩は有名人が亡くなって泣いているファンをテレビで見ても、「こんなふうに想える憧れの人がいるってなんだか羨ましいよね。私はそんなに誰かのファンになるなんてこれまでなかったなぁ」なんて言っていたくらいだったのです。それが、まさに本人がそのくらいに好きな人ができたのですから、やはり意外だと思ってしまいます。
そして、そんなふうに、そのグループの情報を毎日受け取っていると、私もメンバーのことがか分かってきて、少しずつ楽しくなってくるのです。

それからは私は推し活の推し活を始めました。新しくクレーンゲームが始まったと聞くと、なんとなくゲームセンターを覗いてみてやってみたり。取れたことはないのですが。
〇〇を買うとキャンペーンに応募できると聞くと、買った場合にはレシートを渡したり。まさに推し活の推し活です。

先輩はとても仕事も気配りもできる人で、私は本当に尊敬しています。そんな先輩の推し活は、毎日が大袈裟ではなく、まさにキラキラと輝いていて、話を聞いていてもこちらまでうきうきとしてくるのです。だから、推し活を推したくなるのですね。

先輩はどんどん若くなってきています。顔色もいいですし、お肌もツヤが出てきたような気がします。Instagramも、Twitterもはじめて、世界が広がってきています。ファンクラブに入ることで、今までは「よくわからない」で片付けていたネットでの申し込みや買い物にも挑戦しているようです。「これでしばらくはボケないかも」なんて笑っていたり。

人は年齢なんか関係なく、いつからでも好きなものを見つけることができるし、それに夢中になることもできます。最近では、年齢を理由に笑われたりすることもないですよね。
むしろ、親子3代で夢中になれるなんて素晴らしいと思っています。

そうです、推し活は頑張る人の生活に潤いと張りを与えてくれて、「よし、もう少し頑張ろう!」という気持ちにさせてくれるものなのです。

しかもそれは、自分だけではなく、周りの人をも巻き込んで、幸せな気持ちにさせてくれるのかもしれません。

現に私は推し活の推し活をとても楽しんでいます。
そして、私もこの先、30歳年下に恋をしたら、その時は迷わずに推し活の世界に飛び込もうと心に決めています。

もしかしたら推し活は心身の健康にとてもいいのではないか、なんて考えている今日この頃です。


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