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生き物と時間

哺乳類は、どの生き物も共通に「約20億回」脈を打つ。
こんな話を聞いたことはないだろうか。

何かの記事で見たのか、何で知ったのかは忘れてしまったけれど、それからずっと考えていることがある。
それは「生き物に与えられた時間は基本的にはみんな同じなのではないか」ということ。

冒頭の言葉はそれを裏付ける(かもしれない)ものである。それぞれの動物で寿命は違うけれど、感じている時間はどの生き物も等しいのではないか。根拠もある。
「寿命は心拍数に反比例する」というものだ。

例えば、ハツカネズミは1分間で打つ心拍数は約600回で寿命は2〜3年と言われている。それに比べてゾウは1分間に30回しか脈を打たないが、80〜100年生きるらしい。参考にするデータによっては少しずつ数字の違いはあるものの、寿命は心拍数に反比例することがよくわかる。

他にも体重なども関係するらしいが、それは動物たちの動きを思い出せば分かることだろう。詳しくはインターネットで「動物 寿命 心拍数」などで検索すれば出てくるので、そちらを見ていただければわかりやすいだろう。

とにかく、ネズミは脈も早いから、ヒトやゾウに比べ早く死ぬ。でも、その分動きは早いので、私たちよりスピーディーに人生を重ねる。だから、ネズミにとっては、別に自分たちが早死にする生き物だとは思わない。

ゾウも同じ。寿命は長いように見えるけれど、その分ゆっくりとしか動けない。だからゆっくり時を重ねる。結果、感じている時間はネズミと同じとなるのだ。(この説明が伝わらない場合は、もっとわかりやすく解説しているホームページがネット上にもあるのでそちらを参考に)

と、ここまでは調べたら色々とでてくることなのだが、私はこの理屈が人間の中だけでも通用するのではないかと考えている。つまり何が言いたいかというと「早く死ぬひとも、長生きするひとも、人生の中で感じる時間は同じ」なのではないかということ。

私はよく、こんなことを考えている。そんなことを言ったら不謹慎だと言われるだろうか。でも、私はそう考えてしまうのだ。

少し最初の理屈からは違ってしまうかもしれないが、漫画家の水木しげる先生は、同じく漫画家である手塚治虫先生が60歳で亡くなったことに対し「寝ないから早く死ぬんだ。僕は毎日とても寝ているから健康に長生きした」という旨の言葉を残したらしい。ちなみに水木先生は 93歳でなくなるまで、よく食べよく寝ていたとか。

手塚先生は睡眠時間を削ってたくさん作品を作った分、早くお亡くなりになった。水木先生 はたくさん寝て長く健康に生きた分、その時間で晩年まで作品を作り続けた。
どちらがいい悪いではなく、私がいいたいのは、結果的におふたりとも、一生涯のうちに感じた時間は同じなのではないか、と考えられること。

もちろん時間の感じ方なんて本人にしかわからない。でも、もしかしたらそうだったんじゃないかな、と私は思うのだ。

他の例を挙げたい。学生時代受講していた授業で、某広告代理店のデザイナーの講師の方に伺ったのだが、広告代理店を退職された方の平均寿命は約65歳らしい。本当かどうかはわからない。
今は働き方改革が進んでいるのでこれからは変わってくるかもしれないが(そうなることを祈る)、確かに私は広告代理店は激務というイメージがあったので、その時は少し納得した。あまり寝ないで生きていると、その分寿命から時間を引かれているんだろうなと感じる。

これまで「睡眠」というわかりやすい例をあげたが、時間の感じ方には、 実際の「時間」以外の部分、いわゆる「感じ方」にも理由があると私は考えている。

楽しい時間は早く過ぎるが、しんどい時間はゆっくりと過ぎる。 若くして自殺などで死んでしまった人は「ゆっくりと過ぎる、苦しくて長い時間」で寿命が埋まってしまったのではないか。誠に勝手ながら、私はそんなことを考えている。ユーミンの 「ひこうき雲」を聞くと、いつもこの説が頭に浮かぶ。

早く亡くなってしまう人の原因はもちろん自殺以外にもあると思う。幸せな一生を過ごした人もいると思う。いっぱい寝ても早く亡くなることもあると思う。例外を探せばいっぱい出てくると思う。

ただ、私は、生き物に与えられた時間は、基本的にネズミもゾウも、早く死ぬ人も、長生きする人も、それぞれみんな、同じだと思っている。そう思う、理由のお話でした。


以上は2年ほど前に書いた文章に少し手を加えたものです。苦しい時間がゆっくりと過ぎてしまって、寿命が埋まってしまうことになってしまった方々の、ご冥福をお祈りしながら…

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