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実写にイラストや文字を重ねるって、簡単なようで難しい。その中でもギャランティスのMVはイイ感じ!(オススメMV #82)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の82回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回のテーマは「実写にイラストや文字を重ねているMV」です。
というか、前回に同じカテゴリの名作MVを紹介しましたが、あまりに語り(というか文章)が長くなり、予定していた他のMVが紹介できなくなってしまったので、引き続き今回も同じテーマでお送りします。

ちなみに、前回をご覧いただいていない方は、超オススメのMVですので、ぜひ前回もご覧ください。(前回のJack Üの名作MVはコチラ!)

では、さっそく1つ目に参りましょう。
最初のMVはこちら。
The Lionsの「The Magnificent Dance」です。どうぞ!

モノクロの映像に重なる文字や模様も白抜きオンリーですが、単調さは全くなく、かといって映像が強すぎることもなく、最後までノリノリで観ることができます。

The Lions(ライオンズ)は、実はこのMVで初めて出会ったバンドなのですが、西海岸のベテランミュージシャンが集まって作ったレゲエグループのようで、この「The Magnificent Dance」は2015年リリースのアルバム「Soul Riot」に収録されている楽曲です。
他の楽曲はどうだろう?と思ってSpotifyにあったので聞いてみたのですが、私との相性はイマイチだったようで、The Lionsとのお付き合いはこのMVのみとなっています。

しかし、この「The Magnificent Dance」のMVは何度観ても飽きないばかりか、レゲエのリズムと絶妙にマッチした映像で、何度観ても飽きずに見ることができる良作として仕上がっています。
文字や模様が結構たくさん表示されるのですが、映像が強くなりすぎず楽曲がしっかり前に出ているのは、映像と楽曲のマッチングが良く、かつモノクロの映像だからと思われます。

ダンスが中心の構成ですが、カット割りが細かくダンサーの熱のこもったダンスが台無しになっているMVも多い中、この「The Magnificent Dance」のMVでは絶妙な長さでカット割りがされていて、ダンサーのダンスも楽しめつつ、変化をつけているところが技ありMVとなっています。

しかし、もっとダンサーのダンスを前面に出しつつ、変化をつけながらも今回のテーマである「実写にイラストや文字を重ねているMV」として成立しているオススメMVがあります。

それが、2つ目に紹介するこちらのMV。
Galantis & Throttleの「Tell Me You Love Me」です。

色遣いのきれいな映像の中で踊るダンサーと、これまたカラフルな文字や模様がいいバランスで組み合わされ、気持ちよく最後まで見ることができる秀作MVです。

この「Tell Me You Love Me」は、Galantis(ギャランティス)というスウェーデンのエレクトリック系のデュオと、Throttle(スロットル)というオーストラリアのDJの共作で、2017年リリースの2ndアルバム「The Aviary」に収録されている楽曲です。
ちなみに、「Tell Me You Love Me」というと、私の敬愛するフランク・ザッパにも同名の楽曲があり、そのフレーズが頭に鳴り響いてしまいます。

話がそれましたが、MVの解説に参りましょう。
何といってもこのMVの特徴は、登場するのが3名のダンサーのみであり、それぞれのダンスを存分に見せてくれるMVである点が特徴になっています。
3名のダンサーのダンスのみとなると後半にダレてくるというか、単調になりがちですが、そこを様々な工夫で最後まで飽きさせず、新鮮なまま一気に観させてくれるMVはなかなかありません。

では、どうしてそれが可能になったのでしょうか?
それは以下の3つの取り組みによってです。

まず1つ目は、今回のテーマでもある実写にイラストや文字を重ねることで、映像に変化をつけている点があります。
しかも、そのボリュームと内容を絞り込んでいるところが技ありです。
通常であればモリモリに色を付けたイラストを重ねたり、文字にしても全ての歌詞を表示したくなるものですが、あくまでダンサーのダンスが中心となっており、イラストはあくまでもダンスを引き立たせるための装飾であり、文字もポイントに絞って表示しています。

続いて2つ目は、3名のダンサーごとに世界観を持たせている点です。
この点は具体的に説明しましょう。
まず、3名のキャラクターを明確に分けています。
1人目は青年の黒人男性、2人目は若いアジア系の女性、3人目は白人で3名の中では最も年長の男性となっています。
そして、それぞれの場所やテイストを明確に分けることで3名のダンサーそれぞれの世界観を確立しています。

