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小説「潜れ!!モグリール治療院~第12話 馬鹿じゃないもん最強だもん~」

冒険者は社会不適合者の集まりだ。
真面目にこつこつ働くことが出来ないとか、頭の螺子が外れてるとか、病的に気が短くて喧嘩っ早いとか、他人には理解してもらえないような特殊な嗜好を持ってるとか、まあ色々あるんだけど、決定的に駄目なところが時間を守れないことだと思う。
一応町の中には日時計だってあるし、砂時計の1本くらい誰だって家にあると思うし、役所とか教会が朝と昼と夜の3回、日時計を確認して決まった時間に鐘を鳴らしてくれるけど、それに従って活動できる人は立派な真人間の道を選ぶ。鐘が鳴ってもなお時間を気にしないのが社会不適合者なのだ。

冒険者たちはだらしない。
夜は遅くまで酒を浴びるように飲むし、朝はいつだって二日酔いでぼけーっとしてるし、夕方まで寝てるなんて珍しくもない。
もっと駄目なのになると、夜は遅くまで酒を浴びるように飲んで、朝になってもまだ酒を飲んでて、昼間に死体みたいな顔色でお酒を買いに行って、夕方になるとまた酒を煽って気がついたら昼になってるダブル太陽なんてのも珍しくない。

私? 私は朝ちゃんと起きれるもん。

私ことヤミーちゃんの朝は早い。
私の育った北の最果ての土地ノルドヘイムは、毎日が夜から始まる。夜の内に浅い眠りから目を覚まして、朝と共に始まる飢えた獣たちの襲撃に備える。夜は夜で、昼間に食べ損ねた弱くて卑怯な獣が闊歩してるから、一切油断できない。そんな場所で育ったからか、ちょっとした物音で起きるし、起きた瞬間からしっかり動ける。それが出来ないと食べられちゃうわけだから、嫌でも身に着いて放れてくれない習慣なのだ。
だから朝の光が窓から射し込む前に、空が少しでも白んだ頃にはすっかり目が覚めているのだ。それが例え、居候先のふかふかで寝心地最高な布団の中でも。
もちろんそのまま二度寝という贅沢を選んでもいいし、町の外に出て狩りをして来てもいいのだけど、今日の私はちょっと違う。
折角、ここ冒険者の町スルークハウゼンにいるのだから、なにか面白いものでも探し歩こうと思うのだ。

なぜって? なぜもなにも暇だから。

まず私とパーティーを組んでるクアック・サルバー、久しぶりに町に帰ってきたからって、今までの飲み損ねた分を取り戻すかってくらい酒場で痛飲三昧。その上、酒場で出会ったちょっと顔のいい男や女を誘っての夜のお遊び。だらしなさを絵に描いたような暮らしを1週間は続けたいってことで、きっと今頃は朝から頭が割れるくらいの二日酔いに襲われてるに違いない。
次に同じくパーティーを組んでるヤーブロッコ、彼は色んな冒険者の助っ人もしていて、モグなんとかっていう闇医者と冒険の準備をしているらしい。彼が言うにはモグなんとかは前に私を誘ったらしいけど、そんな奴いたっけ?
とにかくふたり共、避けては通れぬ用事とやらがあって動けない。いや、動けよって思うけど、特にクアック・サルバーは用事でもなんでもないでしょ。


そういうわけで、私は暇つぶしの朝の散歩と洒落込んでるわけ。

冒険者の町は、仕事の多くが冒険者相手の商売や冒険者の管理に割かれてるから、夜明け前はまだ全体的に眠っているけど、みんながみんな寝ているわけではない。
猟師は狩りに出ようって時間だし、漁師は釣りから帰ってくる時間。そんな両氏から食糧を調達したり、食べ物を売る人はせっせとおいしそうな匂いを漂わせてる。
金もないことはないし、早めの朝ごはんにしちゃうのもアリだなーって鼻をふすふす鳴らしていると、通りの向こうを異常に目つきが悪くて、目の隈がえげつないくらい濃くて、足取りがゾンビくらいに頼りない女が歩いている。
ゾンビっていうのは、いわゆる蘇って動く死体。原理がわからないけど、冒険者が挑む天然自然で人類未踏の大迷宮は、人間の知恵では遠く及ばないことがまだまだある。
死体が動いてもなにも不思議ではないし、ゾンビの足取りがふらふらよたよたしてるのも不思議じゃないのだ。

