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小説「潜れ!!モグリール治療院~第10話 転生者ってみんな、ああなの?~」

背の高い樹木が生い茂り毒を持った虫や蛇、凶暴な肉食の獣が潜む過酷で凶悪な反面、遠目から眺めると紅玉で飾り付けたような美しくも鬱紅とした密林を抜けると、そこは金網と石壁に囲まれた小さな集落だった。
石壁にはなにやら文字が刻まれていて、私は全然文字を使わない環境で育ったせいであんまり読めないけど、おそらく休憩所とか冒険者用野営地とか書いてあるんだと思う。
冒険者の町スルークハウゼンからそう遠くない森の中にある、これみよがしな集落は、迷宮探索の中継地点とか補給地とか負傷を治すための治療所とかそういう場所に違いない。

「転生者の村、って書いてるね」

冒険仲間のクアック・サルバーが看板の文字を読み、顔につけた嘴状の仮面を上へと傾ける。クアック・サルバーはなんで嘴で顔を隠してるか知らないけど、ダークエルフという長命種族で銀髪褐色肌の美女だ。
私も美女という点では同じだけど、どちらかというとかわいい系の美少女なので、ちょっと種類というか枠組みが違う。
おまけに今はクアック・サルバーでいうところの嘴にあたる、私にとっての装備品、狼の毛皮が無いので私のかわいらしさも半減、ついでに戦闘力も半減なのだ。私のような狼毛皮をまとった狂戦士ウルフヘズナルは、狼の毛皮があってこそなのだ。
私はウルフヘズナルのヤミー、北の限界集落ノルドヘイムからやってきた美少女だ。

そんなことはどうでもいいの。転生者ってなに?

「転生者っていうのは、自称異世界からやってきた人間のことだね。異世界というものが本当にあるのかは不明だけど、転生者たちが揃って同じ意味の名前を口にしたりするから、基本的にはなんらかの創作物や小説の類を基にした集団幻覚と認識されている。要するに病人だね」
もし異世界があるんだったら、かわいいモフモフな動物たちが喋る世界に行ってみたいけど、現実はそんなに都合よくないし、異世界はないと思うけどモフモフな動物たちが喋る町は実際に存在している。
「彼らは総じて空想のような世界のことばかり口にして、一向に現実の生活に馴染もうとしない。そういう社会性に欠けた病人の存在は、人間社会を運営していく上で避けては通れない問題でね、こうやって一箇所に集めて特別な居住区に隔離してしまうんだよ。町に放り出して、そのまま鬱屈した感情を抱え込まれて、なにかの拍子に子どもや老人なんかに襲いかかられても困るからね」
クアック・サルバーが言うには、病人は病気なのに不思議と無駄な力が有り余っていて、鬱屈すればするほど最後は爆発してしまうらしくて、病人で正常な判断力が失われているのに狙うのは弱そうな子どもや老人や弱そうな女であることが多いという。
しかも排除しても排除しても、不思議と転生者たちは何処からか湧いて出てくるので、彼らが初手で絶望しないように手厚く隔離、もとい保護をしなければならないのだとか。
なんだかとってもめんどくさい。

「ちなみに転生者は生まれ変わりで、転移者はそのまま移動してきた者で一応別の種類だけど、似たような病魔に侵されているから一括りに転生者と呼ばれている」
「ふーん。治療法とかないの?」
「今のところ無いね。例えばヤミーちゃん、焼いたお肉に塩胡椒を振ってしまったら、もう塩胡椒なしのお肉には戻れなくなるでしょ? 彼らも高度な文明での生活を味わってしまったからには、数百年は遅れている野蛮人の暮らしには馴染めないわけだよ」
クアック・サルバーが額の上まで持ち上げた嘴を光らせて、再び顔の前まで下げてみせる。どうやら傾けた意味は特にないみたい。
「そんな彼らが生活しているのが、この転生者の村。通称、ダメ人間村」
素晴らしく直球な名前の村だ。家族がそんなところに放り込まれたら涙を垂れ流すに違いないな。


