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原稿料を上げたくなる「すごいライター」はここが違う

なんだか連日、いろんな方からの反響をいただきありがとうございます。ほくほくしております。お金ライターの三浦さんから、引き続き熱いネタをいただいているので、取り上げたいと思います。ほくほく。

過去に見た「この人はすごい」と思ったライターの話が聞きたいです。

なるほど。ありがとうございます。

僕の編集部では現在進行形でたぶん50人くらいのライターさんと契約しており、過去やり取りをした方々まで含めると、結構な人数のライターさんとご一緒しています。今回はその中でも「この人は原稿料あげなきゃ…」と思った凄腕ライターの所作について、初回面談~実際にライティング業務をお願いするまでのフローに沿って紹介したいと思います。

なお、あくまでN=1の話ですし、取材案件をお願いしているライターさんのケースですので、すべての方に参考にできるかはわかりません。とは言え、できるだけ応用可能な形で考察を深めてみますので、お付き合いいただけるとうれしいです。

「すごいライター」の初回面談はここが違う


ではさっそく行きましょう。

今回ご紹介する「すごいライター」ですが、僕が「この人なんか違うな」と思ったのは、初回の面談の時でした。僕の編集部では初めてやり取りするライターの方とはまずオリエンテーションという形で、

・媒体の理念やターゲットの特徴、コンテンツの内容の説明
・直近でお願いしたい案件の詳細共有
・今後のスケジュールの目線合わせ

みたいなことをしています。

もうだいぶ進行もテンプレ通りになってますし、大体のライターさんは、このオリエンテーションも流れるように終わるのですが………今回ご紹介するライターさんが投げかけてきた質問は、とても印象的でした。

その質問とはずばり、「御社のビジネスモデルについて詳しく教えていただけないでしょうか」というもの。その質問のうえで、「編集者であるまむしさんは、どんな目標を課されて媒体を運営されているんですか」などなどと畳みかけてきたのです。

他のライターさんにも等しく、「質問時間」を設けてはいるのですが、そこであがる質問の多くは、

・読者ターゲットはどんな人ですか?
・他にどんなコンテンツがありますか?
・テストIDもらえますか?

など、いわば「ライターとしてスムーズに仕事をするためのもの」。

それに対し、「企業として媒体に何を期待しているのか」や、僕個人がどういうミッションの下で動いているのかなど、「編集部のおかれた構造」に興味を持たれたのは、初めてでした。

「ほほう」と思いつつ、冷静を装いながら「担当者としては本数などではなく、PVに近しい指標を追っていますね」と伝えると、「どういったコンテンツがPV上位に食い込みやすいのか」「これまでどういった試行錯誤をしてきたのか」などと続き、その後も的確にやり取りが進んでいった覚え。

当社の体制についても質問は及び、一通りヒアリングしてくれた後は、「カメラも撮った方がいいですか?」とか、「慣れてきて問題ないと判断いただけたら、アポ調整とかもやりましょうか」とか、こちらのニーズに合いそうな提案も欠かさない

 よく、「コンサルティング型の営業」とか言いますけど。まさにそれを受けている感覚でした。

 ちなみに…

 クライアントと数多くのライターとやり取りしていると「この人はカメラ撮影できない」「文章上手だけどアポは取りたがらない」とか、その人ごとの「できないライン」がかなり複雑に存在することを感じます。クライアントの立場からすると一人ひとりそれを覚えて管理したり、部内に浸透させるのって大変なので「何でもやります」という姿勢を最初に見せていただけるのは、非常にありがたかったりもします(なんでもやる気のある人は、部内のほかの編集者にも「この人良かったよ!」と紹介しやすいです)。

また、シンプルな話で、「他のライターがやってくれないことをやってくれる」ので、料金アップも積極的に考えやすい。この辺りはクライアント側の懐事情にもよりますが、「私には執筆力と実績があるから単価上げてください」と言われるより、対応業務が幅広いという客観的事実があった方が、遥かに料金交渉に説得力が増します。クライアント的に怖いのは、契約している複数のライターさんを横並べにしたとき、社内から「何でこの人だけちょっと原稿料高いの?」という指摘に客観的指標を持って打ち返せないことだったりもするので(他のライターさんにも説明しづらいですし)。。

「すごいライター」の取材はここ違う

面談や契約作業を終えると、いよいよ「はじめての案件」です。

今回は取材案件でのお話になるのですが、取材において「この人すごい」と思ったのはまず、取材当日までに想定読者に近しい人へのヒアリングを済ませていたこと。知らない間にご自身のフェイスブックで興味のありそうな人(≒ペルソナ)に質問を投げかけ、取材テーマに対するヒアリングをしておいてくれていたのです。

 依頼したテーマへの勉強までしてくださる方はいらっしゃいますが、そこからさらに進んで「想定読者がどんな人たちで、どういうことに悩んでいるのか」についても、ご自身なりの「読者感」「当該テーマへの持論」を持って、取材に挑んでくださったのです。

取材の随所においても「でも、こういう場合は?」とか「多くの人はこう考えませんか?」とか、現場を知らないとわかりえないような質問をぶつけ、取材相手からも「そうなんだよ!」と熱のある本音をうまく引き出してしまうところも、「さすが」の一言。同席していて、ラジオ番組を聞いているようなスムーズさを感じました。

取材についてはいろいろなスタイルがあるので詳細はここで言及しませんが、「事前に考えた質問を会話の流れに沿って潰していく」という形で“優等生的に取材をこなす”人も多い中、取材相手と、そのテーマについて雑談で盛り上がるレベルまで自身を高めてくれた人はマジ、ほんと、すごいんです(興奮しすぎて語彙が)。

