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「再利用バッグ」は再利用されてこそ、その目的を果たす。環境保全のために私たちが出来ることは、私たち自身の習慣を変えることなのかもしれない。(つまり、買うなよ、溜めるなよ、と言う話)

英スーパーマーケット、ウエイトローズが9月27日より、「Bags for Life」の価格を20ペンスから50ペンス(約75円)に値上げすると発表した。「Bags for Life」とは、スーパーマーケットなどの小売店で購入できる、少し厚めのプラスティック製買い物袋で、弱くなったり破れたりして使用できなくなった場合には無料で交換してもらえる。一度きりの使い捨てではなく、繰り返し使うことに意義があるのだが、買い物袋を忘れてしまった場合や予定に反して買い物をせざるを得なくなった時などは、その小売店でその都度バッグを購入することになる。グリーンピースの調査によると、2019年、一家庭平均して年間57個のバッグを購入しており、これは週に1個以上を買ってしまっている計算になる。2015年、英政府の決議決定により、プラスティックバッグは有料化されることになり、質の悪い薄ペラのプラスティックバッグに5ペンスが課されることとなった。その後、小売店は、使い捨てバッグ自体の販売を止め、繰り返し使うことを推奨するため、10~30ペンスの「Bags for Life」を導入した。ところが実際は、このバッグを使い捨てにしているケースも頻発しており、その場合の環境汚染へのインパクトは使い捨てバッグよりもさらに劣悪である。グリーンピースにによると、2019年には「Bags for Life」の売り上げが15億8千万枚にも上り、2017年に比べると65%上昇しているという。

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写真はサンデータイムスの消費者問題を担当する記者ルイーズ・エクリースと彼女の家に溜まったショッピングバッグ。


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2007年に英デザイナー、アーニャ・ハインドマーチが発表した「I am not a Plastic Bag」は1つがリサイクルボトル31個分で作られている。英スーパーマーケット、セインズベリーが5ポンドで販売し、セレブリティなどが使いだしたことから一気に脚光を浴びた。


では、どのショッピングバッグを繰り返し使用するのが環境に優しいのだろうか?そのバッグの原材料や生産過程でのエネルギー排出量などを計算した方法論を用いて、Life Cycle Analysis が分析した結果を基に、英サンデータイムスがいくつかのバッグを5段階評価で発表している。ただ、これらの分析は、単純比較できるものではないため(例えば、その生産過程にどれくらいのエネルギーを必要とするか、使用後にどれくらいが埋立地に送られることになるのか、などすべてを考慮した場合、結果が違ってくる場合もある)、あくまでも参考にする程度の知識として心にとどめておくとよいと思う。


布製のバッグ 3/5

2018年のデンマークの調査によると、コットン製のトートバッグはその生産過程(エネルギーや労働力など)を考慮に入れるとなんと7100は使用しないと元は取れないという。しかしこれには議論の余地があり、イギリスの調査では、310回の使用でトントンという。コットンバッグは頑丈で、洗えるし、畳めばハンドバッグにも収納できるので忘れる心配がない。買うなら、無漂白でプリントの少ないコットンキャンバスバッグがベスト。

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記事によると、買うなら、無漂白でプリントの少ないコットンキャンバスバッグがベストとのこと。それを鑑みると、この「メルローズ&モーガン」のコットンキャンバスバッグは確実に勝者。

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私の持っている布製バッグは、どうしてもバンドモノに寄りがち。ライブに行った記念で買ってしまうので、必要以上に持っているのは認めざるを得ない。ただ、使用は試みているので、無駄ではない(という言い訳、汗)。



使い捨てプラスティックバッグ 0/5

60か国がポリエチレン製の「ベストバッグ(その形からこの呼び方をされる)」の使用を禁止しているという。イギリスはこの限りではないが、ほとんどのスーパーマーケットでは販売自体を停止している。ゴミ箱用のビニール袋に「再利用」したとしても、それが他のゴミと埋立地に行った場合には、分解されるまでに何百年も地中に残ることを忘れてはならない。


Bags for Life 3/5

前述の使い捨てプラスティックバッグと異なり、Bags for Lifeはもっと厚みがあり頑丈である。つまりポリプロピレンやオイルをベースとしたポリマー、そして耐久性を高めるために、持ち手部分にはラミネート加工などが施されている場合がある。何度も繰り返し使うことを前提に作られているので(デンマークの調査では37回の使用で元がとれるとのこと)、それを怠った場合には、環境へのインパクトは絶大なものとなる。出来るだけデザインのシンプルなものを選ぶことにより、多少の汚染を防ぐことはできるが、購入自体を控えるに越したことはない。プラスティック製造業者や小売りの一部は、このプラスティックバッグのライフサイクルCo2効果はより均一な再利用を形作るための規制として2023年までに改善されると言うが、それまで待つ必要があるだろうか。