「あれ? もしかしてクアック・サルバーと……ヤミーちゃん? こんなところで何してんの?」
ダメ人間村に荷物を運ぶ輸送隊のひとりが声を掛けてくる。顔を分厚いガラス製のゴーグルと一体化した防毒マスクで隠した、季節外れの厚手のコートを着込んだ背のあまり高くない男で、どこかほんのりと悪臭を漂わせている。
この臭いには覚えがある。確かなんとかって名前で、なんか仕事はしてた。
詳しい部分は何にも覚えてないけど、臭いは以前嗅いだ覚えがある。食事中に近くにいて欲しくない臭いだ。
「ひさしぶりだね、ヤーブロッコ君」
そうそう、ヤーブロッコ。そんな名前だった。どんな人かは覚えてないけど。
「ヤミーちゃん、さては僕のこと覚えてないでしょ?」
「さすがヤーブロッコ君、相変わらず目が利くね。ヤミーちゃんの記憶力は鶏並みだ」
失礼な。どうでもいいことでも5分くらいはちゃんと覚えてるから。

ヤーブロッコ、新米以上中堅未満の冒険者。
普段はどぶさらいの仕事をしていて、いざ冒険に出てみれば苦行にも等しい仕事で培った発見能力をこれでもかというくらい発揮し、素材から土や草に埋もれた落とし物までありとあらゆるものを発見する探索の名手。
下水の臭いが染みついた、どちらかというと嫌われ者の部類に入る彼だけど、強さ重視の脳筋冒険者たちに欠けがちな観察力と忍耐力を持つため、意外にもあちこちのパーティーから引っ張りだこ。
今日もダメ人間村への輸送隊に護衛のひとりとして雇われ、いつものように獣の足跡や冒険者の遺留品を発見することで、安全な道を選んで部隊を導いてきたそうだ。
他の護衛達からしたら退屈かもしれないけど、危険は避けるに越したことは無いのだ。

「なに運んできたの?」
「ん? 主に食糧だよ。それと石鹸、油、薪に衣類、あとは食器に薬に、それと二級酒」
限りなく自力で生きている私からしたら信じられないくらい手厚い保護だけど、飼い殺しのような保護となにも与えられない自由だったら、私は自由を選ぶし、そっちの方が好きな生き方だ。だって食べ物も酒も金も、いざとなったら奪えばいいもん。それでもちょっと羨ましさのような気持ちは芽生えてしまうし、保護されたがる病人の気持ちもわかる。
ちなみに手厚い保護に憧れて、転生者を詐称するろくでなしな人も時々いるのだとか。だろうね、人間は隙あらば楽したい生き物だから。

私も食べても食べても減らない丼とか飲んでも飲んでも減らない酒樽を手に入れた暁には、モフモフたちに囲まれた夢のような場所で、毎日食って飲んで撫でて眠るだけの生活をしたい。

「おらぁ、転生者ども! 物資持ってきてやったぞ!」
輸送隊のひとりが怒鳴り声を上げる。労働者は働く者だから働かざる者に厳しい。警戒心を抱いて武器を手にしたまま、村の中にいる転生者たちと対峙する。
輸送隊の警戒もわからなくもない。日々働きもせず、意味不明な妄想を口走る集団なんて、日々真っ当かどうかはわからないけど、日々汗水たらして働く彼らからしたら得体の知れない異常者の集団でしかないのだ。しかも病気と判断されているから、うつったらどうしよう、という恐怖も混じっているのかもしれない。
そして転生者たちも彼らを怖がっているのか、中々姿を現さない。たまにやってきては怒鳴りつける武装した集団なんて、そもそも恐怖の対象でしかない。
臆病者たちがお互いに怖がっているのだ。

「この仕事、あんまり好きじゃないんだよねー」
ヤーブロッコが小さくかろうじて聞こえるように耳打ちしてくる。防毒マスク越しでは表情はわからないけど、物腰や立ち振る舞いからすると彼は温厚そうな類、あまり殺伐とした雰囲気の仕事は好みじゃないみたい。
それに、
「ヤミーちゃん、彼らが転生者だよ」
「ふーん」
転生者たちの持つ異様な雰囲気は、無関係な私にも居心地の悪さを感じさせる異様さを漂わせている。
揃いも揃って無気力な顔、目は虚ろで手足は細く、顔から腹と尻にかけて贅肉を纏わりつかせて、それなのに吹けば飛ぶような体幹の悪さは体を左右どちらかに傾かせている。
傾かせているだけなら立っているだけまだマシで、小屋から出てきて早々に地面に座り込み、だらしなく背中を丸めているのが大多数。
中には変な色の煙が出る葉っぱを燃やして、焦点の合わない目でぼーっと遠くを眺めてたりして、全体的に生気を感じない異様な集団と化している。
おまけに話している内容は、“すまほ”だの“こんびに”だの“えすえぬえす”だのといった意味不明な単語がいくつも並ぶ夢物語みたいなものばかりで、その話をしている瞬間だけ少し目に生気が宿る。なのに雁首揃えてどいつもこいつも、肝心の高度な文明がどうやって出来ているのか説明できないから、まったく役に立たない始末。

