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俺たちが同じ時代を駆けた証に

運命というものを、たやすく信じられる瞬間がある。

それは突然目の前にやってきて、瞬時に現在過去未来の時間が1本の糸でつながっていくような感覚。

ニューヨークに飛び立つ当日、バタバタと荷造りをしていた。
とはいっても、旅に出るごとに荷物がコンパクトになっていって、スーツケースに詰めるものは少ない。パスポートとクレジットカードと1DAYコンタクトさえあれば、あとはどうにでもなる。

一応、忘れ物がないようにチェック。そのとき、布をかけている本棚の中から懐かしい写真集が顔をのぞかせていた。持っていたことさえすっかり忘れていたけれど、ニューヨークに行くことを決めてからずっと頭に浮かんでいたもの。

それはチェッカーズの「Song for USA」の写真集だった。

私は、子供の頃からチェッカーズのファンだ。
初めてレコードを買ったのも、初めてライブに行ったのもチェッカーズだし、ライターの仕事を始めるきっかけになったのもチェッカーズ。
私の運命的なできごとに、圧倒的な確率で絡んでいる7人。

「Song for USA」は彼らの主演映画のタイトルであり、この写真集は映画の撮影と一緒にニューヨークで撮られてたもの。私にとってはニューヨークといえば最初に浮かぶのが「Song for USA」で、今回の旅でもゆかりの地に行きたいな、とぼんやり考えていた。

この写真集は、そのための大きな手がかりになる。そう思って1ページ1ページチェックしていくと、なにかの像の前で映っている写真を見つけた。これなら見つけられるかも、とケータイで写真を撮り、すぐさま今回一緒に旅をする人にLINEで送る。

すると、ニューヨークに詳しい1人がすぐに像のありかを発見。
今じゃなくてもいいのに、思いつくとすぐ調べたくなる性質を発揮してくれた。ライターの鏡だよ、姉さん。

場所は、バッテリーパークだった。自由の女神が見えるマンハッタンの末端にある公園だ。よし、行こう。ニューヨークには夜に到着。翌日さっそくバッテリーパークにでかけた。

そして見つけた、何かの像。何かは分からないけれど、1986年にあの7人がここにいたという、それだけで尊い場所。

私たちは、さっそくテンション高く撮影を開始。ちょうど夕暮れで、周囲の人たちは海に落ちる夕陽とその先にある自由の女神に夢中だけれど、私たちは何かの像で大はしゃぎ。

広角レンズじゃないし、当時なかった木やビルがあるけれど、間違いなくこの場所だ。すっかり夕陽に染まってしまっているけれど、たしかに同じビルが背景にある。

この映画を見たとき、まさか32年後にこんなことをしているとは想像もつかなかった。行くならもっと早く行くような気がしたし、32年後もチェッカーズのファンであるとは思いもしなかったし。しかも、この場所を調べてくれた姉さんは、チェッカーズのインタビューをずっとしていた人でもある。

これは、運命だ。2018年の今、来るべきして来た場所なんだ。

帰国した翌週に、藤井フミヤのライブに行ってきた。35周年のライブ。
35年の月日はたしかに地続きで、幼かった頃に憧れた場所に行けるようになるだけの時間で、たくさんの楽しみを生み出してくれた存在がそこにいる。

そんな実感を胸に、「運命をいつもありがとう」と、ステージに向かってつぶやいた。

…と、きれいごとのように書いたけど、要するにオタ活って楽しいねという話。


最後まで読んでくれてありがとうございます! 夏は引きこもりたい派です。冬だって引きこもりたい派です。