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Countdownはイケてるライブ動画がてんこ盛り。バナナラマもいいけれど、やっぱりシンディローパーが最高だ!(オススメMV #130)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の130回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は「Countdown」というオランダの音楽専門TV番組で放送されたイケてるライブ動画を中心にお届けします。
「オススメMV」と銘打ってこの連載をお送りしているものの、今回はライブ動画がメインとなります。
しかし、その多くはMV(MusicVideo)とも言えるのですが、その理由は最後にお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

さて、「Countdown」は、オランダ公共放送のテレビ局が1978年から1993年まで放送していたTV音楽番組です。
諸説あるものの個人的には1980年代が一番洋楽が光り輝いていた、いわゆる「洋楽黄金期」と思っているのですが、その洋楽黄金期にヨーロッパを中心に当時のそうそうたるポップスやロックのアーティストを参集し、スタジオライブを放送していた伝説の音楽専門TV番組なのです。

ちなみに、本連載では以前「The Ellen DeGeneres Show」を少しだけ紹介しましたが、The Ellen DeGeneres Showは2002年から2022年までアメリカで制作・放映されていたTV番組で、近年のポップスとロックのスタジオライブを放送した番組としては秀逸です。
番組タイトルにある通りMCのエレンによるトーク番組であるものの、番組内で優れたスタジオライブが放送されており、YouTubeにチャンネルがあるのですが私のお気に入りチャンネルのひとつになっています。
ちなみに、過去の連載では、私の好きなLSDやブルーノマーズのイケてるライブパフォーマンスを紹介しているので、ご興味あるかたはぜひご覧ください。(過去の連載はコチラ⇒「完璧すぎるLSDのMVは...」「ファンキーと言わずして何という!」

前置きがメチャクチャ長くなってしまいましたが、まず最初のイケてるライブ動画はコチラ。
バナナラマの「I Heard a Rumour」です。どうぞ!

女性アーティスト3名とマッチョな男性3名による、決して複雑とは言えないダンスのみというシンプルな構成ながら、最後まで飽きずに観れるのは、これまたシンプルながらも素晴らしい楽曲とのマッチングが良いからにほかなりません。

バナナラマ(Bananarama)は、1981年に結成されたUKのガールズグループで、最初はトリオだったのですが1988年に1名が脱退しデュオになってしまったものの、今でも活動しているご長寿グループになります。
1980年代のトリオ時代が最も輝いていた時期で、日本は当時バブルのイケイケの時だったのですが、その記憶と相まってイケイケグループというイメージがあります。

この「I Heard a Rumour」は、1987年リリースの4thアルバム「WOW!」のリードシングルとして同年にリリースされた楽曲で、バナナラマの代表曲のひとつです。
バナナラマというと、ショッキングブルーのヒット曲「Venus(ヴィーナス)」のカバーが有名ですが、「I Heard a Rumour」はオリジナルとしては一番のヒットではないものの私のお気に入りの楽曲です。
「I Heard a Rumour」には面白い話があるのですが、日本ではヒットして結構聴くことが多かった(逆に日本以外ではあまりヒットしなかった)「GIVE ME UP」という楽曲があり、その楽曲とメチャクチャ似ているのです。
というのも、そのソングライターあるいはシンガーから「この曲、使っていいよ」と当時バナナラマのプロデュースをしていたSAWというチームに話があったとか、逆にSAWから話を持ち掛けたとか諸説あるのですが、いずれにせよ合意の上でのパクリだったようです。
余談ついでに、このSAW(ストック・エイトケン・ウォーターマン)は3名からなるチームなのですが、1980年代後半の洋楽シーンでは大活躍しており、バナナラマ以外にもこの連載で以前紹介した「デッド・オア・アライヴ」のヒット曲の多くはこのSAWのプロデュースとなっています。
(以前の連載はコチラ⇒「デッドオアアライブのMVは、今もなお色あせず輝き続けている!」

参考までに、オフィシャルMVも紹介しましょう。

このオフィシャルMVは実はメチャクチャ凝った作りになっています。
バックのスクリーンに様々な映画のシーンが映し出されていて、バナナラマの3名がそれぞれ異なった映画のシーンを模した衣装を着て踊る...という私の好きなタイプのMVなのですが、その演出が活かされていないのが残念なところです。
どうしてもバナナラマ3名のダンスそのものの印象付けが強く、背景に意識が行かないのが原因と思うのですが、この楽曲はダンスとの親和性が高いというか、ダンスありきの楽曲ですので、それを考えるとこの演出がミスマッチとも言えます。
それと比べると、Countdownのライブ動画は楽曲とダンスのみで、それ以外を一切排除していることから楽曲の良さを最大限に生かした動画になっているのではないかと思われます。