例えるならば蘇った死体、ゾンビやその類の生き物。それの死んでないやつ。

「ねえ、転生者ってみんな、ああなの?」
「うーん。生活に馴染める元気な人は、そもそも隔離する必要が無いからね。要するにここは社会不適合者の、その中でもさらに不適合な連中の吹き溜まりってこと。まあ、冒険者も社会不適合者ばっかりだけどね」
クアック・サルバーがせめて明るく振る舞おうと、いつもより声を1段階高く発する。嘴でくぐもってるせいでわかりにくいけど。
「せめて自分の身くらい自分で守ってくれたら、こっちも楽なんだけどねー」
これは輸送隊の一員。さっきは転生者に怒鳴っていたけど、私たちには温厚で気の良さそうな顔を見せる。どうやらさっきのは得体の知れない相手用の振る舞いだったみたい。
それもそうだ。ずっと苛々して過ごしてたら、時間が経つだけで血管が切れて死んでしまいそうだもん。

「君、ヤミーちゃんだっけ? 噂は聞いてるよ、突如として現れて、初冒険の前にいきなりネームドを退治した超有望株とかどうとか」
確かにネームドと称される怪物はすでに何体か倒している。荒れ狂う剛腕と呼ばれていた巨大熊に、石塔を守る怪鳥と呼ばれる巨大な鶏、他にもここまでの道中で4本腕の大猿とか双頭の大蛇とか、あと巨大な蟹の足も千切って食べた。特に蟹が美味しかったので、また蟹が現れてくれないかなって思ってる。
「そうだ、ヤミーちゃん。君って北の蛮族村から来たんだろ? なにかこう、どんなボンクラでも血眼になって戦うようになる方法とかある?」
「あるよ」
そういうのも無いわけではない。ただ、ちょっと加減を間違えたら命を落したり、一生後悔するような怪我を負ってしまうけど。あと人に教えたことは一度もないから、上手くいくかどうか自信もない。

「じゃあさ、悪いんだけど、ちょっとあいつらを適当に鍛えてやってくれないか? もちろん金は出すから」


~ ~ ~ ~ ~ ~


転生者特訓報告:記録者ヤーブロッコ

そういうわけで急遽始まったのが、ヤミーちゃんの出身地ノルドヘイムに伝わる地獄の鍛錬法、通称ノルドの血だ。
内容は至極簡単、ヤミーちゃんが転生者を襲撃していくから、ひたすら逃げて、防いで、反撃して凌ぎ、数日間五体満足で乗り切るというもの。

一日目。
説明を受けた転生者たちは、それまでと同様に無気力でぼーっと聞き流すだけだったが、最初のひとりが耳を引き千切られた時点で目を覚まし、蟻の子を散らすように逃げ始めた。
ヤミーちゃんが言うには、最初は逃げるが正解だそうで、一番大事なのはなにがなんでも生き延びること。その上で逃げられないと判断した時に、きちんと戦えるようになるのがノルドの血の最終目標。
「本当は体に生肉を括りつけて熊や虎の生息地に放り込むんだけど、今回は熊や虎は私が代わりにやるから」
ヤミーちゃんの故郷は相当に狂っているらしい。住民のほとんどが狂戦士となる土地だけあって、僕たちが持っている常識は一切通用しないようだ。

ヤミーちゃんは焚き火用の火掻き棒を握り、散り散りになった転生者の内の、最も足が遅い者に狙いを定めて追いかけ、ただでさえ遅い足に向けて棒の先端を振り下ろし、一撃で皮膚を裂いて肉を抉り、血が飛び散る程度に痛めつけたと思ったら、今度は村の真ん中に縄で縛って逆さ吊りにした。
要するに見せしめだ。ただ痛いだけでは済まないぞということを形で示し、同時に放置しておくと死んでしまうため、救いたければ勇気を出せと導いたのだ。
ヤミーちゃんはその後も、小屋に押し入っては命乞いする転生者を容赦なく一撃を加えて回り、数人の転生者を同じように逆さ吊りにして、そいつらの前に腰を下ろして陣取り、挑んでくる者を日が暮れるまで待った。

