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四季をおもう雑記

今年はどうも暖冬のようである
小生としては、趣きに欠けるつまらない冬だ。あまりの暖かさに、間違って一冬を寝てしまったのかと混乱するほどで、我が家にほど近い山々に住む獣たちも冬眠からさめては、はたと気が付き「よしとくれよ、身体へんてこになっちまうよ」なんて言っているかもしれない

……落語も、テレビでとんと流れなくなった


こんな話では枕にもならないが、今日すこし書こうと思ったのは同じ枕でも【枕草子】である。上手いと思ったらグッドボタンを押すように。噺家師匠や、古事記にもそう言われている

で、予防線なのだが
小生は勉強大嫌いだし、いまさらになって中高の不勉強を悔いている無学なので、あまり明るくはないというのを先に書いておく


枕草子において
春は曙、夏は夜、秋は夕暮、冬は早朝
清少納言はそのように書いている

読んでいくと言葉と文章の構成がとても美しいし、その美的感覚にしみじみと圧倒された
じつに細かなところにまで目がくばられており、風景の脈動とも言うべき極ちいさな動きまでつぶさに拾い上げている

小生が念頭に置くのは枕草子の描写と、をかし、であるが、果たして一生をかけて近くまで行けるだろうか……

それから、色もまた美しい
日本の伝統色も様々にあり、つい最近では【黒は一色ではない】という話題が沸騰していた

余談だが【純白】は色の概念であり、実際には存在しないという記事をどこかで読んだことがある。白い色の布に、白いモノをたくさん並べて違いを見る画像も添えられていた。たしかに白と呼ばれるモノたちだが、みな違う色だった

以来、小生も色に興味を持った
枕草子にも色の描写はあり、また着物の色合わせについての記述もあったように思う

サッと目を通したところ
やはりその季節、自然の中にある色の組み合わせを取り入れて季節感を出しているものが多いし、その色に意味がある。こんにちのファッションでも、それは通ずるところがあるだろう

雪の下紅梅が特に好きだ
ぼちぼちそんな季節でもある

が、ことしは暖冬で雪がふらず、そんな色合わせの景色が見られない……ということで、冒頭に話が回りもどってくるのであるが

相変わらず考えもなしに、つらつら書いているので終着点が見つからない……


ふむ
小生にとっての、春は曙〜冬は早朝は何であろうかと、すこし考えてみるなどしようか

春のよいものは
朝の陽光がやわらかいときに、小さな新しいみどりが少しだけ顔をのぞかせているのが良い。そこに朝露がさらに小さな珠になって光っているのを、かがんで見るのが、のんびりで良い
竹林でタケノコを掘る人もまた風情がある

春の終わりごろ
巣立ったばかりと見える色のうすい鳶が、親を呼んでひときわ高い澄んだ声で鳴いているのもまた、ひとつ、趣きがある

夏のよいものは
真昼にだれもが陽射しを避けて陰へ引っ込むなか、蝉時雨を浴びながら森のなかにある神社が良い。木陰と薫風に涼み、息を休ませて、光に明るい景色へ草木の濃い緑がにじむのも良い
雨の匂いもまたこの頃は色濃くて良い
流れ水のせせらぎもまた風情がある

夏の終わりごろ
暑さのやわらぎに長い夏の終わりを、黄昏時に黒い遠山へ夕陽が隠れるようにして、さびしさと焦りを感じるのが良い。また、いつの間にか消えた、ひぐらしの鳴き声を思い返すというのも、まことに良い風情である

秋のよいものは
早朝からの雨に、地続きだった夏の温度がいちどに流し去られ、ひんやりするのが良い。葉の紅や黄に変じるのを待ち、その兆しがはしのほうへ滲んでいるのを見つけたときなど秋の一番である。名月に叢雲は言うまでもなし

秋の終わりごろ
風の温度が変わり、くすんだ色の葉が木枯らしに吹き散り、地を埋め尽くしているのが良い。その上を子供が乾いた音色を立てながら踏み歩いているのはとても愛らしい。枯葉を両手に持ち上げて空へ放ったり、またいたずらに蹴り上げたりしているのもまた良いものである
息のしろく見えはじめるのもまた良し

冬のよいものは
澄んだ夜に、かすかに青い月が薄く棚引く白雲を虹色に染め上げているのが幽玄である。粉雪が、ひとつ、ふたつ、静かに降りるのもまた良い。雪のふりはじめて、しばらく、いつの間にか景色が白く化粧をしているのも良い
その白のなかで、ナンテンの紅いちいさな実と濃い緑の葉が凛としているのが愛らしい
雪の社もまた荘厳である
ただ、土と泥の色がついた雪は良くない

冬の終わりごろ
森と山で、まだ残っている雪のそばを雪解け水が流れていくのが良い。冬でも色を変えない木々の葉から、雪がこぼれおちて音を立てるのも良い。そのあとに、おしろいのような細かな雪が、さらさらと幕を下ろしているところなどは溜め息が出るほどうつくしい


書いてはみたが、まことに選出に悩む
もっとしっかり詰めて書いてみたくもなる。書きたいことがない、書くものがない、なんていうことは一年のうちで一瞬もない小生であるが、ふと、こういうことを、それこそ日記として書いていくのも悪くないかもしれない

おそらく、とても大切なことだろう……
コロナとマスクの生活で、ここ数年は、ろくに四季の匂いのする空気さえ満足に吸えていない。今年は、すこし、吸いたいなとぼんやり思うなど……

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