■黒人の青年 
・場所:野外
・テイスト:やわらかい

■アジア系の若い女性
・場所:商店街
・テイスト:パワフル

■白人の年長の男性
・場所:野外だが直線的な建造物の近く
・テイスト:直線的

黒人の青年の映像に重ねる文字や模様はやわらかく、ほのぼのとした印象を与えますが、逆に白人男性は表示される文字もカッチリとした字体で、幾何学模様が表示されるためシャープな印象を与えてくれます。
ただ単に3名のダンサーのダンスシーンに画面が切り替わるだけでなく、それに合わせて映像全体のテイストも切り替わるため、飽きが来ないのです。

最後の3点目は、画像に明暗を付けて変化させている点です。
黒人青年の映像では明るい昼間から暗い夕方、白人男性の映像では明るい野外の建物の近くから屋根のある建物の中の暗い映像と、映像全体の照度を変化させることで印象付けに強弱を持たせています。

これら3点を意識して再度このMVを観ていただくと、「なるほど!」とうなずいていただけることかと思います。
しかし、3名のダンサー全員が活き活きとかつ楽しそうに踊っている姿は、観ていて気持ちがいいですね。
出演しているダンサーは、ここまで各自のダンスをきっちり押し出して表現してもらっていて幸せではないかと思います。

さて、ここまで2つのオススメMVを紹介しましたが、当初は先週のJack ÜのMVと上の2つのMVのあわせて3つのMVを紹介して終了の予定でした。
Jack Üを先週紹介してしまったので今回は2つになってしまいましたが、2つというのは寂しいので、もう1つオマケに紹介しましょう。

その3つ目のMVはこちら。
SAINt JHNの「Roses」です。

これまた思い切った映像のMVですね。
車の前方からの固定カメラの映像のみで、カット割りナシの長回しのMVというのは見たことがありません。

このMVはYouTubeで見つけたのですが、ベースとなる楽曲は2019年にリリースされており、Spotyfyで爆発的なヒットになったようです。
リリース同年に7億回も再生され、2022年現在なんと15億回も再生されているというから驚きです。

SAINt JHN(セイント・ジョン)はアメリカのラッパーですが、2010年から活動を開始し、「Roses」のオリジナル版は2016年にリリースしており、15億回再生され今回MVとして紹介しているのはリミックス版の「Roses (Imanbek Remix)」となっています。

さて、MVのほうに話を移しましょう。
この「Roses」のMVを始めて観たときに、映像全体がリズムに合わせて上下に微妙に動いているのではないかと思ったのですが、よく見てみるとそうでは無く、出演している4名の男女の頭や体がリズムに合わせて上下に動いている(つまり、リズムにノッているんですね)ので、それで映像全体がリズムに合わせて動いているように見えているんだと気づきました。
しかも、MVを観ている私自身も出演している4名の男女の動きに合わせて動いていることに気が付き、ハッとした...というオチまでついています。
それぐらい、この楽曲とMVはノリが良く、さすがにSpotifyで15億回も再生されるな、と思った次第です。

しかし、チョットだけ残念な点があります。
このMVは、観ていただいたらわかる通り、すべての歌詞を車のボンネットの上に装飾しながら表示しています。
そして、たまーに出演者にイラストをかぶせたり、ボンネットの上に模様を表示する...という映像効果を施しています。

歌詞の表示は凝った表現になっていて、こだわって作られているのが分かるのですが、その細かな表現についていけず、わからないまま終わってしまう...という不完全燃焼な状態に陥ってしまうのです。
もしかしたら、ネイティブな英語圏の方はこのスピードで装飾された歌詞を表示されても、それぞれの装飾の意図を把握し楽しめるのかもしれませんが、私の場合は全く無理でした...

また、車の両サイドの景色と、車のフロントガラスを通してみる景色の色が違い、また動くスピードも違うので、リズムやメロディーに合わせて変化をつけているのかと思えば、全くそうではなさそうで、この点ももったいないと言わざるを得ません。

と書きつつも、MV自体は結構気に入っていて、毎回「もうチョット工夫してくれたらメチャクチャいいのに...」と思いながらも何度も観ている私がいます。
MVの制作は本当に難しいと、このMVを観ていて痛感します。

さて、今回の「実写にイラストや文字を重ねているMV」はいかがでしたでしょうか。
特に2つ目の
「Tell Me You Love Me」の活き活きと踊るダンサーのMVは超オススメですので、ぜひご覧ください。

ではまた次回に。

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