見出し画像

METAFIVEの特集だ!この奇跡のセッションを、今だからこそ伝えたい(オススメMV #117)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の117回目です。(連載のマガジンはこちら)

今年の1月に高橋幸宏さんが、そして3月に坂本龍一さんが鬼籍に入られたことは皆さんご存じのことと思います。
お二人はイエロー・マジック・オーケストラ(以下YMO)のメンバーであり、ソロアーティストとしても活躍されていましたが、別連載の「レコードジャケットの楽しみ」では取り上げたことはあるものの、この連載ではYMOとしてもソロアーティストとしても取り上げたことはありません。
※別連載ではYMOやお二方について何度か取り上げており、以下2つの回がオススメですのでご興味あればご覧ください。
「YMOという時代を、観てそして聴いてみよう!」
「今だからこそ、YMOの源流ともいえる3枚の神アルバムを愛でる」

しかし今回、どうしても本連載でYMOあるいはメンバーのお二方に関連するMVを取り上げたく、熟考した結果、「METAFIVE特集」としてお送りすることにしました。

では、「METAFIVE特集」最初のオススメMVはコチラ。
METAFIVEの「環境と心理」です。どうぞ!

シュールなアニメの映像と、感情を抑えた歌声が印象的な楽曲とのマッチングが秀逸なMVです。
明度も彩度も低く印象付けが弱い映像ゆえに、そのすばらしい楽曲を際立たせていることは明白です。

METAFIVE(メタファイヴ)は、2014年に高橋幸宏さん(以下幸宏さん)を中心に結成されたバンドです。
幸宏さん以外のメンバーは、小山田圭吾さん、砂原良徳さん、TOWA TEIさん、ゴンドウトモヒコさん、LEO今井さんの5名ですが、ライブのために「高橋幸宏とMETAFIVE」として結成され、翌2015年に現在のバンド名に改名したうえで活動を継続し、アルバムもリリースされています。
幸宏さんを除く5名は全員幸宏さんよりひと世代若いのですが、YMOと直接的あるいは間接的に関係性があるメンバーばかりで、YMOが次世代に受け継がれているひとつの形ではないかと思えます。
また、皆さん幸宏さんをリスペクトされているのは確実で、音楽性はもちろん、人柄にも引かれて集まっているのでしょう。
幸宏さんの人柄はこのMETAFIVEの取り組み自体にも表れており、幸宏さんを中心に結成はされているものの幸宏さんのグループではなく、6名がフラットに音楽を作る場としていることからもうかがえます。

簡単にメンバーを紹介しましょう。
小山田圭吾さんは、Cornelius(コーネリアス)というソロプロジェクトで活躍されており、実験的な楽曲やMVが多く、日本より海外での評価のほうが高いアーティストです。
砂原良徳さんは、電気グルーヴの元メンバーとして有名ですが、私の中ではいしわたり淳治さんが詩を書きやくしまるえつこさんが歌った「神様のいうとおり」という名作の曲を書いた方というイメージが強く、ぜひ皆さんにも聴いていただきたいところです。(チラッと以前の回に書いていますので、ご興味ある方はコチラを⇒「女性の3ピースバンドでは・・・」
TOWA TEI(テイ・トウワ)さんは、YMOの3名それぞれとの関連性が強く、多くの共作をリリースしていますが、なんといってもディー・ライト(Deee-Lite)のメンバーとして印象が強く、この連載でも紹介した全米4位のヒット曲「Groove Is In the Heart」が記憶に残ります。(MVも素晴らしく、以前の回もぜひご覧ください⇒「ダンス系洋楽MVの三連発!」
ゴンドウトモヒコさんについては、正直ほとんど存じ上げず、このMETAFIVEをきっかけに「どんな曲を作られたのか聴いてみよう」と思っていくつか聴いてみたという程度のお付き合いで、YMOのライブのサポートメンバーもされていたというのもあとから知ったお話です。
LEO今井さんについても、同様にほとんど存じ上げないのですが、メンバーの中では最も若くデビューも2006年と比較的最近で、METAFIVEで認知してリリースされている楽曲を聴いてみた...という感じです。
そして、この5名の皆さんの楽曲やMVを視聴はしていますが、あまりピンとこず、再度視聴することはほとんどないのが実状です。(決して楽曲が良くないということではなく、相性が悪いようです)
しかし、METAFIVEとして皆さんの楽曲やMVを視聴すると、もうドはまりで、何度となく楽曲もMVも再視聴している私がいます。
もうこれは幸宏さんマジックというしかありません。