ゾンビ女は手に握った長い棒を杖の代わりにして、今にも倒れそうになりながら歩いていて、脇に抱えた籠には眠たそうに瞼を持ち上げるニワトリが1羽。青白い不健康そうな顔をぬらっと起こして、棒のように痩せた両手と背筋を伸ばして長い棒をゆらゆらと動かしながら掲げて、そのまま体をふらりふらりと大きく揺らして、棒の先に結びつけられた鎖付きの分銅でこつんこつんと窓枠に叩き始めた。
こつんこつん。
ごつんごつん。
がたんがたん。
分銅で叩く音は次第に大きくなり、ようやく窓を開けて顔を出した、だらしない二日酔いの男の横っ面を張り倒し、落ちてきた財布を素早く懐に入れて、ゾンビ女はまたふらふらと歩き始めて、また次の窓を叩いて回る。
すんなり起きたらそのまま次の窓へ、なかなか起きてこなかったら窓を打ち壊すような勢いで叩き、出てきた寝ぼけ面を容赦なくぶん殴る。
そして起こした客からお金を貰って、次々と窓を叩いて回るのだ。

「おい、そこの狼女。私の仕事は見世物じゃねえぞ」
「おい、ゾンビ女。私の名前はヤミーちゃんだ」
ゾンビ女は私の被っている狼の毛皮を睨みつけて声を尖らせる。狼の毛皮は狂戦士ウルフヘズナルの象徴であり、私の力の源でもあるし、私の強さとかわいさを知らしめる最強の装備なのだ。
もちろん私は狼の毛皮なしでも強くてかわいい、でも狼の毛皮を被って尻尾を振り乱す私は最強に強くてかわいいのだ。
「誰がゾンビだ! 私はなあ、見ての通りきっちりかっちり生きてんだよ馬鹿!」
「だって顔色と目つきがやばいから」
「ああん?」
ゾンビ女が悪い目つきをより一層鋭く酷く歪めて、どす黒く濁った沼みたいな瞳を向けてくる。


ゾンビ女の名前はキキ・リッキー。
ゾンビ並みに不健康だけどゾンビではない。
元々は蝶よ花よと育てられた裕福な商家の娘だったけど、ある日突然眠りが浅くなる病を患い、日に日に体調も心の具合も悪くなって、今のようにゾンビみたいな生気のない顔色と目つき、育ちのよさが一切見えない性格になったんだとか。
仕事をしようにも寝てないから体力がない、体力を付けようにも仕事が出来ないからお金がない、お金がないから寝ていられない。
そんな悪循環をどうにかするために始めたのが、ノッカー・アップという仕事。
その名の通り、高いところにある窓を叩いて、中で寝ているだらしない奴を目覚めさせる起こし屋。どうせ嫌でも眠れないんだから、その眠れないのを利用して、誰よりも早くやってくる起こし屋を始めたらしい。


「そういうわけで、私は犬っころと遊んでる暇はねえんだよ。大変なんだよ、馬鹿共を起こすのは……だいたい冒険者って奴らは……」
ちょっと喋るだけで体力が削られるのか、キキはぐるぐると目を回しながら頭を傾けて、そのままぐったりと座り込んでぶつぶつと恨み言みたいな言葉を垂れ流している。
「いや、寝なよ」
「寝れねえっつってんだろ、馬鹿が」
キキは懐から何種類もの薬を取り出して、飴玉みたいにガリガり齧って、どよんとした瞳をさらに濁らせる。その姿はますますゾンビっぽいけど、効かなくても薬を飲まないわけにはいかないみたい。いや、効かないなら飲むなよ。
呆れてゾンビ女を見下ろしてい内に、私の天才的な賢さがきらんと光る。
眠れないなら強制的に眠らせればいいのだ。

強制的な眠り、要するに気絶だ。
意識が飛ぶような強烈な一撃で気絶させたらいいのだ。

そうと決まれば話は早い。私は俯いているゾンビ女の顎を、川で魚を掬う熊のように、ぐっと腰を落として背中を捻じり、右拳を下から上へと突き刺すように振り回す。
拳はゾンビ女の顎をしっかりと捉えて、そのまま痩せ細った体を大きく浮かせて、ぐわんぐわんと上体を2度3度揺らしながら、意識をずっと上へと押し上げて昏倒させる。
もちろんちょっとくらい手加減はしてる。手加減しなかったら膝蹴りを叩き込んでたわけだから、拳の時点で手加減といえるのだ。