当然他人の命程度で勇気を振り絞れるくらいなら、初めからこんな場所には連れてこられない。そんな勇敢な者は現れず、ヤミーちゃんは真っ暗闇の村の中を足音を消して静かに動き、注意深く目を凝らして見守っていた僕たちの視界からも姿を消した。
まるで闇夜に潜む獣のように、音もなく疲労と恐怖で眠りに陥りそうになる転生者を見つけては手足に一撃し、石壁を越えて逃亡を図ろうとする者や逃げることすら諦めた者は念入りに手足を逆に折った。生きるための逃走は許す、しかし逃げるための逃亡は決して許さない。それをまたしてもわかりやすい形で示したのだ。
さらに小屋に火を放ち、恐怖心を極限まで煽ったところで
「ヴェルゥロルォォォ!」
と形容しがたい化け物みたいな叫び声を発して、村中に絶望を轟かせたのだった。

この村に転生者はおおよそ100人近く存在しているが、果たして数日経過した時に何人生き残っているのだろう、そう思わせるには十分な一日目だった。


二日目。
ノルドの血に休息など存在しない。
逆さ吊りにされていた連中は夜明け前に解放されて、手に石や棒を握らされた上で、救出に来なかった連中への復讐に駆り出された。今日から転生者を襲うのは獣じみた野生を持った少女だけではない。自分たちが見捨てた数名の男女、その深い絶望と怒りも敵に回ったのだ。
復讐者には新たに転生者を5人狩ったら攻撃しない、という条件が与えられた。この5人という数が絶妙だ。諦めるには多過ぎず、簡単に達成するには多過ぎる。でも死に物狂いで挑めばどうにか希望を捨てずにいられる数だ。

そんな中、輸送隊や僕に対して交渉に出る者が現われ始めた。
なんでもするから逃がして欲しいという。しかし丸腰同然で、しかも密林の中を歩いた経験のない負傷者を外に出すということは、森の中を徘徊する獣たちに餌を差し出すようなものだ。
頑張れ、戦え。僕たちが返せる言葉はそれくらいだ。
今日も村中で悲鳴と嗚咽が響き続ける。村の真ん中で吊るされる人数も増えるが、不思議と今のところ怪我での死者は出ていない。あくまで怪我でのだけど。


三日目。
追い込まれ過ぎて発狂した転生者の中から、ヤミーちゃんに反撃を試みるものが現れた。
普通はそこで多少の手加減をして、やれば出来るじゃないか、といった言葉を掛けてあげるのだけど、ノルドの蛮族にそんな常識は無い。
逃げようが逆らおうが容赦なく殴られる。
しかし更なる絶望に覆われた中だからこそ、本当の希望というものが見えてくるのかもしれない。

ちなみに僕は今、ものすごく適当に報告書を書いている。


四日目から六日目。
一言で現すと地獄。自分が転生者じゃなくてよかったと、つくづく実感してしまう。
それにしてもヤミーちゃんは強力だ。小柄な体格を抜群の反射神経と柔軟性で補い、そこに野生と闘争心と鍛錬をこれでもかと上乗せして、常人離れした攻撃力を発揮している。
徹頭徹尾を強さに全振りした能力、是が非でも仲間にした逸材だ。


七日目。
地獄の一週間が終わった。
毎分毎秒寝起きのような覇気のなかった転生者たちは、まるで別人となった。眠ることも休むことも許されず、食糧を与えられることもない極限の状況下で、彼らは人間を捨てた。
同じ異世界からやってきたらしい仲間同士で襲い合い、飢餓と渇きに耐えきれずに血と肉を奪い合い、過去の妄想のような暮らしなんてすっかり忘れて、人間を捨てて一端の戦士となった。
彼らの目からはもう涙は零れない、彼らの口からはもう妄想は語られない。というより人間の言葉すら話さなくなったから、知能が残っているのかも正気を保っているのかもわからない。
ただ彼らはそこら辺の木の棒や椅子を手に、目の前に現れた生き物を本能のまま殴りつけるだけの戦士となったのだ。

