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台湾のデジタル大臣が身近過ぎて素敵すぎてシビックテック熱が上がった話(day2-2)

(最初に謝りたいのは、私の英語力に課題があるので誤訳をしている部分がある可能性があります。その場合は是非ご教示ください。)

day1とday2-1の記事はこちらから

開催国台湾のデジタル大臣が参加するというので、2階建のメイン会場のキーノートかと思ったら、半分以下の小さな第一会議室でのパネルだったのでびっくりしながら入ったら満員でした。

(後々に聞くと、他のセッションの登壇者が後ろで立ち見だったらしい。)

唐鳳(Audrey Tang )
中学を中退し自学と仕事をするようになり、その後アップルやBenQなどの顧問を務め、g0vの構築にも参画し、オンラインで討論ができるvTaiwanの立ち上げにも貢献し、2016年よりデジタル大臣として入閣している。
「インターネットの神童」「パソコンの天才」と呼ばれていた。

自分の役割は「市民と共に市民のためのソーシャルイノベーションを起こすこと」と掲げるオードリーさんは、入閣するときに3つの約束をしていて、

1つ目は、ロケーションの独立性で、いつでもどこでも働けるようにということでsocial innovatorたちと一緒にデザインして、ダウン症の子たちと色塗りをしたのがこのオフィス(かわいい!)
2つ目は、ボランタリーな共同体でやること。呼びつけられて行くのではなくて、オフィスを水曜日の午前10時から午後10時を開いていて、誰でもこの場所に来てディスカッションを一緒にすることができるようにしている。
3つ目は、徹底的な透明性を持つこと。ロビイストやジャーナリストではなくとも、全ての人に対して議論の内容やデータを公開するようにしている。なので、使ラボにあるものも使ったりイジったりできるし。

前時代的なあらゆる課題に対して政府を引っ張り合って主導権を握ろうとし合うものではなく、様々な角度から関わる人によってコラボレーションを起こすものに変えていきたい。それを経済的にも社会的にも環境的にもいいようにみんなで議論したり共創したりしながらco-ownershipで課題解決していこうとしている。

作ろうとして壊れていくあるいはうまくいかないという過去の結果を振り返って設けたのが、サンドボックスというWEB上の提案の実行化を促進する場所。
提案があったら、それを書いて賛同する人がいればそれをプロボノが協力したりしながらやっていく。例えば駐車場の課題は実際にシェアパーキングとして1月にvTaiwanを経て、4月にSandboxを経て銀行口座やICカードを使えるようにして、年内にはモバイル端末を使って実施できるように進んでいる。

台北に住んでいる人は話に行けるけど、それ以外の地方に住んでいる人にはどうリーチするのかという疑問があったので、それに対しては地方に自分が行ったときに現地のinnovatorと話してライブチャットを実施するようにした。最初は1on1での地域と省の対話だったが、相談が他に及ぶうちに今では12全ての省庁が話す場所になっている。

バーチャルにチームを組むことができるようになっており、今までになかったアイデアが出て来ている。例えば、自動運転やスマートシティみたいなものも。

また、AIも人の知能をうまく集約・融合したりすることに活用している。その感情が正しいのか正しくないのかではなく、あらゆる議題やテーマに対して、どう思うかを可視化することによって、自分の周りの人とどんな共感・違いがあるのかを見てわかるようにしている。

例えば、Lisaさんがフィールドテストに関する質問をしたときに、中にいる人たちがagree/disagreeを押すことで、FBあるいはTwitter上の友人たちとのマップが現れて共鳴具合(レゾナンス)がわかったりする。

いくつかの質問に答えることによってAIが別の質問が用意されていき、クラスタリングすることができるようになったりする。だいたい2−3週間位でこれが出来て、この合意形成の声明(コンセンサスステートメント)はプロジェクト継続の判断、規制を作るときの境界線の参考にしたりする。
面白いのはソーシャルメディアと違ってリプライボタンがないこと。リプライ出来てしまうと好戦的な関わり方を生むが、無いので賛同する人に対しての合意しているという意思表示のみで留まる。

この可視化された結果を見ることで市民が経済・社会・環境に対して
どんな感情を持っているのかわかることが出来て、かつ市民の思いをプロジェクトの過程において反映させることができる。

台湾中を回っていると、すでに地域課題に対してシビックテック的なアプローチで取り組んでいる地域・事例もあり、airboxという取り組みはそれによって機能している。

これは大気汚染の度合いをビジュアライズしている。市民がバルコニーや家の庭は学校に装置をつけて2000箇所で計測しているが、アジアの他国の人たちからはよく「専門家たちの立場を弱化させないのか」と聞いてくる。それに対しては、「全員に表現の自由や対話・発話の集まりがあること自体が本質的な価値で、社会に攻撃するのではなく参画していることが大事。この行為が市民の権力を上げるのではないし、実際に測定器を置く必要があるいけど市民が置けないようなところには自分たちで置いている。
マルチセクトラル(全員参加)なアプローチをとり、政府側からのみオープンデータが届くのではなく、市民側からもデータに参加していることに意味がある。また、アカウントをみんなが持てるので、選挙の前後で数値の書き換えがないようにみんなで写真を撮って集めてログをしていたりすることもある。

また、この仕組み自体もオープンイノベーションなので、台湾だけではなく海外の人たちも自然と広まっていて、契約や同意をとる必要なく学んでデプロイすることが出来ている。

このようなやり方で、集まった環境や気象情報に関するデータを適切な人材に科学的根拠に基づいたデータとして活用してもらおうとも考えていて、年内には実現する予定です。

結論として私が言いたいのは、経済・社会・環境という異なる立場がある中でデータ共有や科学的根拠に基づいた議論をすることで、イノベーションが自発的に生まれてくるようにしていけば国際的な課題も解決していくということ。

そして、AIやらの技術の話をしてきましたが、最後に私が入閣するときの職務記述書に書いた詩を。

When we see “internet of things”, let’s make it an internet of beings.
When we see “virtual reality”, let’s make it a shared reality.
When we see “machine learning”, let’s make it collaborative learning.
When we see “user experience”, let’s make it about human experience.
When we hear “the singularity is near”, let us remember: the Plurality is here.
- Audrey Tang

↓動画もあります(3:3328:-3:49:20)

g0verから話を聞いたりWEBの記事を読んだりしから来ましたが、15分の話を聞いているだけでも完全に感じる、人格者で天才で改革者で弱さを理解できるリーダーなんだなという人でした。

何よりも凄いのが、実際に本当に市民と(私は外国人なので市民ですらないのに)関わって一緒に取り組んでくれるんだということで、day2は人に囲まれていてなかなか声をかけられなったのですがday3に廊下で人と話しているオードリーさんを見つけて、追いかけて話をしに行ったら「uber待たせているからちょっとだけだけどいい?」と言いながらも話を聞いてくれて、名刺を出しながらメールしてと言ってくれ、週明けにはメールをちゃんと返してくれてかつ単発ではなく継続可能な関わり方を提示してくれていることでした。

オープンイノベーションやオープンデータの本質がそうであるように、私たちの課題解決もより多くの人と一緒に、科学的根拠に基づく適切な議論とともに前に進めていきたい所存。SOCIAL FIGHTER AWARD頑張ろう。

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シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。