イタリアのコンテ政権が風前の灯火状態にある。そもそも同政権は、昨年3月の総選挙後に形成された、ポピュリズムだけでつながった政策綱領に相違が大きい同盟と五つ星運動という連立与党の妥協の産物であっただけに、こうした推移も意外ではない。

連立与党間では、早期総選挙を急ぐサルヴィーニ副首相の同盟とそれに反対する五つ星運動との間の亀裂が深まるばかりであり、後者は昨年の総選挙で敗退して以来めきめきと支持を回復してきた民主党との提携を画策しているようだ。

こうした流れの背景にあるのは、過去1年半の間の各党の支持率の大きな変化だ。世論調査の支持率を昨年3月と直近で比較すると、同盟が17%から約37%に上昇する一方で、五つ星運動は33%から約18%に落ち込んでいる。一方で、民主党の支持率は昨年総選挙直後をボトムに23%前後まで回復している。こうした支持率に基づくなら、同盟が右寄りのベルルスコーニ元首相のフォルツァ・イタリアと極右「イタリアの同胞」を取り込めば、選挙で過半数を得る可能性が高い。一方で、五つ星と民主党が提携して他の左派政党を加えるなら、過半数を得ることも可能だ、ということになる。

だが、勢いに乗って総選挙を急ぐ同盟に対抗するために、総選挙に消極的な五つ星が民主党に歩み寄った感も否めない。また、五つ星にしても民主党にしても内部は一枚岩とはいえず、この提携に反対する派閥が存在するため、提携が成立しても政策運営では困難に直面する可能性がある。

8月20日にコンテ首相は上院で演説する予定であったが、その前に、辞意を表明した。どちらにしろ、演説直後に同盟から不信任動議が提出されれば、翌日にも採決が実施される可能性が高い状況にあったので、この手間を省く結果となった。これから、まずマッタレッラ大統領が新政権の組閣に向けて各党首脳と議論の上で新首相候補を指名する。テクノクラートを中心とする暫定政権となる場合、同盟がそれに反抗して総選挙に持ち込むか、五つ星=民主党がそれを認めるかのどちらか、となる。だが、指名された新首相による内閣(複数)がいずれも不信任となった場合には、大統領は議会を解散して早期総選挙を決定せざるを得ない。現ルール下では、総選挙は早くて10月22日。

シナリオ的にみると、同盟と五つ星が関係修復するというケースを除外すると、①暫定内閣、②総選挙のいずれかとなる。どちらにしろ、イタリアの政局は混とんとしてきている。そうでなくとも秋以降、欧州の政治ネタが増えて来る中で、懸念材料となることを意識しておきたい。

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