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英スーパーマーケット、センズベリーのBags for Life。何度も使用しているので、皺が寄っているが、まだまだ使える。ただ、全面オレンジ色ということを含めても、環境には優しいとは言えない。


ジュートまたはサイザルの麻製バッグ 5/5

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「フォートナム&メイソン」のジュートバッグ。頑丈でマチが大きいのでたくさん入るが、デザインが凝っているので(確かに可愛い)、ここで評価されている5段階満点には及ばないかもしれない。

肌さわりの点では落ちるが、天然素材を使用したこのバッグは化石燃料フリーかつ生物分解可能な物質を原料としている。麻やサイザルは育てやすく、生産過程も天日干し後、繊維に分け、俵にするという作業で、サイザル工場では500人以上の雇用も可能にすることができる。カーボン・フットプリントを減らすだけでなく、生産過程に関わる全ての人々の生計をサポートするという意味でも真のサスティナビリティと言えるだろう。


紙製バッグ 3/5

シンガポールのナンヤン大学の調査によると、紙製のバッグはプラスティックバッグを繰り返し50回使うよりも環境に悪いという結果をもたらした。しかしこの論争には、その国の持つ古紙リサイクルシステムに大きく起因するところがある、という指摘がある。
例えばイギリスにおいては紙のリサイクルには比較的よいシステムが整っているため、その限りではないのだという。
英スーパーマーケットのモリソンズは全てのプラスティックバッグを排除し、代わりに30ペンスの「繰り返し使える紙バッグ」を導入した。この紙バッグはウェールズの「サステナビリティに運営されている森林」から作られており、上限16㎏まで運ぶことができるという。モリソンズは、この紙バッグのライフサイクルはプラスティックバッグよりも優れているとシェフィールド大学のお墨付きを得た、と述べている(シェフィールド大学はこれに関してコメントを発表していない)。

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この結果を見て、少し驚いたのは布製のバッグの評価がイマイチだったこと。私自身、少なくとも2つは折りたたんでハンドバッグの中に入れ持ち歩いているが、汚れにくい、かつデザイン重視で選んでいるので、上記の理由でそこまで環境に優しいとは言えないかもしれない。

私個人では、グローサリーショッピングでショッピングバッグを忘れることもなく、プラスティック製のバッグを購入することは全く無くなったので、慣れれば出来るもんだよと思うのだが、夫や子供は未だにBags for Lifeで買い物を持ち帰ることがある。もちろんそれは、私がその後幾度となく使うことになるのだが、もう思い切りプラスティックバッグの販売自体を辞めたらいいのでは、と思う。

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ウエイトローズが週刊で発行する「ウイークエンド」紙に記載された、同社エグゼクティブ・ダイレクター、ジェームス・ベイリーのステートメント。「我々の新しいバッグを買わないでください」というパワフルな見出しが目を引く。要約すると、「弊社の10ペンスのBag for Lifeは、当初繰り返し使われることを目的に作られましたが、これが現在使い捨て状態になり、私たちの地球にダメージを与えるというものになってしまいました。そこで、環境にもお客様にもより良いオファーとして、新しい50ペンスの再利用可能なバッグを導入することにしたのです。現在のBag for Lifeの2倍の耐久性を備え、このバッグ自体をリサイクル可能とし、また100%リサイクルの原料を用いて生産されているため、埋立地に行くプラスティックごみを少しでも減らすことができると考えています。この新しいバッグは9月27日より導入されますが、皆さま、どうぞ自前バッグをご持参ください。私たちはこのバッグを買って欲しくないのです。我々の地球を守るために、ベストな方法を取り入れ共に最善を尽くしていきましょう」と書かれている。

環境団体Green Alliance によると、(常に自前のショッピングバッグを持ち歩く、プラスティックバッグの購入自体を辞めるなど)実際に人々の行動に変化を与えるにはこの「Bags for Life」の値段を70ペンスにまで上げる必要があるという。しかし、バッグの値段云々よりも、つまるところ、消費者である私たちの心掛けが一番重要なのでは、と思うのである。年間57個もバッグを購入しなくてもよいように、とにかくバッグを忘れないという単純な習慣再利用を目的としたバッグは再利用されてこそ、その目的を果たす、ということを常に念頭におくことが大事なのだと思う。

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冒頭のアイキャッチ画像(タイムス紙)にもあるが、現在撮影中のセックスアンドシティのリブート版でも主演女優たちがリサイクルバッグを使用しているシーンがキャッチされている。

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