医療を信じていたからこそ、すがった

実家を失い、職を失った私は、夫を失うのが、ひたすら怖かったんです。

私は医療を信じていました。

検索してたどり着いた

『がん治る』の情報には、必ず

医師のコメントがついていました。

「医師が言うんだ。間違っていない」

『効くなら標準治療になっている』という主治医。

標準治療だって、昔は研究だったんでしょ?

「あの人は私たちをデータで、夫を切り捨てたんだ。」

世の中には、優しい、助けようとする医師がいるじゃないか!

効かないと知りながら、ビジネスとして医療を施す人がいるなんて思わなかったんです。

つまり、私は医療を信じていたからこそ

私は広告を希望に繋がる蜘蛛の糸だと思ったのです。


夫は研究者だったので、こんな情報はおかしいと思っていました。

でも、彼は

死にゆく自分が出来ることは、遺していく家族の

思うことを受け入れ、後悔させないことだと

私の意見を受け入れたのでした。

これは、後に、夫の残したブログで知ることになります。

同時に、私には厚意からの届け物が殺到しました。

サプリメント、がんが消えるという本。

後から、それは、その販売のアルバイトをしていたり、たまたま書店でみつけて、その人も信じて手に入れたものだったとわかったのだけれど。

その時、私は『耳なし芳一』の話を思い出しました。

(どれか一つでも欠けたら夫は死んでしまう)

目につくものは、全て、這い上がるための蜘蛛の糸に思えました。

でも、本当は、どこかでわかっていたんだとも思うのです。

孤独だった。

辛かった。

だから、優しい嘘でも信じたかった。

愚かさは夫を弱らせていくことも、視界に入らなくさせました。

これは、夫婦の亀裂にも繋がっていったのでした。


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(つづく)

全国胃がんキャラバン、多くの人にがん情報を届けるグリーンルーペアクションに挑戦しています。藁をもすがるからこそ、根拠のある情報が必要なのだと思い、頑張っています。