見出し画像

棚貸し本屋の店番日記 #12 水道管のこと

ビールが呑める大人の図書室。

夢オチの可能性を残しつつ、数年後の実現を目指しながら、西日暮里でシェア型書店の棚をお借りしています。

前回の投稿では物件の契約に向け、初めての顔出しまでしてこんなことを書いていました。

不定期に連載しているこのマガジン、次回のタイトルが
「契約のこと」
になっているか、それとも
「缶チューハイのこと」
になっているかで、どんな結果かお分かり頂けると思います。
もしも「闇バイトのこと」になっていたら、確実に我を失っていますので、全力で止めて頂きますよう、よろしくお願い致します。

「棚貸し本屋の店番日記 #11 お金のこと」より

それが「水道管のこと」って、一体何じゃいって話ですよね。

果たして無事に契約出来たのか、条件が合わずに缶チューハイをあおっているのか、資金繰りに困って年末年始を闇バイトに費やしているのか。


結論から申し上げると、契約に至りませんでした。


何故なら、物件の水道管が破裂してしまったからです。


それも、甲子園常連校もびっくりの「1ヶ月ぶり2回目」ということで、飲食店として貸し出すと迷惑を掛けてしまうという、オーナーさんの判断です。

昨日、不動産屋とオーナーさんが契約のための最終打合せをしている時に異音がして、水が吹き出したとのこと。築50年の年季が入った物件で、いずれは取り壊しの話もあり、建物内の管も破損する可能性がある中では貸し出しも、これ以上の修繕も行えないというお話でした。

頭では理解は出来ますが、開業に向けて準備を進めてきた関係者へのご迷惑を考えると、申し訳なくていたたまれません。

実は先週ぐらいから「契約のこと」ってタイトルで、今回の記事を書いていたんですよね。年内最後の投稿で来年オープンのお知らせをして、さわかみ投信さんの企画「#かなえたい夢」のタグを付ける予定で。

オーナーさんに内諾を頂き、建築事務所さんには設計を始めてもらい、ご紹介頂いたコーディネーターさんとクラファンの準備も進め、デザイナーの友人にお店のロゴまで依頼していました。
西日暮里BOOK APARTMENTの忘年会でも、棚主さんたちから応援頂き、来店や宣伝のお約束まで頂いていたというのに。

仕事納めの夕方の慌ただしい時間でしたが、まずはお仕事をお願いしていた皆さんに連絡を取り、現状をお伝えしました。年明けにまた今後の調整です。

今朝目が覚めて、どうにもならない感情を抱えたまま、現場を見てきました。
手前の水が染み出しているところが今回の破裂箇所、奥が前回と推察。静かな朝の住宅街、耳を澄ませば水の漏れ出る音が絶え間なく流れております。

徒労を感じながら、しばらくその場に佇んでいました。

忙しい日々も、2月下旬には念願だった本に囲まれた場所が完成し、知り合った皆さんと本にまつわるイベントを開く様子を想像して、乗り越えてきたんですが。
昨夜は混乱といつも以上に呑んだお酒で気づきませんでしたが、結構ショックを受けていたみたいです。

だけど不思議なことに、諦める気にはならないんですよね。

今回の出来事を踏まえ、次に向けて動き始めている自分がいます。
ビールが呑める大人の図書室を作り、本好きの人たちが交流する様子を眺め、閉店後、一人ビールを呑みながら読書をするイメージが消えないのは、きっとこれが本当にかなえたい夢だからでしょう。

それに、濡れた地面を眺めながら
「水道管だけに契約が流れて、破裂だけに話が御破算」
なんて思うのですから、案外と図太い人間でした。
つまりは「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」って話です。

今年もお世話になりました。
年末年始は、物件探しと計画の練り直しに時間を充てる予定です。
2024年も引き続き、開業を目指して行きつ戻りつする様子にお付き合いくださいませ。


頂いたサポートで酒を呑み、それを新たな記事にすることで「循環型の社会」を実現します。 そんなほろ酔いで優しい世界、好事家の篤志をお待ちしています。