2017年に期間限定でオリジナルメンバーが勢ぞろいしトリオで活動した時期があるのですが、その時のライブ映像がYouTubeで見れるので、オマケで紹介しましょう。
The London Eventim Hammersmith Apolloでのライブ動画です。

シブくて味わいのあるライブパフォーマンスですね。
3人揃って歌ってくれているだけで十分だ!という観客の想いが伝わってくるようです。
このライブ動画を見ると、メンバーの脱退と再加入を経てオリジナルメンバーに戻って活動している日本のガールズボーカルグループ「MAX」を思い出され、感慨深いものがあります。

続いてのイケてるライブ動画はこちらです。
カルチャー・ビートの「Mr. Vain」。

これまたシンプルなダンスにシンプルな楽曲の組み合わせが秀逸なライブ動画ですね。
女性シンガーの飾りっ気のない衣装に加えて、立ち位置もセンターからほとんど動いていないという、なかなか無いライブ動画です。

カルチャー・ビート(Culture Beat)は、1989年から活動を開始しているドイツのバンドですが、同じバンド名で現在も活動しているもののメンバーもプロデューサーも何度も変わっており、音楽性も変化しているという不思議なバンドです。(まあ、よくあると言えばあるパターンですが)
最初に立ち上げたトルステン・フェンスラウが1983年に亡くなり、弟さんが跡を継いでマネジメントされたのですが、そこから大きく方向性が変わって今に至っています。
この「Mr. Vain」は、1993年リリースの2ndアルバム「Serenity」のリードシングルとしてリリースされたのですが、ヨーロッパの多くの国で1位を獲得し、USでもチャートインするというビッグヒットとなりました。
創始者でありバンドをプロデュースしていたステン・フェンスラウが、この「Mr. Vain」のビッグヒットのあとに亡くなられたのはせめてもの救いです。(ビッグヒットでの多忙ゆえの居眠り運転だったようで、本当に残念です...)
この楽曲を歌っているのは女性シンガーのタニア・エヴァンスと男性ラッパーのジェイ・シュプリームのふたりですが、ふたりが組んだのはこの2ndアルバムと次の3rdアルバムだけですので、バンドは続いているものの「Mr. Vain」での素晴らしいタッグを観ることはもうできません。

「Mr. Vain」のライブ動画ですが、上にもコメントしましたがめちゃくちゃシンプルで、飾り気のない衣装のタニア・エヴァンスがセンターからほとんど動かずに踊り、その周りを同様に決して派手ではない衣装を着たジェイ・シュプリームが(飛んだり跳ねたりせず)歩き回りながら歌うという、印象付けが弱い映像となっています。
しかし、何度見ても飽きることなく最後まで観れてしまうのは、優れた楽曲の良さをシンプルな映像が引き立たせているからではないかと思われます。

「Mr. Vain」にはもちろんオフィシャルMVも存在しているのですが、権利が明確になっている動画がYouTubeにアップされていないため、残念ながら紹介できません。(本当に残念です...)
権利は不明なもののオフィシャルMVの動画自体はいくつかYouTubeにアップされているので、ご興味ある方は観てみてください。

ちなみに、オフィシャルMVも決して悪いワケではなくMVとしてはきちんと作ってあり、一般的な評価としては高いのですが、上のライブ動画を観た後ではゴチャゴチャしているように思えてしまいます。
今回、久しぶりにオフィシャルMVも観てみたのですが、やっぱりシンプルなライブ動画がいいなーと思ってしまいました...

さて、そろそろ最後のライブ動画を紹介しましょう。
実は、今回はこのライブ動画を紹介したいために特集を組んでお送りしているという程、私の中ではお気に入りのライブ動画となります。

そして、その神ライブ動画はコチラ。
シンディ・ローパーの「I Drove All Night」です。どうぞ!

