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18時以降留守番電話問題について

昨日のテレビで、現場教師とタレントの若槻千夏さんとのやりとりで、若槻さんの発言が、モンスターペアレント的だと批判されて、若槻さんが謝罪することになりました。

これを私も見ていました。
そこで思うところをまとめてみました。
まさに、今の教育界での働き方改革をめぐる典型的な状況だと感じたからです。

まず、結論からしますと、私は若槻さんの心情は至極当然だと思います。二人のお子さんもいるようですし、親の気持ちとしては普通の感覚でしょう。
これをモンペといってしまうと、かえって本来のモンペへの対策ができなくなるでしょう。

そして登場した教師の発言も当然であり、間違ったことは言っておりません。

では、なぜこうしたことが起きたのでしょうか。
それは、コミュニケーションの問題だと感じました。

対話には、背景となる部分が共通で無ければなりませんが、そこが違っていると思いました。

教師は、普段の勤務から、些末な保護者対応を強いられている部分があり、それを強調する形で、意見を述べたと思います。

若槻さんは、そうした教師の些末な保護者対応の実態を知りません。
若槻さんの言うところは緊急事態に対してのことだと感じました。
子どもの命がかかっている場合でも「勤務時間外ですから警察にお願いします」と言われたら、社会の誰もがその教師の対応を非難するでしょう。

その違いだと思います。
だから誰も間違ってはいないし、誰も非難されるべきではないと思います。

もし、誤りがありましたら、ご指摘いただければうれしいです。

以下に、そのやりとりを書き起こしました(ネットの動画をもとにしましたので、聞き取りにくいところもありました。その点、ご容赦ください)。

教師  6時以降、学校の電話でなかったりします。
若   何かあったらどうするんですか。
教師  何かあったときは、それは学校の役目ではなくて、例えば万引きなどがあったら警察の役目ですし、他に何かあっても親の役目と思うので、そこは勤務時間を越えて教員がやることは、おそらく今後なくなっていくんじゃないかな……
若 えーっ、なんか寂しいですよね。
他 結構電話かかってきます?18時以降も。
教師  18時以降もかかってきます。
若   だってだって、子どもが帰ってこなくて、心配になっていろいろ探すけど、結局見つからなかったとき学校に電話をするというのがたぶん親だと思うんですけど、それも対応してくれないということですか。
教師  対応は、もし子どもが帰ってこないというのであれば警察が対応しますし、……
若   えーっ、それ寂しくないですか。
他   そうしなきゃ仕事は効率化できないからさ。
   -ざわざわ-
若   だって「ごくせん」見て育ったでしょ。みなさん「金八先生」見たでしょ。
   -ざわざわ-
若   そんなビジネス化しちゃダメですよ。そこな
他   それはどうですか?
教師  そういう意見もあるんですよけど。
   -ざわざわ-
教師  その「金八先生」のようなやり方を続けてきたから、もうなり手がいなくなったんです。
他   なるほど。
   -ざわざわ-
若   それがすべてじゃないです。
アナ  保護者対応というのが先生たちのかなりの負担になっているということで、この6時以降留守番電話にするという取り組みは全国でも広がりつつある。
若   気持ちはわかりますけど、もっと減らせばいいところもあるじゃないですか。そこじゃない。私はそこじゃないと思います。

ここで、私の立場などについてご説明。

教育書や教育雑誌の編集を長くやっておりました。
著者(教員や大学の研究者)を交えての編集会議は、だいたいが6時~7時です。
会議が終わった後に食事を一緒にすることがあります。

そうしたときに保護者から電話がかかってくる場面をよく見ました。
ある教師は、個人用と保護者対応用の二つの携帯をもっていました。
会議や食事を中座しての電話のあと
「大丈夫ですか?」とおたずねすると、
「こんなことでした」とかいつまんだ話を聞くと(個人情報もあるので、おおざっぱにですが)、
そんなことで、わざわざ電話?というがほとんでした。
それを見ていて、教師はほんとに大変だな、と感じます。

また、こんなことがありました。
会議中、校長をされている方に連絡がありました。
7時を過ぎても子どもが帰っていないというのです。
会議の参加者も心配で、「学校に戻ったら」と言う人もいました。
その校長は「担任に指示をしましたので、もう少し様子を見ます」と。
しばらくして、学校から連絡があり、子どもは無事に帰ったということでした。
その校長の学校は多くの子どもが電車で通ってました。満員電車で、最寄り駅で降りられず、終点まで行ってから折り返して帰ったということでした。

そのときに会議に出てた人たちは、会議のことより、その子どもを心配していました。
それは教師だから、教育者だから、そういうことではなく、「人」して、普通のことだろうと思います。

あのテレビ番組に出ていた教師は、さわやかで、淡々と「警察の役割です」と話したので、ビジネスライクに見えたのではないでしょうか。
さすがに、自分のクラスの子どもが行方不明になって、警察に任せて普通でいられる人ではないと信じたいです。

そして、若槻さんをネットで批判している教師たちも、自分のクラスの子どもが行方不明になっても、「時間外です」というような教師で無いことを願いたいです。

それは教師かどうかでは無く、人としての当たりまえではないかと思います。

問題を正しく見極め、それを正しく伝え、それに正しく対応することが、働き方改革に必要だと感じています。
今のネットでの賛否は感情が先行した形です。このような齟齬が、また起きるようにも感じました。

さて、対応策についてご提案したいと思います。
私の地域では、学校が休みの日は、教育委員会に連絡の窓口があります。
学校で18時以降留守電になっても、緊急時には連絡できるシステムをつくったらどうでしょうか。
教育委員会なりで、10時くらいまで交代制で対応して、そこで緊急かどうかを判断して、緊急であれば、そこから該当の学校長なりに連絡ができるようにするとか、制度的に対応できるところもあるように思います。
保護者の不安も軽減されるのではないでしょうか。

余談になりますが、モンスターペアレンツについて

教師と飲む機会もの多くありましたので、リアルなモンスターペアレンツの話はよく聞きます。

遠足の時、保護者から「どんなカバンをもたせたらよいですか」と問い合わせがあったので、「お母さんのお考えのものでいいですよ」と答えたら、持ってきたのがブランドバッグで、案の定、子どもは汚してしまいました。
それを「先生が言ったからだ」と弁償を迫られたようです。

こういう本当のモンスターペアレンツには、社会としても対抗する必要はありますが、今回の若槻さんのように、普通の保護者が持つ、普通の心情が学校にそぐわないからモンスターペアレンツだとするのは、私は反対です。
何でもモンスターペアレンツで片付けてしまうと、リアルなモンスターペアレンツに対応できなくなるのではないかと、逆に危惧してしまいます。

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