取材の時点で相手に気に入られていて、「次この人を取材する機会があったら、このライターさんじゃなきゃダメだな」と思わせてしまうような力を感じました(多分この時点で、この人の勝ちでしょうね)。

「すごいライター」は、取材後もすごい

さてここからは制作に入ります…が、すごいライターがさらにすごかったのは「取材直後」。

一般に、取材をすると想定外の話がすごく盛り上がったり、本来の意図とは異なる結論が得られたりなどして「当初企画からの微修正」の余地が発生しがち。

今回のすごいライターは、その点に関してのすり合わせについても早急に連絡をくださり、「タイトルはたぶんこんなかんじ」「構成はこんな感じで、この辺がクライマックス」…と、最終稿の姿がなんとなくつかめるレベルで、記事のイメージを教えてくれたのです。

うちみたいに月に200本くらい記事を上げている編集部としては、タイトルを見れば大体のPV規模は経験的に予測できるので、「あーそのタイトルだとウケなさそう」とかこの段階で微修正を依頼することもできますし、「そんな強そうなタイトルの記事が出せるなら、この辺の掲載予定あけとこ」とか判断できるので、地味にこの初動は助かります。

そのうえで、純粋にその方の仕事ぶりで印象的だったのは「原稿提出が異様に早かったこと」。ここはシンプルにスキルが高いと言うことかもしれませんが、当初2週間くらい見ていたところを2日くらいの工期で仕上げてくれたので、「はっや!!」とPCの前で叫んでしました(その後その方の原稿執筆スピードは社内でも評判になり、御幣をおそれずに言うと「記事の自動販売機」との異名を勝ち得ています)。

多くのライターが原稿を提出してくれるのは、「締め切り当日」。
「原稿来なかったらこっちからつつく」⇒「もうちょっと待って」と言われ数日⇒「もう一回つつく」と、サッカーボールを蹴り飛ばしているような運用にも慣れている身としては、ホールインワンを一発で決めたような爽快感。案件が一つ片付き、他の仕事にマインドを向けられるのはシンプルにありがたいです。あとたぶん「前倒し納品してくれる」というのはめちゃくちゃ稀有なので、横並びで見た時にも「この人は原稿早い」という印象が強烈に残るんだと思います。

 締め切りを前倒して提出してもらえると、取材相手もインタビュー時の記憶が鮮やかですし、確認工期にもゆとりが持てて印象も良くなります。結果、「今後またあの人を取材するときにはこのライターさんを通した方がいいだろうな」という所感をさらに強めてしまうんですよね。おのれ孔明。

「すごいライター」は記事掲載後も違う

もうおなかいっぱいでしょうか。ごめんなさいまだあります。

無事記事が掲載され、取材相手にも「今回はありがとうございました!」とお礼を言い、これで「めでたしめでたし」………かと思いきや、「すごいライター」の快進撃はここで止まりません。

記事への反響や、率直なPV数などに気を配って連絡をくれ、取材相手に対しても「ご協力いただいた記事が大きな反響を集めているようです」とご連絡をしたり。。そう、「記事が本当に当初の目的を達成したのかどうか」に、本気で向き合っているのが伝わってくるのです。

そのうえで、「例えば、次はこんな企画をやってみたらどうでしょうか」と提案をしてくださったりと、とにかく次の行動が早い。また、我々とご一緒しているとき「以外」にも地道に、うちの媒体の想定読者に近しい人との情報交換を日常的に行ってくださったようで、「実は先日こんな人を見かけました」とか「こんな企画があったら面白いという声を聞きまして…」とかいって読者の動きを教えてくれたりもするという。

気づけば、そんじょそこらのうちの社員よりは、うちのペルソナについて詳しい状態で「あっぱれ!」と言うほかありませんでした。

「普通のライター」と「すごいライター」の比較表

 細部を見るとまだまだ「さすが!」と思うポイントはあるのですが今回はこのくらいにしておこうと思います。そろそろ5000字くらい行きそうですし。

今回ご紹介した「すごいライター」の方とは、はじめて出会ってからもう5年以上たちますが、今ではもう、外部の人材でありながら「あの人が言うんだからしょうがない」というポジションを確立しており、そこらの自社の編集者よりはよっぽど媒体のことも読者のことも詳しい状態になっています。下手な案件振ってソッポを向かれたくないので、当然原稿料もうらやましいレベルでお支払いしているうえ、いい案件を回せるようにも意識しています。いやー、本当にすごい。まじで。

 さて、矢継ぎ早に話してしまいましたが、以上を総合し、「普通のライターさん」(もちろんこれでも全然ありがたいです)と、「めちゃくちゃ優秀なライターさん」の比較表をつくるとすると、こんな感じになるのかなと思ったりもします。


もちろん、個人的な強みや仕事のスタイル、編集者との相性もあります。
それに何よりポイントなのは、一つ一つの工夫や考えたことをとても楽しそうにやってくれるんですよね。無邪気で楽しそうに連絡をくれるから、こちらも気軽に連絡しやすく、次の仕事をどんどん頼みたくなるというか。

すべての人がこの方のように振る舞うべきでもないとは思うのですが、編集者が喜ぶエッセンスを仕事の各所にちりばめてきたすごい人材だなと思い、共有させていただきました。いやー文字にすると、やっぱりすごい。次は何をお願いしようかなぁ。

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