曲調にあわせたダークでしっとりとした映像から始まり、楽曲の変調とあわせてシンディにもスイッチが入りテンションMAXのパフォーマンスを見せてくれます。
このライブ動画のスゴさの秘密は後ほど解説するとして、シンディ・ローパー(Cyndi Lauper)について簡単に紹介しましょう。

1978年から活動を開始し1983年にソロデビューしたUSのアーティストですが、今年70歳という大台に乗られたにもかかわらず現役で活動されているパワフルなお方です。
なお、以前の連載ではもう少し詳しく紹介しているので、ご興味ある方はそちらもご覧ください。(シンディ・ローパーを紹介した以前の回はコチラ⇒「映画タイアップMVはチョット苦手」

この「I Drove All Night」は1989年の3rdアルバム「A Night to Remember」のリードシングルとしてリリースされ、USで6位のヒットになりました。
シンディは多くの楽曲を自身で書いていますが、シンガーとしても素晴らしく、「I Drove All Night」も自身の楽曲ではないもののその歌声を聴くと自分の楽曲として昇華していることが分かります。

このライブ動画のスゴさの秘密を解説する前に、ぜひオフィシャルMVもご覧ください。

これも凝った映像のMVですね。
しかし、楽曲が始まる前の冒頭の25秒はなかなかキツイ。
最初に「Drive」を印象付けたいという意図は理解できるものの、MVは楽曲のためにあるという(私の勝手な)MVの定義にはそぐわず、飛ばして観てしまいます。(というか、このオフィシャルMVを観ることはほとんどないのですが...)

このオフィシャルMVと対比して、上のCountdownのライブ動画を観ていただくと面白いことが分かります。
ライブ動画では、シンディが纏(まと)う白い布に映像を投影し、シンディの着るワンピースも水玉模様と、オフィシャルMVの要素を取り入れているのですが、実は私はオフィシャルMVと同じ構成でのライブは好きではありません。(ライブでこそ実現できる取り組みがあると思っているため)
しかし、このライブ動画では、そのマイナス要素を補って余りある素晴らしい要素があるのです。
それこそ「シンディの超絶素晴らしいパフォーマンス」に他なりません。

ここで、このライブ動画の秘密を解説しましょう。
ここまでCountdownのライブ動画を紹介しましたが、これらはライブ動画というよりもMVに近いものではないかと考えています。
というのも、ほとんどがクチパク、つまり実際には歌っておらず、流れている楽曲に口だけあわせて動かしている映像なのです。

調べてみると、当時の放送機器ではライブ音源を放送するのは難しく、うまく放送できないリスクが高いため、ほとんどがCDの音源を流してそれにアーティストがあわせてパフォーマンスするのが一般的だったようです。
つまり、映像も音声もライブの動画ではなく、映像だけライブで音声はライブではないという「半ライブ動画」という感じでしょうか。
そう考えると、MV(MucicVideo)も楽曲にあわせて映像を流すわけですから、このCountdownのライブ動画もMVと言えなくともないですね。

この秘密を理解したうえで、上の3つのライブ動画を観ると「確かにクチパクだ...」とわかっていただけると思います。(シンディなど、マイクと顔がどれだけ離れてるんだ...という感じです)
しかし、クチパクとはいえ、シンディのパフォーマンスは凄すぎます。
シンディのライブ動画を観ていると、最高のパフォーマンスを楽しむのと同時に、彼女の全力で観客を楽しませようとする姿には心を打たれます。

色々な事情で望む形で仕事ができないことも多いでしょう。
しかし、関係する方々が決して悪い結果を望んでいるわけでなく、多くの方が良いものをお届けしようと思いつつも、そうできない事情があることがほとんどです。
100%の環境ではなくても、その状況の中で出来得る最高の仕事をすることが自分のためにも顧客のためにもなることを、シンディは教えてくれます。
このシンディのライブ動画を観るたびに、感動すると共に「オレもやるぞ!」と思わせてくれるのです。

ちょっとマジメな話になってしまいましたが、このCountdownのライブ動画では、他にも私のお気に入りのアーティストも多数登場しています。
レアなところでは、ミレーヌ・ファルメールやトレイシー・ウルマンなどですが、ライブ動画としては微妙ではあるものの、やはりアーティスト本人が登場してパフォーマンスしてくれるというのはそれだけで価値があるので、観てソンということは決してありません。

なお、オランダでは、この「Countdown」だけでなく「TopPop」という音楽専門のTV番組も同時期に放映されているので、また機会をみて「TopPop」のオススメライブ動画(半ライブ動画?)も紹介できればと思っています。

今回はライブ動画を中心にお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?
特にシンディ・ローパーのライブ動画は必見ですので、ぜひ皆さんご覧ください。

ではまた次回に。

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