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学びの本質を生きる10代に手を引かれて〜『あこがれの空の下』 から『ちむぐりさ』へ

きみトリプロジェクトの舟之川聖子です。

6月29日(火)の夜に、シネマ・チュプキ・タバタさんと映画の感想を語る会〈ゆるっと話そう〉を開催します。〈ゆるっと話そう〉は、鑑賞対話ファシリテーターのわたしが、映画館のチュプキさんと一緒につくらせていただいている対話の場で、2年前に始まりました。

チュプキさんで上映中の映画を毎月1本取り上げて、観た人同士で60分ほどの短い感想を話します。以前は劇場で映画のあとに、COVID-19の流行がはじまってからはオンラインで開催し、これまで20本の映画で対話の場をつくりました。



今月の映画は、『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』。
石川から沖縄にやってきた15歳の少女を主人公に、3年間の沖縄生活とその後の日々を通して、沖縄の現状を映し出すドキュメンタリー映画です。


今回この映画の選ぶにあたっては、前回の〈ゆるっと話そう〉で、ドキュメンタリー映画『あこがれの空の下 教科書のない小学校の一年』を観たことも大きなきっかけとなりました。
『きみトリ』と掛け合わせた対話のイベントをひらいたこともあり、どのエピソードも何度も見返したのですが、沖縄のエピソードの部分は、特に強く印象に残っています。

映画『あこがれの空の下』の舞台になっている小学校では、6年生の子どもたちが、一年かけて様々な角度から沖縄について学びます。言葉、料理、音楽、環境などの文化を学び、エイサーを踊って体感します。実際に沖縄へ飛び、普天間飛行場、読谷村のチビチリガマ、アメラジアンスクールを訪ねる様子も描かれています。

まるでわたしも一緒に授業を受けているような気持ちで、この一連のシーンを観ていました。10代の人たちが真剣に学び、驚き、揺さぶられ、問いを持ち、何かをつかもうとしている。その姿は、今回選んだ『ちむぐりさ』の主人公である、当時10代の坂本菜の花さんとも重なります。

映画の中で、菜の花さんは、さまざまな背景と経緯から、那覇にあるフリースクールに通うことを決め、中学卒業後に沖縄にやってきました。

珊瑚舎スコーレでは、既存の教育の枠にとらわれない授業があり、沖縄だからこそ学ぶことを大切にしています。珊瑚舎の夜学に通ってくるおじいやおばあの子供時代、基地移設の問題、基地があることで起こる事件や事故、終わっていない沖縄戦のことなど、菜の花さん自身が足を運んで、人と話す。新しく知って、なぜなのかを続ける姿に、わたしの中の10代も共鳴していきます。

「沖縄の問題」と聞くと、ウッと一瞬足が止まってしまうようなことも、菜の花さんが何の先入観も偏見もなく、正直な心で一旦受け止めてくれることで、観客であるわたしたちが安心して自由に感じ、考えられるようなストーリーになっています。


この2本の映画を通じて、わたしは、「10代の人たちに教わっている」とつくづく思いました。「いつかきちんと知りたい」と思いながらも及び腰になっていたことがたくさんある。でも、ほんとうは知りたかった。知らないでいるほうが、実はしんどいんだと認めることができた。

そうです、やっぱり子どもたちは、わたしたち大人が一方的に庇護する存在ではないのですよね。それぞれの立場や感性から見えている真実があるのだと、『きみトリ』でも言い続けてきましたが、ほんとうにそうなんですよね。しかも圧倒的に社会的な力を持っているのは大人の方。この不均衡に向き合うときなのでは、と思います。

映画の中で、10代の人たちが、今の自分ぜんぶを使って学んでいる姿を見ると、「大人のわたしが逃げてたらあかんやろ」という強さが生まれてきます。足が止まりそうになるときにこそ、その強さを思い出したい。

この「感じ」を観た人たちと分かち合えたらと願っています。
もちろん、大人だけでなく、子どもと大人の間にいる10代の人たちとも!


▼6月29日(火)20:00〜オンラインでゆるっと話そうhttps://chupki.jpn.org/archives/7792

▼シネマ・チュプキ・タバタでの上映は6月29日(火)まで。毎日12:45〜
https://chupki.jpn.org/

▼配給さんの企画で、6月23日(水)の沖縄慰霊の日から6月27日(日)まで期間限定でネット配信あり。
https://twitter.com/chimugurisa/status/1407496419699617798

▼書籍もあります。菜の花さんは「書く人」であることがよくわかります。『菜の花の沖縄日記』坂本菜の花/著(ヘウレーカ、2019年)


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