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25 ホッピーのラベルで飲む

焼酎を割って飲むときの濃さというのは、実に難しい問題だ。

居酒屋で焼酎の量をギリギリまでケチった薄~いレモンサワーが出てくると、つい「レスカかよ!」と言いたくなるが、かといって焼酎が多ければいいというものでもない。酎ハイやレモンサワーには、ちょうどいい濃さというのがある。もちろん、そのちょうどよさは人によって違うので、3対7とか4対6などと明確に決められるものではない。

結局、酒飲みにできるのは、自分の舌に合わない濃度の酒を出す店には行かないようにし、舌に合う酒を出してくれる店を見つけたら通うことだけだ。その点で、ホッピーはどこの店で飲んでも不満を覚えることが少ない。なぜなら濃度を自分で調節できるからだ。

この酒エッセイシリーズを読んでいてホッピーの飲み方を知らない人はいないと思うが、念のため言っておくと、ホッピーは氷と焼酎(ナカ)が入ったグラスに、ホッピー(ソト)を好みの量だけ注いで飲むものだ。そのとき、瓶に印刷されたあのビア樽のような形のラベルが、ホッピーを注ぐ量の目安となる。これは、日常的にホッピーを飲む人ならみんなやっていることだろう。

当然、ナカの量によってどれくらいソトを入れるかは変わるわけだが、ホッピーひと瓶で3杯飲むという人が多いのではないか。その場合、

 1杯目「ビヤ樽の上端のラインまで」
 2杯目「Hoppyという文字の下のラインまで」
 3杯目「空になるまで」

となるだろう。この配分でホッピーひと瓶はほぼ3等分される。だいぶ薄いね。

ぼくは特殊な訓練を積んでいるので、いつも4等分して4は飲むことにしている。その場合は、

 1杯目「ビヤ樽の上端の5mほど上にある瓶どうしの擦れ跡まで」
 2杯目「Hoppyという文字の上のラインまで」
 3杯目「ホッピーという文字の下端まで」
 4杯目「空になるまで」

ということになる。こうすると、1杯ごとに注ぐソトの量は少なめになるので、気持ち濃いめのホッピーを楽しむことができる。

酒でも割りものでも、瓶のラベルは顔みたいなものだ。ぼくはホッピーを飲むときは度々瓶を手に取り、ホッピーの顔をじっと見つめ、よくラインを確認しながら次の酒を作っている。「そんな面倒なこと考えながら飲んでるの!?」と驚かれること数知れずだが、酔っぱらいとはそういうものだ。

さて、ここでまた問題が発生する。

さすがに濃いめのホッピーを4杯も飲めば、だいたい満足できる。だが、ごく稀に、飲み足りないと感じるときがある。理由は様々で、やけに肴がおいしくて酒が進んだとか、相棒(まあキンちゃんなんだけど)と話し足りないとか、である。

そんなとき、世間の人はハシゴをするのかも知れないが、ぼくはメフィラス星人ではないので「河岸を変えよう」とは言わない。ホッピーの2周目に突入するのである。

居酒屋で「ホッピー白セット、2周目ください」と言って、店員さんに通じなかったことは、いまのところない。

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