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編集部立ち上げ期…「一人編集部」を大きくするには?

お世話になっております。寒かったり暑かったり大変ですね。今回もネタをいただいたので、ご紹介します!

周囲に編集者がいない企業で、編集者はどう施策を大きくしていくとよいと思いますか?

ありがとうございます。オウンドメディアや広報に力を入れようと編集人材を迎える企業はちらほらありますが、その結果として「自分1人が社内唯一の編集人材」みたいな場面、結構多いように思います。そうなると社内に相談相手や理解者がいなくなりがちですし、割と大変ですよね。。

僕自身もそういう経験があり、他人事とは思えず鼻息荒くこの文章を打っています。少しニッチかもしれませんが、今回は「1人編集部状態」からどうやって規模を大きくしていくべきかについて考えてみたいと思います。

1人目の編集者が抱える「不安」


私自身が1人編集部状態を経験したのは10年くらい前で、ネットニュースの記者を辞めて事業会社に転職したときでした。

その会社のが採用する「一人目の編集者」ということで、前述のとおり周囲には相談相手もいない状態。一番最初に割り振られたのはアフィリエイトサイトの運用で、正直「え、自分それなりに大きな媒体辞めたのに、これからアフィリエイトサイトをやっていくの…?」とショックを受けたことを覚えています(いや、当時の経験も今となっては役立ってますけど)。

「文章のプロ」から「表現のプロ」になったとき、まずしたこと

以前ご紹介したこちらのエントリでもご紹介した通り、当初僕は自分を、「文章を書くプロ」と位置づけ、オウンドメディアの運用など、「書き仕事」ばかりを集中的に行っていました。

しかしそれでは通用せず、ある時を境に「自分ができることなら何でもやろう」と腹をくくって、社内で生じるいろんな「編集ぽいこと」にも着手しようと考えるようになりました。

では、そのとき具体的に何をしたのか。今回は「そこを知りたい」というご質問なので、私自身がやったことや考えたことについて記載したいと思います。

まずは「自分に何ができるか」社内営業から

「編集ぽい仕事があったらやるよ!」と、いくら声高に叫んだところで、「そもそも編集ぽい仕事って何?」と思われるのが関の山。ならばと当時思い立ってやってみたのが、「みんなに役立つ編集講座」でした。

社内講座で取り上げるテーマは例えば、「相手に伝わる文章の書き方」「メールの開封率を上げるタイトルの考え方」など。

編集者・ライターとして磨いてきた「表現のスキル」は、営業部門をはじめ、様々な部署の人に応用してもらえるスキルなはずです。

営業マンのメールの開封率が全体で5%上がったら、売り上げも増えません?
・文章作成にかかっている工数が削られたら、業務も効率化されません?

とかとか、いろんな切り口で社内向けの企画を考え、各部門のリーダーに了承を取ってから、有志向けの勉強会を何回か行いました。

社員が有志で開く意識の高い社内研修を、わざわざ「やらないでくれ」という会社ってあまりないような気もしますし、個人的興味で面白がってくれる有志社員も結構いたりするので、やってみると意外と盛り上がったりします(多分)。

僕の場合、参加者がかなり前向きで、ちょっとした編集テクを教えただけで、「こういう場面でも使えそうだ」とか、「こういうものがあると助かるのに」といった声がいろいろと集まるようになっていきました。

そうした声から例えば、

・顧客が悩みがちなことを年間カレンダーにして部内共有したら営業トークに使えるんじゃ?
・業界紙で取り上げられている問題を部内に発信したら、社内教育にもなるんじゃ?
・営業部門から吸い上げた「顧客のあるあるネタ」を記事にしたら使ってもらえるんじゃ?
・ハイパフォーマーな営業とそうでない営業のメール添削をし、改善点を全社共有したら売り上げにも寄与するんじゃ?

などなど、いろいろなアクションにもつながります。
現場に近い社員とつながることで、その会社がどういう顧客とコミュニケーションをとっているかがより立体的に分かる感じがするというか。

社内セミナーの有志参加者である社員たちは徐々に、「編集」に対して理解を示すようにもなってくれますし、何か困ったときの良き相談相手にもなりえます。

彼らとうまく連携を取り合いながら、取り組みを続けていくうちに、依頼や施策の幅が広がり、メディアをどう使っていくか、どういう場面でどう使っていくか、会社全体としてのコミュニケーションの設計をどう行っていくかという視点にもつながっていったと思います。

この取り組みから生まれたアイデアや成功事例はきちんと記録しておき、しっかりPRする。地道ですが、そういう積み重ねの結果として、新しい自動化ツールの導入が決まったり、投資的判断につながることが多々ありました。

編集者が社内営業でやってはならないこと

と、

いいところだけ抜き出して「サクセスストーリー」っぽく書いてしまいましたが、一点だけ要注意事項があります。

編集スキルを活かして「もっと全社を巻き込んでいきたい!」と思ったとき、要注意なのが「工数貸しに終始しないこと」です。

部門が認知されてくると「うちの部門がやっているこの作業を巻き取ってもらえないか」みたいな相談がどんどん増えることが多々。それを引き受けて「ありがとう」と言われることにやりがいを見出す人も多いのですが、個人的には正直、おすすめしません。

特に編集部の規模が小さい事業会社において、労働集約型の貢献ばかりしていると、いつまでたっても部門は大きくなりません。

どちらかというと、成功事例をどう仕組化させていくか、ノウハウをどう文化として根付かせるかなど、全体感を持ってレバレッジの効く貢献の方法を考えることがとっても重要だと思います。これほんと。仮に労働集約型の貢献をする場合には、期間限定にするとか、そこからの学びをどうにか自動化させるとか、そういう視点を持ち合わせたうえで引き受けることを強く強くお勧めします。

「自分の限界が会社の限界」という感覚

いろいろ申し上げてしまいましたが、私自身も編集部門をゼロから立ち上げたときが今までのキャリアで苦しかったと思います。

理解者がいないのも大変だったし、「頑張ろう」と思って奮い立ったものの結局工数貸しに終始して、「自分って何してるんだろう」みたいな気持ちになったり。モチベーションのアップダウンがめちゃめちゃ激しかったです。

ただそんなとき、自分を奮い立たせていたのは「自分の限界が、この会社の編集能力の限界なんだ」という思いでした。

社内唯一の編集者だからこそ、自分がやることなすことがこの会社の「編集力」を規定します。それは結果、顧客への価値にかえっていくし、この会社にいないと分からない知見を、社会に発信できるかどうかは自分自身。そんな矜持を持とうというのが、当時の僕なりのモチベーションでした。

いやはや。今回のご質問には以前の自分を重ねてしまうところが大きく、キーボードの打鍵強めでものすごい勢いで答えてしまいました。笑

「1人編集部」で頑張っている編集者は社会全体でみると、決して1人じゃなありません。だからこそ広い視点を持って、アクションしてみることが大事なのかなと思います。書いているうちに当時を思い出しながら「ぼく自身ももっと頑張らなきゃな」と思わされました。ご質問いただき、ありがとうございました。

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