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ハンドスピナーよりも凄いもの

巷の若いユーチューバーの間でスライムが流行っておる。それの影響か下の子は随分とスライムが好きで、自分でもさっさと作ってしまうほどだ。Beckの新曲のMVにもスライムが永遠と流れる映像が使われておった。スライムの時代がやってきた。
スライムを意識したのは小学校三年生の頃だと思う。一人で飛行機に乗って神奈川のいとこの家に泊まりに行った。春休みで、私は時間を間違えて迎えに来た叔母のせいで酷く怖かったのを覚えている。もうこのまま家に帰れないのではないか、そう思いながら空港にある従業員控室みたいなところで漫画を貸してもらい一人待った。時間に遅れてくるこの叔母は今の私のようだ。その叔母の本棚には母の選ぶ漫画とは少し違う類の漫画が並んでおり、新鮮な気持ちで読んだのを覚えている。本棚に並ぶ叔母が書いたノートの類も盗み読みした。いとこに、これおばちゃんが書いたの?と聞いてみたが彼女はあまり興味がないようだった。
いとこたちは三人兄弟で、一番上の子が私と同級生の女の子で、そのいとこから見せてもらったのが初めてのスライムだった。それは子供会か何かで作ったもので、本当に小さなハートの形の入れ物に入っていた。さわるとフルフルして冷たくて液体なのか個体なのかわからないアメーバみたいな感じの物体だ。いとこたちが作り方を教えてくれた。洗濯糊とホウシャがあれば簡単にできるよ!と。子供ながらに家に帰ったら沢山作ろうとわくわくしたもんだ。
二週間後家に帰り、お小遣いを握りしめ近所のスーパーに行った。そこで難なく洗濯のりは見付けた。しかし、ホウシャがわからない。薬局で買えると言っていたが、そんなところ怖くて行けない。母に相談したが取り合ってもらえなかった。私は途方に暮れた。
洗濯のりを小さな容器に移してみる。何も起こらない。どろどろのまま、放置したら固まってしまった。
今ならググればなんとかなるだろう。しかし、ホウシャというのが正しい材料名なのかも曖昧だ。辞書を引いてもわからなかった。私はあきらめた。
ホウシャ、すなわち硼砂又はホウ砂。英語ではボラックスという。鉱物の一種でアメリカでは沢山産出されており、水に溶けると弱アルカリ性になり洗浄効果がある事から洗剤や、単体として売られており容易に手に入る。数年前にスライムを作ってみようと購入したひと箱は、まだ随分残っており一生分のスライムが作れるかもしれない。
このボラックスの水溶液と、PVAポリビニルアルコールの含まれる糊を混ぜる事で架橋という化学結合が起こりスライムが出来るのであるらしい。よく解らないが、材料を混ぜればとにかくスライムが出来るのだ。
私はよく工作で使う白い木工用ボンドのようなのりを使いスライムを作っていたのだが、それが続くと人間は飽きてしまう。最近のお気に入りは透明のりだ。


100円ショップなどで三本入りのやつが売られており、それを使えば100円で三種類のスライムが作れる。めんどくさがりな私はいちいちボラックスを取り出し混ぜて片付けたりするのが億劫なのであらかじめボラックスの液を作り置きしている。水250㏄にボラックス小さじ一杯を混ぜるだけだ。それを使うのだ。


糊を好きなだけボウルに入れる。大体一チューブとか一ボトルとかそんな感じだろう。それに大体で良いので大さじ一から三の水を入れる。その時に食紅やマイカなどで色を付け、馴染むようにかき混ぜていく。馴染んだらまず大さじ一杯のボラックス液を入れ、ひたすらかき混ぜ様子を見ながらボラックス液を少しずつ足し、かき混ぜる。ちょうどよい硬さになったら混ぜるのを止め手で捏ねる。捏ねる時に手に付くようならボラックス液を手に少しつけ捏ねてみると馴染んでくる。それを繰り返し手に付かなくなったら出来上がりだ。この時グリッターやビーズなんかを入れてキラキラにしても面白い。出来上がったスライムは小さな容器に入れて保管すると長持ちする。


