iOS14がカジュアルゲームに与える影響を考えてみた

いやー話題ですね、iOS14。IDFAの使用がopt in形式になるそうで、業界が騒然としております。
プラットフォームに依存している以上、こういったことは常に起こりうるし、本当に広告がダメになるなら、仕事探さなきゃなーと思うくらいで、僕自身は割と心穏なんですが、少しiOS14以降の世界について、カジュアルゲームビジネスの観点からシミュレーションをしてみました。
ぜひ富岳にもシミュレーションぶん回して頂きたいところです。

ユーザレベル設定 → アプリレベル設定

皆さん言及されているように、IDFAのカバレッジが減る、ことが問題視されていますが、僕はそれと同じくらい、IDFAの権限設定がユーザレベルからアプリレベルになることも重要な変更なんじゃないかと思います。

これは端的に言うと、広告配信時にIDFAが取れてるユーザ≠インストール後もIDFAが取れるユーザ、だということです。つまりIDFAのありなしで、ユーザ自体の価値が決まっていた世界自体が崩壊します。(もちろん許可しやすいユーザとしにくいユーザに分かれるのはあるにしろね)
IDFAのありなしで分けてLTVを算出しているパブリッシャーも多いかとは思いますが、まずこれが出来なくなります。

マネタイズの観点: eCPMとLTV

さて、それではeCPMとLTVがどうなるのかを考えてみましょう。不確定要素が大きすぎるのでいくつかの仮定を立てなければなりません。まず大前提として、アプリの広告業界は死なない、ということを仮定します。これが崩壊したらもうシミュレーション自体無意味なので。少し言い換えると、出稿主の広告予算自体が劇的に減ることはない(少なくとも短期では)ことを仮定して差し支えないんじゃないでしょうか。ちゃんと効果があるならみんなお金は使いたいはずです。

その上で、eCPMはどうなるか。これはもう皆さん書かれているように、そのアプリ全体で均して見ると間違いなく落ちます。今現在IDFAがないユーザのeCPMはあるユーザの半分くらいだ、とどっかで見ましたが、IDFAが無いユーザのほうが価値が低いことに疑いようはないでしょう。

ただし、前述したように、IDFAの権限設定がアプリレベルになったことで、今IDFAが取れているユーザが今後もIDFAを提供してくれるのか、という保証が一切なくなります。また逆も起こって、今はIDFAが取れていなくても、次にダウンロードしたアプリではIDFAの取得を許可してくれるかもしれません。ゆえに、広告主側から見ると、IDFAが取れているimpの価値はいまより下がり、IDFAが取れていないimpの価値は今より上がる、ことが予想されます。IDFAの取得できる割合が減るのは間違いないので、平均したeCPM及びLTVは下降はします、

もう1点あり得るシナリオとしては、impの価格が落ちたことで、今度は出稿側が同じ予算でよりimpを多く買うことが出来るようになり、結果impの価格の下落に対して反発力が働くのではないか、と予想しています。impの供給量、及び出稿側の予算が劇的に落ちないのであれば、需給曲線を考えても、反発する力が働きます。

つまりトータルで言うと、eCPMもLTVも落ちる、けど悲観的になるほどではないのではないか、と考えています。数字も何もないかなりの直感なので責任は負いません。

このシナリオが崩壊するとすれば、今現在IDFAのありなしで劇的にユーザーの価値を変えているような広告が過半数をしめているような場合です。ものすごくターゲティングの狭い広告や、リタゲ広告などがこれにあたります。ただ、ターゲティングはすればするほど広告スペンドは落ちますし、リタゲ広告の割合が過半数だとも考えづらいので、まぁ多分大丈夫でしょう。たぶんね。

UAの観点: ユーザー獲得戦略がどう変わるか

まず、インストール取れるのかが侃々諤々やられてましたが、これはフィンガープリントがあって現在でもIDFAなしのユーザのインストールがそれなりの精度で取れていることを考えると、僕は気にしないでもいいと思います。もちろんIDFAより精度は落ちるけど。カジュアルゲームはクリックからの短時間でのインストールがほとんどですし、特にこの影響は軽微だと予想します。

では出稿戦略はどう変わるか。これは一言で言ってしまえば、ざっくり、になります。

- ユーザー単位でのLTVが追いにくくなる
- 獲得したユーザがIDFAを許可してくれるか分からない

のでまず、LTVの算出がざっくりになって、せいぜい国別でいくら!というレベルまでが限界になるでしょう。IDFAターゲティングも意味をなさなくなるので、その国に一律のCPIでざばーっと流します。もうここはいっそざっくりにしてオペレーションコストを削ることを考えましょう。回避策とか考えててもいたちごっこですし、そんなにROIがいいとは思えません。利益は、売上を上げるかコストを削るかで上がるので、コストを削りましょう。

あとは、媒体選択を絞ったほうがいいのかな、とは思います。IDFAがあれば、媒体に一定のルールの基にアトリビューションがされ(これがインストール成果として正確だとは僕は言わないです)ていましたが、フィンガープリントだと多少なりともルールの適用が不正確になります。特に似たような配信面を持つ複数のネットワークに配信をすると、この影響がかなり大きくなると考えられます。
それを避けるために、特性の違うシェアの大きな媒体、を数個使うのが最も効率的なんじゃないでしょうか。

こうして考えると、恐らくUAは、戦術レベル→戦略レベル、に戦いの観点が移るのかなと思います。一旦出稿してしまえば出来ることがほとんどなくなる以上、出稿前の準備が重要ですし、広告効果の評価も、もっと大局的な観点から行う必要が出てくると思います。

こちらの力作を書かれてる森下さんは、マーケターの能力勝負の時代が来た、とおっしゃってましたが、まさしくその通りなのかもしれないですね。本質的に何が広告効果なのか、を突き詰めないとお金を溝に捨て続けることになりそうです。

ざっくりであるがゆえにより本質的になる、という逆説的な(この単語が好きなだけ)ことになりそうな気がします。

カジュアルゲームは終わるのか?

間違いなく少なからず悪影響はあると思いますが、こんなことで終わったりはしないでしょう、いや終わったら困る!(仕事的な意味で)

例えばAndroidがまだありますし、1st partyの情報を使って配信することが出来るFacebook、Amazonなどへの影響は軽微なはずです。また、大手のパブリッシャーについても、今後は1st party dataの活用が進んでいくのではないか、と予想しています。

厳しい戦いになるとは思いますが、悲観的に騒いでいても何も生まれないので、自分なりに考え、出来ることをしていくのが良いのではないでしょうか。

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