河瀬真那

十数年前にアスペルガー症候群の診断を受けた非定型発達者です。翻訳書『壮年期のアスペルガ…

河瀬真那

十数年前にアスペルガー症候群の診断を受けた非定型発達者です。翻訳書『壮年期のアスペルガー症候群―大人になってからの診断は人生をどう変えるか(フィリップ・ワイリー 著)』 ブログ:https://manakawase.hatenablog.com/

最近の記事

杖をついてまで山を登るわけ

ひと月ほど前に、飯能の展覧山に登った。 展覧山は山登りといえるほどの山ではないけれど、山頂から飯能近辺の街が一望できるので、気分を一新したいとき、年に一度くらい朝早くに登ることがある。 その日も朝早かったので人気はほとんどなかったけれど、登り口で杖をついて歩いている人がいた。杖といっても登山用の杖ではない。歩き方からすると、どうやら半身麻痺のようだ。リュックをしょっているわけでもなく、格好からすると近所の人なのだろう。中腹までしか行かないのかもしれないけれど、健常な身体で

    • ゆっくり歩くことで見えるもの

      今年の夏は暑かったせいか、あまり出歩かなかった。そもそも、家で仕事をしているので通勤というものがなく、植物に水をやりに出る以外は表に一歩も出ないこともある。 先日、空がどんよりと曇ってそれほど暑くなかったし、郵便局に行く用事があったので、久々に午前中に10分くらいの距離をのんびり歩いてみることにした。 いつもは散歩やジョギングに出るにしても日が落ちて薄暗くなってからだったので、明るい日中にゆっくりと歩いてみると、いろんなものが目に入った。そういえば朝顔の季節だった。ピンク

      • 「幸せになってほしい」という呪い

        30代の一時期、よく既婚の友人から「早くいい人を見つけて幸せになってほしい」というようなことを言われたけれど、いつも呪いにかけられたような気分になったものだった。 別に深い意味はなく、ただ単に、言葉通りに受け取るべきものなのだろうけれど、そうはわかりながらも、脳の配線に問題があって言葉の受け取り方が少々おかしい非定型発達の私には、「いい人を見つけて結婚しない限り、あなたはそのままでは幸せにはなれない」と言われているように聞こえて、「ううっ、また呪いをかけられてしまった」と思

        • 発達障害とアイデンティティ~壮年期の診断

           私がアスペルガー症候群の診断を受けたのは34歳のときだった。それから十数年が経つ(診断経緯と診断後の詳細についてはブログを参照)。私の場合はアスペルガーについての新聞記事を読んだのをきっかけに、自分で診断を求めに行った。最初のクリニックでは検査結果をひた隠しにされ、次に訪れた、当時できたばかりの成人向け発達障害専門クリニックで「典型的なアスペルガー症候群」と診断された(当時はまだ自閉症スペクトラムという診断名はなかった)。  自分で診断を求めたこともあり、障害に対する偏見

        杖をついてまで山を登るわけ