拳の加減? ちょっと意味がよくわかんない。

キキは数秒ほど白目を剥いて両膝を地面に落としてたけど、すぐに黒い目玉をぎょろりと元に戻す。
どうやら気絶からの回復も異常に速いみたい。それはそれで便利かもしれないけど、私だったら嫌だなあって思うから、ちょっとかわいそう。
で、そのかわいそうゾンビは痛めた顎を押さえながら立ち上がり、私のおでこに向かって少し高い位置からごりごりと頭を擦り付けてくるのだ。
「なにしやがる、この犬っころ!」
「いや、眠らせてあげようと思って」
「だからっていきなり殴ることねえだろ、この蛮族チビ!」
どうやら酷く怒っているみたいで、今にも噛みついてきそうな勢い。怒ると余計にゾンビっぽいし、おまけに足の踏ん張りが利かないのか、そのまま体重を預けてくるからゾンビを超えた別のなにかっぽい。
上から迫りくる超ゾンビ女をぐいっと押しのけながら、そのまま勢いに任せて地面に転がして、
「とりあえず医者にでも診てもらいなよ。そうだ、闇医者だったら知ってるから連れてってあげるよ」
細い枯れ枝みたいな両足を脇に抱えて、ずるずると引っ張ってみることにした。


「闇医者? そいつ、もしかしてモグリールって野郎じゃねえか?」
「えーと、なんて名前だったっけ? モグなんとかって名前だったけど」
「だったらモグリールじゃねえか。そいつも起こせって頼まれてんだ、このまま連れていけ」
キキは地面を引きずられながら偉そうに踏ん反り返っている。踏ん反るというか寝そべる体勢なので、寝そべり返っているが正しい、寝そべり返るなんて言葉があるのかわかんないけど。
寝そべり返りの腹の上では、籠の中でニワトリがすやすや眠っていて、どうやら運ばれ心地は悪くないみたい。時折がつんがつんと段差に頭をぶつける音がするものの、きっと運ばれ心地には関係ないのだ。
だって私が運んであげてるんだもん。


引きずり続けること数分、私とゾンビとニワトリは汚い路地裏の中にひっそりと佇む、今にも倒れそうな汚い建物の、相当建付けの悪い汚い窓を見上げていた。
闇医者のモグリール治療院、腕はそれなりに立つけど性格の悪い無資格の医者が、普通の医者がしないような非人道的な方法で治療を施し、結構な代金を吹っ掛けるという噂がちらほら。
私が引きずっているゾンビ女もモグリールの世話になったことがあったそうで、
「眠れない? 最高だな、死ぬまで働いてくれる労働力が欲しかったんだ」
なんて身も蓋もない言葉を投げかけて、自分のパーティーに加わるように声を掛けたのだそうだ。

「ああいう男を、どうしようもない糞っていうんだ! いいか、犬っころ。あんなのとパーティー組むんじゃねえぞ、なにされるかわかったもんじゃねえからな」

キキがよっこらしょと呟きながら立ち上がり、でもまだ足の力が戻ってないのか、さっき以上に上半身をぐらぐらと不安定に揺らしている。長い棒を持ち上げようにも背筋を伸ばすとさらに不安定になって、思うように狙いが定まらない。どうやら私の必殺の拳は本当に一撃必殺みたいで、まだ結構なダメージが残っているようだ。
さすがだな、私の拳。小さくてかわいいのに強い。
「駄目だ、顎が痛すぎて仕事にならねえ……おい、犬っころ。代わりにあの窓叩いてくれ」
「いいよ。叩けばいいんだね?」
「いいか、まずは軽く、こつんと触るくらいだぞ」
そんなことはわかってる。私は武器の扱いも手慣れたものだもん。

私は頭にニワトリの入った籠を乗っけて、右手で長くてよくしなる棒を掴む。棒自体の重さはそれほどでもなく、でも先端の鎖分銅に引っ張られてバランスを崩すような不格好な出来でもない。
武器の扱いはどれも基本がある。まずはべったりと両手の皮が張り付くくらい、ぎっちぎちに力を込めて握る。大きく振りかぶって、全体重と全筋力を乗せて、地の底のもっと下の地獄の底まで叩き割って、さらにその下まで届くように思い切り振り下ろす。
強烈な加速の加わった分銅は、獲物を狙う猛禽のように空中を滑り降りて、ガオンと大きな音を立てて今にも外れそうだった窓枠を幾つもの木っ端に変えて、散り散りに吹き飛ばす。

