見出し画像

アート・オブ・ノイズは楽曲だけじゃなくジャケットもアートだ!(レコードジャケットの楽しみ #14)

こんにちは、吉田です。
レコードジャケットを自宅の部屋に飾ってニンマリする連載の14回目です。(連載のマガジンはこちら)
3週お休みしていましたが(というより前回飾ったジャケットが気に入ってしまい交換できなかった...)、別で連載している「オススメMV」は週1回以上投稿していますので、興味のある方はそちらも観てみてください。

さて、今回はガラッと変わってデザイン系のジャケットです。
しかも、同じアーティストの3連発。
そのアーティストは、アート・オブ・ノイズ(The Art of Noise)。

まず、1枚目は、ファーストアルバムの「Who's Afraid of the Art of Noise?」です。

画像1

インパクトのあるデザインですよね。
といっても、過激とか派手とかではなく、シブさもある不思議なデザインです。

このアート・オブ・ノイズは、かの有名なトレヴァー・ホーン(Trevor Horn)が結成したユニットで、このアルバムが発表された当時はメンバー不詳となっていました。(のちに公表されましたが)

トレヴァー・ホーンは1980年代のミュージックシーンに様々な影響を与え、多くのヒット曲に関与しています。
別の「オススメMV」の連載でもトレヴァーに関する内容があり、ひとつは4回目のバグルスのお話、もうひとつは9回目のABCのお話です。

バグルスはトレヴァーが最初に結成したグループで、「Video Killed The Radio Star(ラジオスターの悲劇)」がMTVで最初に放映されたMVであることでも有名です。
そして、ABCはトレヴァーのプロデュースで成功した数あるグループの中のひとつで、この時代でのトレヴァーの活躍がうかがえます。

トレヴァーがすごいのは、ただヒット曲を世に出しただけではなく、それぞれのグループで様々な実験をしており、そのチャレンジがのちの音楽に多大なる影響を与えているところです。
このアート・オブ・ノイズもその中のひとつになります。

続いての2枚目は、「Into Battle With The Art Of Noise」です。

画像2

クラッシック音楽っぽいデザインのジャケットですよね。
このアルバムは、実は上にあるファーストアルバムの前年にリリースされたミニアルバムです。
アルバムタイトルは、さながら「これから俺たちと一緒に音楽業界に新風を巻き起こそうぜ!」というようなノリでしょうか。
ジャケットにも戦いに向かう騎士たちが描かれています。

ちなみに、ファーストアルバムの「Who's Afraid of the Art of Noise?」の邦名は「誰がアート・オブ・ノイズを・・・」というタイトルですが、この訳では真意が伝わりません。
「アート・オブ・ノイズを恐れているのは誰?」、あるいは「誰がアート・オブ・ノイズを恐れている?」が適切かと。
なぜかは、ミニアルバムのタイトルから考えるとわかりますよね。

トレヴァーはそれぐらいこのアート・オブ・ノイズで当時の音楽業界に新風を巻き起こすつもりであり、そして実際にこのアート・オブ・ノイズはその役目を果たしたと考えています。

最後の3枚目は、セカンドアルバムの「In Visible Silence」です。

画像3

実物のアルバムジャケットはこだわった装丁になっていて、左右のイラストではない赤黄青の部分は型押しされた顔の模様が入っており、細かく目立たない部分に手がかかっているのも ”こだわり” が感じられます。
実はこのアルバム、裏面のほうがアートしています。
こんな感じです。(せっかくですので3枚の裏面を並べてみます)

画像4

どうですか?
一番右のジャケットがセカンドアルバムの裏面です。
裏面の左右のイラストはカラーになっていて、もちろん赤黄青の部分は型押しされた顔の模様が入っています。
そして、右上のイラストの部分はバーコードになっているという遊び心もあるのがイイ感じですね。
ファーストアルバムとミニアルバムの裏面もアート感満載です。
(ミニアルバムの裏面は「ぶち壊す!」という意思表示ですね)

このセカンドアルバムには、名曲「Legs」が収録されています。
聴かれると、「あっ、この曲、聴いたことある!」という方がほとんどかと思います。(テレビなどでも多用されています)

アート・オブ・ノイズの名曲と言えば、他にはファーストアルバムに(その前のミニアルバムにも)収録されている「Beat Box」と「Moments In Love」があります。
実は、アート・オブ・ノイズとの出会いは、この「Moments In Love」になります。

1980年代前半に読売テレビで深夜に放送されていた「どんぶり5656(ごろごろ)」という番組があり、FireWorksというコーナーでエフェクトされた花火の映像のバックで流れていた曲がこの「Moments In Love」でした。
その放送を見て(この楽曲すごい!)と感激し、当時大阪の老舗輸入レコードショップのひとつである「LPコーナー」に買いに走った...というのがアート・オブ・ノイズとの出会いです。

ちなみに、この番組は当時読売テレビの社員だった中野裕之さんがディレクターを務め、FireWorksの映像も中野さんの制作です。
「Moments In Love」の楽曲がリリースされてすぐに映像化されたようで、タイミング的にファーストアルバムの前のミニアルバムの「Moments In Love」を聴かれてFireWorksの映像化を思いつかれたのではないかと想像しています。(違っていたらゴメンナサイ...)
つまり、このFireWorksは、「Moments In Love」のMVそのものであると考えています。

さらに脱線しますが、中野裕之さんは日本のMV業界を立ち上げた方の中のひとりで、日本初のMV制作会社も起こされています。
その会社名は、なんと「タイレルコーポレーション」!!

リドリー・スコット監督の不朽のSF名作「ブレードランナー」でレプリカントを作っている会社ですね。
中野さんは相当ブレードランナーからリスペクトを受けているようで、「どんぶり5656」の最終回ではブレードランナーをまんま再現しています。
竹中直人が演じるうどんを食べるシーンなどは語り継がれる名場面です。

中野裕之さんのMVの話も語りたいところですが、アート・オブ・ノイズのアルバムジャケットの話から逸脱するので、また別の機会に。
(日本のMVについては、別に連載している「オススメMV」で3回連続で書いていますので、興味ある方はそちらも観てみてください)

話をもどして、今回の3枚、こんな感じで飾っています。

画像5

どうですか?
めちゃくちゃアートしてるでしょう!

さて、今回の3枚、いかがでしたでしょうか?
アート・オブ・ノイズの初期の傑作で、音楽史に残るアルバムです。
新しい時代を築こうとチャレンジし、そして次の時代につながる礎となった作品は、いつ聴いてもパワーがあり新鮮です。
Spotifyにもありますので、ぜひ聴いてみてください。

ではまた次回に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?