そして、この「環境と心理」ですが、2020年7月にネットでリリースされた楽曲で、MVはその翌月の8月に公開されました。
2016年に1stアルバム「META」をリリースし、ライブの開催やフェスへの参加など大活躍されたのですが、それ以降ぱったりと活動を停止されていたところ、4年後の2020年7月に突然YouTubeで「METAFIVE. STILL ALIVE.」と題した動画を発表され、そして満を持してリリースされたのがこの「環境と心理」になります。
METAFIVEの持ち味のひとつは多様性と思うのですが、1stアルバム「META」のファーストトラックで私のお気に入りでもある「Don't Move」に代表されるLEO今井さんのキレのあるボーカルが前面に押し出された楽曲もあれば、この「環境と心理」のように小山田圭吾さんのアンニュイだが確実に脳裏に刻み込まれる楽曲もあります。

「環境と心理」には、ライターである小山田圭吾さんというかCornelius名義の楽曲もリリースされているのですが、METAFIVEバージョンのほうがしっくりくるのが不思議なところです。
これは、アレンジの違いという面ももちろんありますが、ボーカルをメンバーが交代しながら務めていることも大きな要因となっており、METAFIVEの多様性が生かされている部分でもあります。

MVの「環境と心理」を観てみると、夕暮れの中で群衆が歩き、走り、泳ぐという不思議な映像ですが、これは「HUMANITY」というビデオゲームの世界観のようで、ネットで検索すると「なるほど」とうなずいていただけるかと思います。
ゲームと同じ世界観ですが、MusicVideoとしての作りは素晴らしく、ゲームの映像と比べて明度と彩度が抑えられており、楽曲とのバランスがとられていることは明らかです。
特にカット割りの切り替えタイミングや、「環境と心理」というフレーズと合わせて画面中央に2X2のマス目で「環境/心理」と表示されるのは何度観ても「ウマい...」とうなってしまいます。

1つ目のオススメMVで語りがメチャクチャが長くなってしまったので、この辺で2つ目のオススメMVの紹介に参りましょう。

「METAFIVE特集」の2つ目のオススメMVはコチラ。
METAFIVEの「Musical Chairs」です。

シンプルだが単調ではなく、様々な工夫とセンスが凝縮されたMVです。
カット割りから歌詞の表示まで何も言うことがないほどの高い完成度で、素晴らしい楽曲をさらに高次元へと引き上げています。

この「Musical Chairs」は、1stアルバムに続いて同年2016年にリリースされたミニアルバム「METAHALF」に収録された楽曲で、作詞作曲共に砂原良徳さんとLEO今井さんの合作となっています。
楽曲そのものも素晴らしいのですが、幸宏さんとLEO今井さんお二人のボーカルの組み合わせが絶妙で、身震いするほどです。

MVも名作といっても過言ではない程の完成度で、基本的にはモノクロの航空写真に歌詞と赤いドットだけで構成されているというシンプルさです。
しかし、決して単調になることはなく、ボーカルとリンクしたカット割りと歌詞の表示のタイミングと表示の工夫によって最後まで全く飽きることなく一気に観終わってしまうというのは優れたMVである証です。
印象付けを強くするために、多くの色を使ったり明度や彩度を上げてしまいがちですが、それらをことごとく排除しながらもしっかりと印象付けを行っているのは驚愕に値します。

実は、最初に紹介した「環境と心理」も、この「Musical Chairs」も、中村勇吾さんというイケてる映像作家が監督されており、「やっぱりな...」と思うことしきりです。

そろそろ終わりにしようかと思っていますが、最後におまけでMVというかスタジオライブの動画で締めくくりたいと思います。
METAFIVEの「Don’t Move」(Studio Live Version)です。どうぞ!

メチャクチャいいですよね。もう最高です!

この「Don’t Move」は、上にも書きましたが1stアルバム「META」のファーストトラックとして収録されているのですが、作詞はLEO今井さんとTOWA TEIさんの合作で、作曲は小山田圭吾さんとLEO今井さんそしてTOWA TEIさんの合作という、これぞMETAFIVEとでもいうような各人のエッセンスが凝縮されたような楽曲となっています。

METAFIVEは、幸宏さんももちろんですが、他の5名のメンバーがそれぞれ持ち味を出しながら組み合わされることで、ソロでは生み出せない楽曲や演奏を実現していることは確実であり、幸宏さんとしてはそれが楽しくて仕方なかったのではないかと思うのですが、皆さんはどう思われるでしょうか?

そんな幸宏さんの新たな楽曲や演奏を視聴することはかないませんが、このMETAFIVEを含めた様々な活動で次の世代に受け継がれ、新たな作品が生まれてくると信じずにはおれません。

さて、今回の「METAFIVE特集」はいかがでしたでしょうか。
METAFIVEの楽曲はSpotifyでも配信されていますし、YouTubeでは今回紹介したMV以外にも複数のライブ動画も配信されていますので、ぜひ皆さんご覧ください。

ではまた次回に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?