「軽くって言っただろ、ばかーっ!」
「馬鹿じゃないもん、最強だもん!」

言い争う私たちの頭上では、急な襲撃を受けたみたいに甲高い女の声が響いてくる。それに続いて、喉がからからに渇いて掠れた男の声。
しばらくして追撃がないと判断して顔を出す、寝ぐせだらけの黒い癖っ毛と無精髭の男。
見覚えがあるような気もするし、やっぱり見たことないような気もする。

「……なんだ、ヤミーちゃんと、起こし屋か。なにやってんだ?」

顔を出した男は上半身しか見えないけど、ちゃんと鍛えてる感じの肉付きで、手首から背中や胸にかけて派手な落書きがいっぱいしてある。知ってる、刺青ってやつだよね。うちのじいちゃんやおかあさんやおとうさんも入れてた。
刺青には魔除けとか戦意高揚とか色んな効果があって、ちゃんとした力のある彫師が入れたら、自分の力をしっかり上乗せしてくれる。
故郷にもかなり腕のいい彫師のおじいちゃんがいたけど、何年も前に熊に食べられちゃった。
なんてしみじみと故郷を思い出していると、
「で、ヤミーちゃん。こいつは一体全体どういう要件だ? 知ってるか、他人の物を壊したら慰謝料ってのが発生するんだぜ」
起こし方が気に入らなかったのか、ボロい窓枠を壊されたからか、少し怒気を含んだ物言いをしてくる。

失礼な。私だってそれくらい知ってる。
殴ったり壊したりした時に、ごめんなさいって意味で払わされるお金のこと。考えようによっては、お金さえ払えば殴っても許しもらえる、ともいえる。法律とか規則とか自分には関係ないと思ってるけど、考え方次第では悪用も出来ちゃう。
極端な話、絞首台に上る覚悟さえあれば人の命だって奪えるのだ。私は絞首台にも上がらないし、気に入らない相手は容赦なくぶちのめすけどね。
「知ってる。お金払うから殴っても許してね、ってやつでしょ?」
「ああ、うん。やっぱり慰謝料はいいや」
殴られる気配を察したのか、寝ぐせ男はシャツを着ながら下りてきて、ほら帰った帰ったと娼婦らしき、胸もお尻も豊かで色っぽいお姉さんたちをそそくさと帰らせる。
冒険者は基本的に欲望に忠実過ぎるので、娼婦のお姉さんたちも大忙しだ。そういえば朝が近いからか、かすかに白んでいた空も地面との境界を赤く染めている。そんな情熱的な赤が射す中を、お姉さんたちはお金の詰まった袋を抱えて、欠伸をしながらぞろぞろと歩いている。

「別にいいんだけど、多くない?」
「今日から冒険者ギルド主催の行軍が始まるからな。しかも100人以上の冒険者が参加する大規模作戦だ、どいつもこいつも抱き納めしてるのさ」
じゃあ、そいつらは帰ってこれない覚悟をしてるんだ。生き残れる腕がないなら行かなきゃいいのに。
なんて思ったりしてると、ふと目の前の寝ぐせ男のことを思い出した。以前、訓練中の新米冒険者を煽ってけしかけて、大量の怪我人を出した男、闇医者のモグリールだ。
「俺はひとり寝が嫌いだから、いつものことだけどな」
「そういえばお前、なんで新米をけしかけたの?」
「かわいい女の子がおっさん捕まえてお前とか言うもんじゃないが、そうだな、そういえばまだお披露目してなかったな」
モグリールがちょっと来いと言うかのように、建物の裏手へと手招きしてくる。私とキキは顔を見合わせて、モグリールの後を少し距離を開けてついていくことにした。


「相変わらず悪趣味な野郎だな、クソ医者がよ」
案内された場所に辿り着いた瞬間、キキが毒づいた。
目の前に現れたのは欠損した手足を義手や義足に変えた若い元冒険者たち。それと頑丈そうな馬車が1台。元冒険者たちはよくよく見てみると、前に郊外で魔獣に襲われて重傷を負った連中もいて、全員がどよんとした濁った眼をして、変な臭いのする煙草を吸っている。
「ヤミーちゃん、こいつがさっきの質問の答えだ。俺は輸送隊の人出が欲しい、こいつらは冒険を諦めたくない。でも手足を失った足手まといを連れていってくれるお人好しなんざ、どこを探したっていない。だったらお互い助け合いましょうって話だ」
「ふーん」
「こいつらは便利だぞ。なんせ治療費を払えずに借金漬けだからな、タダでいくらでも働かせられる労働力ってわけだ」
キキがクソ医者って嫌う理由もわかる。私もなんか本能的にこいつが嫌い。上手く言葉に出来ないけど、悪意に満ち満ちてて嫌いだ。

