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マミの東京上京物語#5「東京は眩しくて」

無印にすがりつくように入った私。

先ほどのニトリでは2時間以上も転がり続けた・・・・・・。
その甲斐があり、ベッドの硬さには感覚が研ぎ澄まされたような気分でした。
今回は軽快にゴロゴロと転がれる気がする。

自分史上最高のベッドを見つけるため、精一杯転がろう!!
銀座の街で干からびそうになりながらも、やっとここまで歩いて来た。
今度こそ優しく私を包んでくれる葉っぱに出会いたい・・・・・・!

そしてゴロゴロと転がり続けたイモ虫。
たくさん転がった末に、最高の葉っぱにたどり着くことができたのでした。

よし、あとは買うだけだ。
でも在庫がなかったらどうしよう。
そのときは冷たく硬い床で、サナギになる運命を受け止めるしかない・・・・・・。

そんなことを考えながら、通りかかった店員さんに声をかけました。
そのとき気がついたのでした。
人と話すのはいつぶりだろうということに。

久々に自分の声を聞いて思い出したのです。
人間だったことを。
本当にイモ虫になるところだった・・・・・・・。

「あの、このベッドを・・・。このベッドをください。どうしてもこのベッドが欲しいんです」と人間に戻るため精一杯声を出しました。

そして一生懸命店員さんへ懇願したのでした。

あまりにも必死な私に驚きながらも、笑顔で「すぐに在庫を確認しますね」と確認をしてくれた店員さん。

少し待っていると、「大丈夫ですよ!数日以内に発送が可能です」とそのまま早急に購入の手続きをしてくれたのです。

なんて頼もしいんだ。
そのときの店員さんは神様に見えました。
店員さんの笑顔が眩しすぎて、またもや干からびそうになる私。

このベッドが買えなかったら硬く冷たい床で、サナギのまま固まるところだった・・・。
私はこの暖かな布団に包まれ、サナギから蝶になれるかもしれない。

と完全に人間へ戻りきれていませんでしたが、
あまりのうれしさに危うく店員さんの手を握るところでした。
危ない、危ない・・・・・・。

ベッドを購入し、大満足していた私。

本当によかった・・・・・・。
冷たいと思っていた東京だったけど、そんなことはないのかもしれない。

東京はいいところなのかもしれない・・・・・・!!

「・・・枕や布団カバーは一緒にご覧になりますか?」
店員さんに声をハッとした私。

すっかり忘れていた。
危ないところだった。

枕やカバーがないなんて・・・・・・。
まるで愛がない、腕まくらの中で寝るようなものじゃないか。

というわけで、さっそく枕や布団カバーのフロアへ案内してもらった私。
このときはまだ、これから購入する羽根枕の恐ろしさを知る由もないのでした・・・・・・。

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