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「グローイング・アップ 」とインディーズ・ビデオと初恋の嵐

2001年に出したビデオクリップ集『田辺マモルのインディーズ・ビデオ』の中の一曲。ビデオの制作は映画監督の菱沼康介くんにお願いした。いや、作りませんか?と監督の弟さんから誘われたんだったっけかな。忘れてしまった。事務所を離れて一人で活動をし始めたばかりの頃だった。

走るライトバンの中でバンド演奏をするシーンを撮りたいと監督に言われ、初恋の嵐の三人に出演をお願いした。メンバーの西山達郎くんとはライブで知り合い、帰る電車がいっしょだったこともあり仲良くなった。池袋から埼京線に乗り、赤羽から京浜東北線に乗り換えて埼玉に帰るミュージシャン友だちは、他にいなかった。今もいない。

自主制作で予算もなく、ノーギャラなのを申し訳なく思ったが、そんなことはまったく意に介さない様子だった。西山くんも鈴木正敏くんも隅倉弘至くんも、バイトを休んでまでして来てくれた。それまではレコーディングでもライブでも、ギャラを介したミュージシャンとの付き合いばかりだったので、本当の音楽仲間ができたような気がしてとてもうれしかった。

撮影を終えたあとで西山くんは「楽しかった」と言ってくれた。「こんな毎日がこれからもずっと続けばいいのに」という言葉を今でもときどき思い出す。初恋の嵐はメジャーデビューを控えていた。

歌詞にあるように、飛ぶのは怖いし怖かったけれど、飛んで良かったと心から思えるのは、このビデオ撮影の日のような一日を持つことができたからだ。飛ばなかったなら巡り会えなかったであろう人たちと出会い、飛ばなかったならできなかったであろう経験をすることができたからだ。飛んで良かった。監督、キャスト、スタッフのみんなと出会えて良かった。感謝。


グローイング・アップ 〜 飛ぶのが怖い

僕らはきっと走ってる いつかジャンプするタイミングが来るまで
来る日も来る日も息を切らして 助走し続けている
グローイング・アップ まわりの仲間たちがスーツを買い揃えた頃に
僕は マイクとレコーダーを買って歌を録り始めた
二階の部屋に 閉じこもった毎日

ニュージャージーのガラクタ屋で買った 型番のわからないギブソン
ジャカジャカかき鳴らして チューニングが一曲で狂ってしまうほど
大いなる 僕の想いは強く明日へと向かった
歳をとって あのときああしておけばよかったって思いたくなかった
踏み出した 右足が重かった

飛ぶのが怖い けれど今はばたこう
言い訳を用意して逃げていた自分にさよなら
したいだけさ 不器用なこの指と
野暮ったいこの声で どこまでも遠く高く飛びたい

僕らはずっと走ってる 幾度ジャンプしても越えられない壁があるから
来る日も来る日も歯を食いしばって助走し続けている
グローイング・アップ 昔の仲間たちが結婚して家を買いはじめた頃に
僕はマイクとレコーダーを買い替えて歌を録り続けている
上の部屋からうるさいって言われながら

飛ぶしかない 明日へとはばたこう
僕にしかできなくて 僕にならできそうなこと
したいだけさ レールを外れたら
歩きやすい道などない 飛び続けて進むんだ グローイングアップ

あの日の僕はこの僕を憐れむだろうか
それとも敬い あとに続くだろうか

飛ぶのが怖い けれど今はばたこう
言い訳を用意して 逃げていた自分にさよなら
したいだけさ 不器用なこの指と
野暮ったいこの声で どこまでも遠く高く

飛ぶしかない 明日へとはばたこう
僕にしかできなくて 僕にならできそうなこと
したいだけさ レールを外れたら
歩きやすい道などない 飛び続けて進むんだ グローイングアップ


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