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『アイネクライネナハトムジーク』

前日の23日夜は山本くんと渋谷で飲んだ。二件目がロフト渋谷近くの地下だったが、起きてから昼前にまたそこを通り過ぎてシネクイントに行って今泉力哉監督『アイネクライネナハトムジーク』を鑑賞。原作は伊坂幸太郎さんの小説で単行本ででた頃に読んでいたが、内容はほぼ忘れていた。
仙台を舞台にした物語。伊坂幸太郎作品の持ち味と今泉力哉監督の持ち味は重なる部分が大きいのか、途中から伊坂幸太郎風味が消えて、同時に今泉力哉風味も消えた。いや、混ざり合っていった。


物語としてはポスターにも書かれているキャッチコピー「あの時、あの場所で出会ったのが君で本当に良かった。」という出会いとその後に一緒に過ごした日々を描いている。あの時、例えば違う人と出会っていてもそう思えたのだろうか、時間が経ってよかったと思える出会いなのかどうか。


主演は三浦春馬&多部未華子だが、矢本悠馬と彼の妻役だった森絵梨佳もいい味を出していた。彼らの娘役の恒松祐里はこれから売れそうな感じ。ボクシングのシーンではサンドウィッチマンの伊達&富澤コンビも、原田泰造さんや貫地谷しほりもでている。柳憂怜さんも出ていたしMEGUMIも豪華なメンツ。


公園のシーンを見ると今泉作品ではいろいろ起きるので自然と頬が緩んだ。
今泉監督作品が去年今年と次々と公開されていて、もっともっとみんな観てもらいたい。『愛がなんだ』によって大学生ぐらいのファンもついたと思うので、これからますます映画館に若い世代を連れてこれる人になっていくだろう。
何年か前に今泉さんとお茶した時に伊坂幸太郎原作で映画を撮ると言われていたのはこの作品のことだったのかもしれない。

『愛がなんだ』は観た人がわりと締め付けられる気持ちになったり、登場人物たちの心情に近い経験や、現在進行形の人たちには強烈なものがある。それは彼氏彼女の関係性ではない形の男女のあり方であり、だからこそ、一般的な恋愛の関係性に憧れたり、そうなれない自分が嫌だったりするから、尚更。今作はそういう関係性ではなく、付き合っている男女や結婚している男女の間にあるもの、隙間やすれ違いや思惑なども含めて微細なことがのちのち影響してしまうことを描いている。

そういう部分は今泉監督作品で描かれてきたことであるが、原作小説での伊坂さんの世界観もとい小説での会話というのは、実写で実存する人(役者)が話すとどこかズレてしまう質のものである。だから、映像化する際にそこをどこまで日常会話に落とし込めるか雰囲気を作れるかというのが映像化がうまくいくかどうかなのだと思う。今作はそこまで違和感はないが、伊坂ワールド感はさほど感じられない。たぶん、伊坂さんと今泉監督の世界観がうまく混ざってしまっていて、個性があまり出ていないように感じられた。

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