「ヤミーちゃん、前に一緒にパーティー組まないかって聞いたの覚えてるか? 見ての通り、こいつらは戦闘は苦手だ、はっきり言って近づかれたら話にもならない。でも単騎で常識外れに強い戦士が敵を引きつけてくれたら、こいつらはあっという間に敵を殲滅してくれる」
馬車に目を向けると、被せられた幌の隙間から幾つもの銃口や鏃を覗かせている。大量の飛び道具にタダで使える射手、それを率いる医者。
後方支援に回復、確かに私のパーティーには足りてないものを一気に補ってくれる集団だ。
でもなー、でもなーなんだよね。便利だからといって、便利なだけでは私の背中を任せる、とはならないんだよね。
「やめとけやめとけ、糞野郎と組むと道中全部糞になっちまうぞ」
キキの言うこともごもっともだ。どうせなら楽しく気ままに冒険したいもん。

この闇医者の申し出を受け入れるべきか、断るべきか。

「組みたくなかったら同行って形でもいい。信頼は大事だからな、そこら辺は実際に現地で作り上げていこうか」
「しつけえなあ、糞医者はよお! 帰って糞でもしてこいよ、糞野郎が!」
「おい、起こし屋。さっきからいちいちしゃしゃり出てくるが、これは俺とヤミーちゃんの話でお前には関係ないだろ」
「いい年したおっさんがガキをちゃん付けで呼んでんじゃねーよ、気持ち悪い!」
「お前の鶏がらみたいな体の方がきついけどな、死体みたいで」
「なんだと、竿が短い分際で!」
外野はさっきからずっと騒々しい。まだ朝早いんだから、もう少し静かにしようと思わないのかな。


よし、決めた。

真面目に考えて導き出した答えを伝えようと口を開いた瞬間、

「コケコッコー!」

頭の上のニワトリがけたたましく鳴いて、そこら中の窓という窓が開き、眠りを妨げられて怒った人たちが一斉に顔を出して、それどころじゃなくなったのだった。


(続く)


<今回のゲスト冒険者>

キキ・リッキー
性別:女 年齢:25歳 職業:ノッカー・アップ

【クラス解説】
▷長い棒でドアや窓を叩いて依頼人を起こす目覚まし係。仕事の集合や恋人たちの待ち合わせまで重宝される。

【クラススキル】
☆モーニングコール
➡眠り状態に陥った味方を自動的に起こす

【主要スキル】
・不眠症
➡睡眠系の魔法や特殊効果を防ぐ、ただし健康状態に大いにマイナス
・夜間歩行
➡夜道を足音を立てずに歩くのも立派な技術
・スナッファー
➡棒の先の金属の蓋で火を消す、炎属性弱体化

【装備】
・ロングフレイル(武器・棒)
⇨竹竿で射程距離を伸ばしたフレイル、遠心力を加えればそれなりの武器に早代わり
・ニワトリ(補助装備・箱)
⇨仕事の相棒ニワトリを入れた籠、特定時間に強制的に周囲一帯を叩き起こす


ー ー ー ー ー ー


というわけでモグリール第12話です。
ようやくモグリールと合流した回です。

ノッカー・アップという出しどころに悩む職業をどうやって出そうかなって思ったら、こんな話になりました。
本来年配の男女が多かったらしいノッカー・アップですが、さすがに年配の方にアッパーとかさせられないので若い不眠症の女になりました。
眠らないので局地的に大活躍するクラスです。眠りを連発してはめごろしにしてくるボスとか相手だとチート級の活躍ですが、局地的過ぎるのでゲスト枠にしました。

唐突ですがQ&Aです。

Q.ヤミーちゃんはすぐ殴るけどなんでですか?
A.文化です。

Q.ヤミーちゃんは殴った相手とも仲良くできるんですか?
A.できます。でも殴ってきた相手は確実に狩ります。

では、また次回で。