ちなみに生存者はなんと両手足の指で数えられる程もいた。これが多いのか少ないのかは、僕はあえて語らないでおく。


~ ~ ~ ~ ~ ~


「というわけで、とりあえず鍛えてみたよ」

私は笑顔を浮かべて、元々転生者用に運び込まれた食糧を食べている。あんなに大暴れしたのに、よく食事が喉を通るものだとでも言いたげな顔をヤーブロッコや輸送隊の連中がしてるけど、私は私で何日もろくに寝ずに鍛えて回ったのだ。
お腹だって空いちゃうし、おいしいごはんに飢えてしまうのだ。
ところで私以上に食べれてもないし、眠れてもいない転生者たちだけど、猛犬に使うような口輪と手足の枷を嵌められて、うーうーと唸り声を上げている。
彼らも立派な戦士だ。ノルドヘイムだとまだまだ半人前以下だけど。

「よし、お前ら! これから好きに暮らせ!」
半人前とはいえ戦士となった彼らを森の奥へと蹴り出し、血と闘争に飢えた頼りがいちょっぴりな背中を見送る。
彼らはもう前世がどうだったとか、過酷な労働に耐えてきたんだから異世界でくらい楽したいとか、俺は有名ななんたらだったんだとか、なんで特別な力が宿ってないんだ詐欺じゃないかとか、来世にこそ期待するんだとか、そんな寝言は二度と口にしない。
彼らが口にするのは、血を求める戦士の雄叫びだけなのだ。
彼らはもう後ろを振り返らない。前へ前へと道を切り拓き、いずれは更に腕を磨いて、その名を轟かせる冒険者となるだろう。そうなったら短い間だけど鍛えてあげた私も鼻が高いというものなのだ。

見送って随分姿が小さくなった転生者たちが、巨大な茸の怪物に襲われている。
猛毒を含んだ胞子に全身を蝕まれ、退くことを知らない無謀さは触手のような腕で真正面から頭を砕かれ、瞬く間に全滅へと追い込まれた。
ちなみにあの茸の化け物、密林の帽子屋の異名を持つ怪物で、範囲の広い猛毒の胞子と骨も内臓もなく弱点が見当たらない構造を持ち、ちょっと鍛えたくらいの素人が勝てる相手ではないのだとか。
でも彼らは立派に挑んで、その命を燃やして散らせたのだ。きっと今頃は、またどこか異世界とやらに転生でもしてるのかもしれない。

私たちは静かに手を合わせて、茸の怪物に見つからないように、そっと廃村から立ち去ったのだった。


あとヤーブロッコが仲間に加わった。今後とも仲良くしようね。


(続く)


<今回の新規加入冒険者>

ヤーブロッコ
性別:男 年齢:23歳 職業:どぶさらい

【クラス解説】
▷都市部で下水やドブ川を漁って暮らす回収屋。暗くて視界が悪い中での宝探しもお手の物。

【クラススキル】
☆泥ひばりの浚え歌
➡移動時に素材やアイテムを発見する、特に歌う必要はない

【主要スキル】
・整頓術
➡バックパックをぎちぎちに詰めるのも技術
・貪欲なる者
➡しつこいくらいに掘って素材をたくさん集めよう
・泥中の蓮
➡泥を浚い続けた結果、レアアイテムを見つける能力を得た

【装備】
・四突万能(武器・斧)
⇨歯が4つに分かれた大型の鍬、どぶさらいから畑仕事まで色々と万能
・防毒マスク(頭装備)
⇨毒や悪臭を防ぐマスク、臭いのは仕事の天敵


ー ー ー ー ー ー


というわけでモグリール第10話です。
いわゆる異世界転生回です。でも現代社会のしかも先進国から異世界に行った人がそうそう頑張れるとは思えないし、多分不便さと体力的な大変さとで、来世に期待しちゃうと思うのでこんな形になりました。
ものすごいアンチテーゼですね。アンチテーゼで合ってるのかわかんないですけど。

あとヤーブロッコが雑な感じで仲間になりました。
パーティー4人もいたら1人くらいは雑に加わるもんです。気づいたらいつの間にか加わってた枠、それがヤーブロッコ君です。
でも優秀なのでいいのです。

そろそろ町に戻れそうだけど、私の匙加減なのでわかりません。ぬーん。