私はハンドスピナーなんかよりもこの透明のりで作ったスライムの方が断然落ち着く。さわり心地も好きだし、肌の上を流れていく様子を見るのだったり、伸ばして光を透かして見たり、プチプチと音を出したりもできる。
食紅を混ぜて絶妙な色を作るのも好きだ。黄色四滴、緑一滴。丸いスパンコールを入れたらタコの触手の吸盤のようで面白い。緑一滴、黄色一滴。金色のマイカで色を付け、その中に金色の大きめのグリッターと小さな金色のビーズを入れる。それを光にかざすと夢の中で踊っているみたいだ。


小さい頃は青色ガラスが好きだった。でもある時から緑が好きになってきた。緑越しに見る世界は少し寂しくてでも暖かい。黄色がかった緑ならなおよい。
小さい頃からベタベタが嫌いだった。砂糖入りの飲み物なんかをこぼしたりすると手がベタベタになる、それがたまらなく嫌だった。でもスライムは違う。手に付いてドロドロしようがベタベタこびり付こうが、すぐはがれる。スライム同士が惹かれあうように、ペタペタすると手の上から消えていく。それが潔くてとても良い。


しかし例外はある。カーペットの上に落として放置するとこびりついて取れないし、子供が誤って頭の上に置いたりすると髪の毛に絡まり取れなくなる。もう地獄のような光景だ。しかしこれは酢があれば解決する。少し臭いが、なめくじに塩をかける時みたいに、スライムに酢をかけると溶けてしまうのだ。これで私はおっちょこちょいで、すぐしでかす下の子を何度も救ってきた。
残り物や常備菜を入れておくために購入しておいたタッパーが、いつの間にか下の子に奪われ全てスライム入れになってしまった。今私たちが作ろうとたくらんでいるのは、ウオータービーズ入りのスライムだ。シェービングクリームを入れて作るふわふわのスライムもなかなか面白いが、遊んだあと髭剃りクリームの匂いが手にこびりつくのが嫌だ。女性用のシェービングクリームで作ればいいだけの話だが。

     下の子作・カップケーキ・フロスティング・スライム

これは白い工作ボンドを使って作ったもの。のりに加える水の量を増やすとフルフルした感触のスライムが出来ます。フルーチェで遊んでいるようだ。色は付けずにザクザク切りのカラフルコンフェティとパールビーズを少し混ぜ込んだ。

          ひとりぼっち セレブレーション

これは透明のりに色付けをせず、ざく切りカラフルコンフェティを混ぜただけの簡単だけど楽しいスライム。透明のスライムって液体ガラスっぽくてわくわくする。

              苔のうえの宇宙

透明のりに緑と黄色の食紅を混ぜて、金色のマイカで色を付けたスライムに金色のコンフェティ、グリッター、小さすぎるビーズを混ぜ込み、アイルランドの森に迷い込んだような、いまにも妖精が舞い降りてきそうな感じにしてみた。

         キンナミミドリガイ・ウミウシシリーズ
これはつくってから何かっぽいなあ、と思い調べているうちにウミウシの図鑑に行きあたり、似ているものを探して命名。ウミウシに魅せられたので、シリーズ化して色んなウミウシモチーフのスライムを作りたい!
透明のりに金色マイカで色を付け、オパールカラーのグリッターと小さすぎる黒いビーズと銀色のビーズを入れた。

そしてもうすぐバレンタインということで、何かちょっとグロいものを作ってみよう!とインタビュー・ウィズ・バンパイアのクローディアをモチーフに真っ赤なスライムを。

               クローディア
透明のりに少し多めの水を混ぜ、赤色の食紅を多めに緑・黄色・青を少し加えそれっぽい色に調整。クローディアの金ぴかの巻き毛を連想させる金のコンフェティとグリッターを投入。

         どっぷりスライム熱にはまっておる。

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