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これからを生き抜く「共に創る」を学ぶ場所としての習い事

「プロのダンサーになるの?」保育園の年長さんから8年間ジャズダンスを続けてきて、娘のことではここに一番時間とお金をかけている。でも、別にプロにしたいわけではないし、今のところ本人もそのつもりはない。じゃあ、そんなに労力かけて将来なんの役に立つの?中2ともなると、同じお金なら塾の方がよくない?という声も聞こえてきそうだけれど、キャリアにつながることじゃないと意味ないという考えは窮屈すぎる。8月1日の発表会を見て、改めて感動し、続けてよかったを実感したので、「習い事」を再考したい。

小学校1年生〜大人までのエンターテイメント集団

習い事の発表会というと、自分の子や知り合いの子がいるから見られるもので、途中眠くなってしまうという人もいるのではないだろうか。そんなつもりでスタジオA(神奈川県逗子市)の発表会に行くと大抵の人は驚く。発表会が開かれるホールに置いてあるチラシを見た人が、知り合いもいないのに見に来て、「こんなクオリティの高いものを見られるとは思わなかった(しかも無料で!)」というアンケートを残してくれることも多い。そんなことで、毎年見に来る常連さんもいるようだ。

それは、このスタジオの公演が、「こんなにできるようになりました」という発表・自己満足の舞台ではなく、来たお客さんを本気で楽しませる、そんな気持ちで作られているからだと思う。

今年も、ジャズっぽいスタイリッシュなナンバーから、コンクールの入選作品、アラジン、オリバー、雨に唄えば等のミュージカルコーナー、それぞれの味を出し切ったソロ作品まで、「見せる(魅せる)」ことを前提にした構成だ。全25曲1時間30分のがあっと言う間。途中で席を立つつもりだった人が結局最後までいたという声もよく聞く。

もちろん、プロではない。でも、フィナーレで出演者15人全員が出てきたとき、習い事の発表会というより、1つのエンターテイメント集団の公演を観に来たような感じを受けた。

舞台の裏側では 〜先生の力〜

このスタジオが習い事の域を超えた舞台を作り上げられるには、その理由がある、と思っている。1つは、主宰の福田敦子先生が夜のヒットスタジオのレギュラーを初めとして、実際にエンタメ業界に身をおいていたからだ。発表会は公共の施設での公演だけれど、監督・照明・音響のスタッフは別途に契約。衣装もありものを使うのでなく、美大出身でもある福田先生がデザインし、衣装スタッフが作成する。今年の演目のオリバーなんて、小道具も気合が入っていて、1曲だけのためのものなんて勿体ないほど。楽屋にはしっかりヘアメイクさんもいて、子どもたちは、そうしたスタッフの人たちとの関わり方も学んでいる。

環境だけの問題じゃない。福田先生は、舞台に参加するメンバーの技術レベル・個性・仲間同士の力学や、踊ることを通してその子が成長することを考えて、でも観ている人が楽しいように演目を考えている。

「習い事にそこまでやるの?」に対して、先生は「だって、それじゃ面白くないじゃない」という。その先生の姿勢を象徴するものが、ダンスの小道具として使われたこの絵本の装丁。


これ、すごくないですか?子どもたちが絵本を開いて「わぁ」っと驚くシーンがあったのだけど、本当にそんな気持ちになれるようにと、福田先生が全部手書き!したもの。客席からはほとんど見えない細部にここまで手をかけられるのって、親としてを超えて人として感動しかない。

先生が生徒に舞台に真摯に向き合っている姿勢は、メンバーにも伝わっていて、その信頼は絶大。それでいて、真面目なばかりじゃなくて、結構面白い人なんだよな。娘にとっては、横にいてホッとする第2のお母さんだ。

舞台の裏側では 〜仲間の力〜

現在のスタジオAの生徒は小学1年生〜20代まで。このメンバーが本当に仲がいい。レッスンの時間は年代によって違うけど、発表会やコンクール練習を通して、上が下の面倒をよく見たり、年齢関係なくプライベートでも遊びに行ったりしている。

そんな仲の良さ、仲間を助ける気持ちが舞台にも「まとまり」「一体感」を与えていたようだ。今回の舞台の裏側でも、お互いの出番がわかっている仲間同士で、決めたわけではなくても早着替えを助けたり、足りないところを誰かが自然に助けていたという。

様々な事情で辞めていった仲間も、舞台を観に来たり、裏方を手伝ったり、また復活したりしているのを見ると、この人間関係は本物だ。娘にとっても、このメンバーは、時には家族以上に心を許せる仲間なのだ。

また、この仲間の力を引っ張っていっているのが、先生の2人娘の福田桃奈ちゃん(写真上)と福田真弥ちゃん(写真下)。女優としても活動している2人のプロフェッショナルな姿勢は、確実にみんなを底支えしている。優しいことばかり言ってくれるわけではないけれど(笑)、信頼して話を聞いている。

これからを生き抜く「共に作る」を学ぶ場所

「将来プロになるわけでもないのに、なんでジャズダンス(習い事)に時間とお金をかけるの?」という問いに戻ろう。そういう問いが出てくる元は、未来を予測できるもの(例えば高学歴なら良い会社に入れる)とし、何が役に立つか立たないか選別しようという気持ちが根底にあるからではないのか?

しかし、時代はどんどん変わっていて、「未来は予測するものではなく、創造するもの」という声も聞かれる。「好きなものは趣味にしておいた方が良い」という時代から、「好きなことじゃないと仕事にならない」という流れに変わりつつもある。今、親が「これがいい」と思って与えているものが、子どもにとって「間違いなくいい」ものである保証はどこにもない。

OECD教育2030は、こうした変化に対応する「生き延びる力」を発表している。

・新しい価値を創造する力:新しい製品やサービス、新しい社会モデルを他者と協力して産み出す力。適応性、創造性、好奇心、他者をオープンに受け入れる心。
・緊張とジレンマの調整力:平等と自由、自立性と地域利益、変革と継続性など様々な競合する需要間のバランスをとる力。
・責任をとる力:自らの行動の将来の結末を考慮する力、自分の仕事の成果について責任をもって説明できる力、自ら評価できる力。自己効力感、責任感、問題解決能力、適応能力など。

このジャズダンス スタジオの生徒たちは、ここに上げている3つの力のうち、特に「新しい価値を創造する力」を身につけていっていると思う。何もないところから、舞台が形作られるまでのプロセスの1つ1つに生徒が関わっている。演目を踊れるようになるだけでなく、時には衣装や小道具を一緒に作ったり、「ゼロからイチを生み出す」ことを「年齢やバックグラウンドの違う仲間」と成し遂げる。これは、これからの時代を生き抜くために、間違いなく素晴らしい教育の在り方の1つだ。

私は、ただ単純に「娘のやりたい」を全力で応援したいだけだけで、何かつながらなくても全く構わないんだけど、時代背景を考えてもこれは理にかなってると思うんだ。

あとがき:親も仲間になりたい!&仲間募集中

1つのものを目指しながら、和気あいあいと助け合って活動している姿は、本当に楽しそうで、親同士で「あの中に入りたいよねえ」と一緒になる度に言っている。このスタジオに集まる親御さんは、不思議と素敵な方たちばかり。

また、現在、スタジオAでは、年齢、性別問わず、現在仲間を募集中。興味のある方は、私に連絡いただくか、福田先生に直接お問い合わせを!

ジャズダンス スタジオA: 福田敦子:090-8313-8834
HP:http://www.ringringballet.com/jazzdancestudioa.html






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