音沙汰Musicalium Tour、福島、台湾、京都、島根、沖縄、宮崎、佐賀、函館と、8箇所巡り、残すところはあと、東名阪のワンマンツアーのみとなりました。
わーーー、どの場所にも、濃くて深い記憶があります。そしてそのすべてには、私たち二人だけでは辿り着けなかった。
みなさま、本当にありがとう！！

そこであらためて「Musicalium」という作品のはじまりを、書き綴ってみようと思います。

テーマを『ヒーリング』にしたことが、すべてのキーとなっているのですが、それは私が体調不良に陥ってしまったことから始まります。
詳しくは最新ZINE「新しい結晶」に書いているので、あまり深追いせず書こうと思うのですが、簡単に言うと、昨年末から今年の初めにパニック発作が頻繁に起きるようになり、パニック障害一歩手前の段階になっていました。

いまは幸い快方に向かっており、発作も出ずなので、応援してくださるみなさまには安心してほしいのですが、当時は本当にびっくりしました。
精神的なものなのかな？それとも自律神経や脳のことなのかな？未だにそこらへんはよくわかりません。
症状がmaxのときも、精神的には元気で、特に落ち込んだり不安に思うこともなく、ただただ発作がしんどい…という感覚でした。
けれど、心で感じるストレスと、肉体で感じるストレスのほかに、人体には自分が感知しようのない負荷がかかっていたり、精密な設計が正しく働くことによりバランスを保っているようで、シンプルにその一つのバランスが崩れた、ということだと思います。

その中で、愛聴していた音楽にも変化が訪れました。
パワフルでアグレッシブなプレイにわたしのパニックアンテナが引っ掛かって、「おうふ」と発作が出そうになるのです！！最悪！！
キメが来ると「ぐおお」、繰り返されるフレーズに「やめてくれえええ」、ソロなんかは「お願いだから弾き倒さないでくれ…」と、本末転倒な懇願を始める始末です。
その時はじめて、自分は、健康なバランスの保たれている状態を前提として、音楽を作っていたのだなと思いました。
見えていなかったのです。知らない世界を観るサングラスを手に入れたみたいでした。
そこで、しんどい自分でも聴けるアルバムを作ろうと思ったのが、「Musicalium」のはじまりです。

ありりに提案するとすぐ、「めっちゃいいじゃん！」と賛成してくれました。私たちは随分前からPMSによる揺らぎや、メンタルヘルス、体調不良などについて興味関心があり、よく語り合っていました。治癒する、ということに、なぜかお互い強い関心があった。いつもはパワープレイを得意とするありりも、「この強さはどう？」「この音域はどうかな」と、試しながら優しくアレンジしてくれました。それを受けて、自分の感覚をリトマス紙にして心地いいかどうか、判断しながらアレンジを進めていきました。BPMも沢山試しながら決めたね。

今までの作品の中で、一番不思議な、掴みどころのない音楽になったなあと思います。
けれど、掴む必要のない音楽が作りたかった。
即効性のある激薬ではなく、じわじわと暖まっていく暖かい飲み物や、胸に塗るとスースーしてよく眠れる薄荷。聴いているのか聴いていないのかもわからないけど、少しだけ芯から動くようになるもの。

なので、リリースしたから今聴いてね！という作品ではないのかもしれません。
聴いてみようかな、何を聴いたらいいかわからないな、と思う時に、聴いてもらえたら嬉しいです。
そしてそのようなテーマで制作できたのは、20年の信頼あってのものです。
せっかくありりがアレンジしたものに「何かざわざわする」とか「なんか怖い」など抽象的にしか返答できないのに、その感覚を全信頼してくれて、共に制作し切ってくれました。

20年来の友達としか作れない作品かもしれないな、と、振り返ると思います。
隣にいる人が「あなたがしんどいならやめよう」とすぐに言ってくれることが、音楽的にも人生的にも、どれだけ助かることか。励まされることか。勇気になることか。
その言葉を言えなかった過去も含めて、その感覚を、言葉ではない方法で詰め込んだのが、このアルバムです。

年末年始を過ごしたら、来年は東名阪ツアーです。
改めて言うけど、今はすっかり元気なので、心配しないでね！わたしもありりも超元気です。
けど、元気でいるために、御守りがあればいいよなあと思います。
ライブや音源が、みんなのそんなものになってくれたら嬉しいなあ。

長々と、書きました。
ここまで読んでくださってありがとう！
みなさまの今日が、明日が、明後日が、1000年後が、きらきらと輝きますように✧