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「夜と霧」ヴィクトール・E・フランクル著 池田香代子訳

どうしてかはわかりませんが、急に、『「夜と霧」を、いますぐに読まねばならない』と思い立ち、この1日、むさぼるように読んでおりました。

改めて、自分がもし今後、耐えられない悲劇や喪失、病や苦難に向きあうことがあったときに、道しるべとなるよう手元に置いておきたい作品の一つだと思いました。

急にすみません。報道や動画を通して知るガザの現状や、否応なしに目に入る、心が痛むようなSNS上のやりとりが背景にあるのかもしれません。

フランクル先生は、1947年に発表した作品を、1977年に改訂しています。そこには、イスラエルという国家が向かっていく方向への危惧があったのかもしれない、と訳者の池田先生が考察されています。改訂から47年が経過し、それが具現化してしまっているのかもしれない、と思わされました。

将来を嘱望され、活躍していた精神科医。ユダヤ人であるとの理由だけで、新婚したばかりの妻や家族と共に強制収容所に送られ、辛苦を乗り越えて一人だけ生き残った。

想像しえないほどに困難な経験と、それを通じて得られた、人生の意味を改めて考えさせてくださる論考。そしてそれを、平易にかつ、深く伝える和訳。本質を理解した翻訳は、それゆえに平易になるのだと、改めて感じさせてくださいます。

少し時間を作れば、たった1日で読める内容です。なのに、その時々に、その先の人生に確かな影響を与えてくれる書籍と思います。

以下引用ーーー

ひとりひとりの人生にそなわっているかけがえのなさは、意識されたとたん、人間が生きるということ、生き続けるということにたいして担っている責任の重さを、そっくりと、まざまざと気づかせる。 自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほどんどあらゆる「どのように」にも耐えられるのだ

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