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『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』

アップリンク渋谷にて『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』を鑑賞。年齢層は当然高いものとなっていたが、ほぼ満席に近い状態だったような気がする。


アメリカのジャズ・ピアニスト、ビル・エバンスの生涯を追ったドキュメンタリー。数々の名演、名盤を残し、薬物依存により51歳の若さで生涯を閉じたビル・エバンス。1958年にマイルス・デイビスのバンドに加入し「カインド・オブ・ブルー」を制作した当時の様子や、ドラマーのポール・モチアンとベーシストのスコット・ラファロをメンバーに迎えた歴史的名盤「ワルツ・フォー・デビイ」の制作経緯、そして肉親たちから見たエバンスの素顔や、エバンス自身の音楽への思いなど、これまで未公開だった数々の証言、エバンスの演奏シーンなど貴重なアーカイブで構成。また、ジャック・ディジョネット、ジョン・ヘンドリックス、トニー・ベネットら同時代に活躍したジャズマンや、本編の制作中に亡くなったポール・モチアン、ジム・ホール、ボブ・ブルックマイヤー、ビリー・テイラーらも登場。エバンスが駆け抜けた51年をさまざまな角度から読み解いていく。(映画.comより)

わたくしジャズというものもほぼ聴いておらず新参者でして。やっぱり僕らぐらいだと菊地成孔さんの音楽とかは聴いてたりはするって感じで。TBSラジオでやっていた『粋な夜電波』とかは聴いていたり、書籍化されたものも読んでいるので、ある程度ジャズ界隈の単語がなんとなく聞いていたり知っているような、ぐらいの人間が、ビル・エヴァンスって名前ぐらいは聞いたことあるけど、ドキュメンタリーだと当時の音源とか映像も多少は流れるだろうし、人物の相関図というかジャズの歴史みたいなものも少しはわかるんじゃないかなっていうたぶん、本当のジャズ好きな人とは違う興味で観に行ったわけです。


語られるべき人物、ビル・エヴァンスはすでに亡くなっており、同じ時代を生きた、あるいは生き延びた人たちの証言(これは極めてそれぞれ個人的な思いや記憶によるので、細部などは異なっているはず、記憶とはそういうものだから)と音源や映像などの資料を時系列で組み合わせることで、ビル・エヴァンスという人物は一体どういう人間でジャズピアニストだったのか?という内容になっている。

構成がしっかりされているので、まあジャズわからなくても彼がピアノをはじめた理由や、兄という存在の大きさ(僕はエヴァンス兄弟にあだち勉とあだち充という群馬の天才安達兄弟と呼ばれたふたりのことを少し思い浮かべました)、マイルス・デイヴィスという存在、自身のトリオ、若い友人でありベースプレイヤー青年の死、恋人の自殺(これに関してはビル・エヴァンスが悪いと思うけど)、兄の死、ヘロイン中毒、結婚して子供が生まれて家族ができるなど、ひとりのジャズメンの人生がとてもわかりやすく彼を知る人たちのインタビューという肉声がより、天才的だったこと、人間的な付き合いをしていたこと、失ってしまったことの意味を観客に伝えてくれていた。彼ほどの有名人だったり著名人のような人でなくても、僕らは大事な人を失っていく、生きていけばいくほどに出会ったすべての人はいつか死ぬので、その別れを経験していくしかない。残された側しか語れない物語や思いというものがある。彼は音楽を残したから、それは生き続けて聴かれ続けている。


映画で聴いた音楽はやはりカッコよかったので帰りに音源をレンタルして聴いている。

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